平成20年度新入社員歓迎あいさつ「自らを磨き、現場で光ろう!」

両備グループ代表  
小嶋光信

夢と期待と、ちょっぴり不安な気持ちで緊張している新入社員の皆様、両備グループ各社にご入社おめでとうございます! 
心から歓迎申しあげます。

 

これからいよいよ社会人の一歩を踏み出すわけですが、社員になって最初にしていただきたいことは、これまで育てていただいたご両親、ご家族の皆様、教育してくださった先生方に心から御礼申し上げて欲しいということです。
会社説明会のときに、両備グループの経営理念は「忠恕」、すなわち「真心からの思いやり」と説明しました。また、思いやりを持てず、自分さえ良ければ、人を騙してでも儲けてやろうという方は、我が社の社員には向きませんと言いました。まず最初に、皆さんを育ててくれたご両親や家族の皆様に、感謝するという気持ちで思いやりの精神を表していただきたいと思います。両備グループでは、まず「良き社員」の前に、「良き息子」であり「良き娘」であって欲しいと思います。

両備グループは、1910年の西大寺鉄道創立から100周年を迎えるにあたって、大改革をしています。今まで私たちを育ててくれた100年は、これから進む厳しい時代では、わずか10年くらいの変化であったかもしれません。それほど、ピークを越えた日本には、これからも環境の大変化があると予想されるのです。一時は一人あたりのGDPがアメリカを抜き世界一であったものが、2020年にはアメリカの2分の1になってしまうという推計が今年のお正月に日本経済新聞から発表されました。このままでは、今の生活が維持できないばかりでなく、日本から夢までも失せてしまいます。

この春スイスに行って、そこから日本を見直してみたら、本当にびっくりしました。ダボス会議で議論されていたことは「フォーゴットン ジャパン」すなわち「忘れ去られた日本」です。これからの日本は、何も問題解決できずに忘れ去られて行く国だと欧米人はレッテルを貼っているのです。その大きな理由は、衆参両院が自民、民主の2大政党のまた割れで、大事な国の改革が一歩も進まないとの評価でした。落ち目の日本であるというイメージに加え、実質的にも地方の経済力がどんどん弱っているのが現状です。

両備グループの改革の歴史

しかし、両備グループは違います。両備グループは、いつの時代の大変化のときも、思い切った改革が行われてきたのです。
両備グループは、1910年西大寺鉄道という軽便鉄道から生まれたと言いましたが、昭和30年代には、軽便鉄道の時代の終わりを予感し、西大寺鉄道を昭和30年代の半ばに閉鎖して、両備バスとして生まれ変わりました。そして、昭和40年代にはマイカー時代を予見して、今日のように垂直に水平に多角化を進めて現在56社、年商約1,400億円、経常利益約40億円、社員総数6,000人以上の企業グループに成長しました。

更に、最近とみに「両備グループは元気が良いですね」とよく言われるのは、和歌山電鉄や、中国バスの再生など、地域の皆様がお困りのことを、我々の提案と解決能力で、お客様のために事業化、再生化しているからです。そして、和歌山電鉄貴志駅のスーパー駅長、三毛猫「たま」ちゃんまでが頑張って、全国のアイドルとなって、急激に両備グループの存在が全国に有名になりました。 

岡山市内で進めている「まちづくり」運動も、柳川ロータリーに建設した超高層マンション「グレースタワー」により、桃太郎大通りに約750戸のマンション群ができ、出石小学校跡地開発とともに岡山市内中心部の空洞化、土地価格の下落を防ぐ一助になりました。地方の時代は、その地域の産業力で決まります。岡山県は交通の拠点性が産業としての売りであることから、早島インター至近に8万坪の複合型流通センターを造り企業誘致を計りましたが、さらに第2弾、第3弾の開発を進める等、地域づくりへの企業努力をしています。

安心して働ける企業づくりを

地域に貢献するだけでなく、新しい100年にむけて、これからの激動する日本、その中の地方でも、安心して働ける企業づくりをしています。
我々は、両備グループの100年を振り返り、今までの企業経営にとって良かったものを残し、悪いものは捨てて、新しい100年を更に生き抜いていく、逞しい企業を作ることが100周年記念事業だとして頑張っています。今までの100年はこれからの10年と言ってよいぐらい時代の移り変わりは早いと言いましたが、企業体質が弱く、環境適応力の乏しい企業はあっと言う間に潰れてしまうと思います。社会に信頼され、皆さんがこれから働くであろう30~40年という人生設計が出来る、安心して働ける企業造りを目指しています。そのためには、皆さんがまず自分の専門性を磨いて、人の財産と書く「人財」となることです。

今までの100年近く企業を育んできて、これからも残して行かなくてはいけない企業の仕組みに「信託経営」と「労使強存・共栄」と、新たに付け加えた「能力主義的安心雇用」いう思想があります。

両備グループには交通運輸事業、情報関連事業、生活関連事業の3つのコアがあります。そして、それぞれの会社は、親会社、子会社の関係でなく、自主独立しています。しかもこの「信託経営」と「労使強存共栄」思想と「能力主義的安心雇用」で、ほとんどの会社が自立して黒字で経営されています。

しかしながら、信託経営が、時代とともに任せっぱなし経営に一部変わってしまっていますので、安全管理委員会、情報管理委員会などの安全面と、両備グループ監査室や、総務、財務、人事の各委員会など経営面の横グシを企業間に入れる「グリッドシステム」を取り入れたことで、問題点が次々発見され、企業の整備が進んでいます。今後はお客様へのサービス度をもっと上げる仕組みとして「CS(顧客満足)推進室」も取り入れます。

また、 「忠恕=おもいやり」 の経営方針として、

  1. 社会への思いやりとしての 「社会正義」
  2. お客様への思いやりとしての 「お客様第一」
  3. 社員への思いやりとしての 「社員の幸せ」

を掲げました。

社会のために、お客様のために一生懸命働いて、皆さんが幸せになっていただきたいと、「両備ハッピーライフプロジェクト」を実行中です。社員の幸せを、自ら努力もしないで会社が幸せにしてくれると勘違いしている社員もいますが、まず努力して会社を支えるくらいの逞しい社員になることが、結果として隆々とした会社を造ることになり、自らも幸せになるのです。実際に中国バスの再生をして、いかに労使の問題が大事か、再確認することが出来ました。

日本を取り巻く4つの不安

今、日本中の人々が、何か日本はおかしいなと思っていると思います。大きく次の4つの不安があるといえます。

  1. 生活不安
  2. 健康不安
  3. 老後不安
  4. 教育不安
  1. 生活の不安は、世界の1,2位の所得でありながら、多くの人が、もっとお金をと思っています。みんなが良い住まいで、電化製品に囲まれて、昔は一家に一台の車と電話が、一人に一台になれば、いくらお金があっても足りません。「出を制する生活」に戻さなくては、生活も企業も社会も国も持たないでしょう。
  2. 健康ですが、生活習慣が勝手気ままで、自ら律せなくなったために、健康管理意識がなく、そのうえ欲しいものを買った残りを食生活で節約するために、栄養のバランスが目茶苦茶です。これでは、健康でいられるはずはなく、社会人の半数が未病もしくは病気で、40歳代では5人のうち一人しか健康な人がいないという有り様です。両備グループでは「両備健康づくりセンター」で健康の啓蒙を図るとともに、全国に先駆けて35歳から人間ドック受診を進めています。
  3. 老後の不安ですが、皆様はこれからというときで、老後など考えられないでしょうが、みんないずれ来るのです。年金の不安から、多くの人が老後に所得がなくなったら生きていけるか心配しています。みなさんの時代には、少なくとも70歳代まで元気に働いて生きることが大事になります。
  4. 教育ですが、今日の繁栄した日本は素晴らしい能力で築かれたものですが、その能力の基本の読み書きで、世界の1,2位であったものが、日本の学力は近年大幅に低下しました。世界で読解力8位から14位(1位フィンランド 2位韓国 3位カナダ)に、数学的応用力はなんと1位から6位に、この2000年から2003年で急落です(OECD調べ)。それ以上に学ぼうという意欲、気力の減退が問題です。そして、人間としてどうやって社会の一員として暮らして行くかという躾が出来ていないことも問題です。

「何のために生きるのか」「何のために学ぶのか」「何のために働くのか」という”何のため”が分からなくては意欲も気力も沸きません。多くのみんなに何のためにと聞くと自分のためと答えます。自分のためなら、何の励みもありませんから、食べて、生活できて、欲しい物が買えれば良い程度になってしまいます。働くとは「はたを楽にする」とも言われますが、はた、即ち相手を楽にするためということを知ることです。「世のため人のため」と言いますが、自分が生活するという低い次元だけでなく、社会を良くしていく「人財」に育ってください。

幸せは人に与えた分しか自分にやってこない

奈良にある二月堂の掲示板に「幸せは、人に与えた分しか自分にやってこない」と書いてありました。また、京都の三十三間堂に「ふくらむ夢に咲かせる根気」と書いてありました。夢は一生懸命努力して、根気よく働いて達成されるのです。幸せは人に与えることで、自分も幸せになれるのです。

「桃栗三年柿八年」と言って、花が咲いて実をとるには最低3年掛かりますが、花も咲かず、実もつけぬうちに新卒の半分が3年以内に辞めてしまうという日本の状況はいかがかと思います。これでは、折角「夢」を求めて頑張っても、根気が続かず途中で辞めてしまっては、いつも人生をリセットしてしまっていて、一歩も進歩しません。人に仕事を通じて幸せを差し上げないうちに、自分だけの幸せを求めても、自分に幸せはやってきません。人間の筋肉もそうですが、苦しいな、止めてしまおうかと思って、でも、もうひと踏ん張りしようと努力したときにプッと付くのだそうです。働くことの多くは楽しいものですが、もし何かで壁にぶつかったときにはこの私の言葉を思い出して、3年はじっと続けて頑張って下さい。きっと人生の夢が咲き、幸せという実をつけてくれます。

自らを磨き、現場で光ろう!

両備グループは皆さんの夢と根気よい努力をサポートするための教育システムが充実しています。全体教育は「両備教育センター」で、専門教育は各社が積極的に行います。
健康は「両備健康づくりセンター」がサポートします。

そして、30代では「アンダー30」というグループ教育、30代前後からいわゆる「両備大学」としての経営管理基礎講座、「両備大学院」としての青年重役制度(ジュニアボード制度)と全国でも特色ある教育システムが整っています。これからは教育とジョブローテーションでキャリアアップするように、さらに人事制度を整えていきますから楽しみに、頑張ってください。

皆さんは宝石の原石のようなものです。何度も言いますが、自らを磨いて人の財産と書く「人財」という「世の中に役立つ人」に育ってください。

企業の力はお客様に接する現場で生まれるのです。これから、みなさまはその現場でまず自分を磨いてください。磨いているときは、時には痛いこと、つらいこともあるでしょう。しかし、その時は、自分が磨かれて、光ってきているのだと思ってください。そして、両備グループの光る星となって、幸せな人生を歩まれることを心から願っています。

両備グループ