両備グループ
代表兼CEO 小嶋光信
皆さん、両備グループへのご入社おめでとうございます。
これから始まる社会人の第一歩をワクワク、ドキドキとした思いで迎えられていることでしょう。特に皆さんは、学生時代のほとんどをコロナ禍の中で過ごし、とても不自由な学生生活だったと思いますが、いよいよコロナ禍の出口も見え始め、コロナ以前の日常が取り戻せる光が見えてきました。
確かに、このコロナ禍で経済や社会が停滞し、人との距離や世界が遠くなりましたが、反面、リモート等その不自由さを克服するICT分野の発展が加速しています。コロナ禍を負の遺産だけで終わらせず、如何にプラスへと変えていくかという前向きな知恵で次のステップが大いに変わってくると思います。
コロナ禍以上に厄介なのがロシアによるウクライナへの侵攻です。ニュースを見るたびに、つくづく戦後からの昭和や平成の時代は良き時代だったなと痛感します。普通に暮らせること、行きたい時に行きたい場所へ行けること、みんなで集まって楽しくワイワイできるという当たり前の生活が何と素晴らしいものなのかを思い知らされました。
また、トルコの大地震も悲惨な出来事です。日本も阪神淡路大震災や東日本大震災と大きな地震が続きましたが、それらを上回るほどのトルコの大震災です。
歴史を見ると、不思議なことに天変地異による天災が頻発する時は同時期に人災も起こり、為政者にも恵まれず民が苦しむという不思議な連鎖があるようです。
こんな未曾有の困難が続く時代ですが、両備グループは「忠恕」を旗印に、全員一丸となって次の時代へと邁進しています。実は、両備グループは日本の失われた30年に最も飛躍することができた企業グループなのです。
「先憂後楽が両備のDNA」
では、苦難の時代になぜ飛躍できたのでしょうか?
それは両備グループの歴史に答えがあります。
両備グループは、1910年創立(1911年創業)の西大寺鐵道が旧国鉄赤穂線の敷設で先行きの目途がなくなった時、未練なくこの事業を廃業し、新たな転機として両備バスへと転身しました。そして、廃業の憂き目にあっても一人のリストラもせずに、それぞれの社員の特性を活かす新しい仕事、例えば気動車の燃料を扱っていた社員には当時アメリカで流行っていたガソリンスタンドを、売店の社員にはスーパーマーケットをと、多角化することで社員の仕事を創っていきました。両備は儲かる仕事を求めて多角化したのではなく、仕事がなくなる社員の能力を活かすために多角化していったのです。
また、30数年前からは公共交通もマイカー時代や少子高齢化で現状では難しい事業になると想定して、運輸事業も陸に海に空に、観光も旅客も物流もと世界に稀に見る総合交通産業化で多角化してリスク分散するとともに、それまでの観光運輸交通業(トランスポーテーション&トラベル部門|T&T部門)に加え、次の時代に向かってICTやくらしづくり、まちづくり、社会貢献という5部門に展開して生活総合産業へと大変身してきました。
さらに、企業の活動エリアも、岡山の一都市・旧西大寺市から岡山県全体、岡山県から日本全国、そして、日本からベトナムやミャンマー、ラオス等へと国際化を進め、日本の成長力の弱さを補い、進化し続けています。
その昔、戦艦大和という伝説的な戦艦がありましたが、大和が幾つもの船倉に分けて沈まぬように工夫されていた如く、両備も多角化でリスク分散し、あらゆる生活分野でお役に立てる世界でも稀に見る業態を創ってきました。
ドイツに「全ての卵を1つのカゴに入れてはいけない」という諺がありますが、ドイツでは燃料をロシアに依存しすぎたために、現在、国が窮地に陥っています。
今回のコロナ禍とロシアのウクライナ侵攻は、物流を除くT&T部門の各業種で想定を遥かに上回る被害を生みましたが、ICTやまちづくり部門の大躍進やくらしづくり部門の堅調な業績に支えられて乗り切ることができています。この両備グループ独特の企業システムと社員の皆さんの頑張りで、これからも多くの難局を乗り切っていけると信じています。
この先を憂い後を楽しむという「先憂後楽」こそが両備のDNAであり、「備えあれば憂いなし」で、皆さんが安心して働き、人生を築いて幸せになれるようにあらゆる努力をしていきますので、皆さんも大いに夢を持って頑張ってください。
昨年の経営方針は、「コロナ禍乗り越え事業の再構築 一に改革、二に変革、三に実行徹底を!」で力強く乗り切っていますが、人流の抑制が取れ、今年5月には新型コロナもついに5類へ移行となりますので、今年は「生産性アップ、売上アップでコロナ禍克服」として徹底的に攻めの経営で飛躍を図ります。
「進化し続ける両備のノウハウ」
創業以来113年もの間、両備グループが進化し続けることができるのは、両備ならではの経営のノウハウがあるからです。
その中心となるのが経営理念の「忠恕=真心からの思いやり」です。どんな時代でも、誰にでも常に思いやりを持つことが時代や社会が変化してもお客様や社会から支持していただけるベースです。
この思いやりを展開して、経営方針を、
① 社会への思いやりとして「社会正義」
② お客様への思いやりとして「お客様第一」
③ 社員への思いやりとして「社員の幸せ」
としています。
自由で平和な社会があってこその企業活動ですから、しっかりした社会貢献へのベースとして雇用維持や納税等を通じて安定した社会づくりへの貢献が大事です。
言うまでもなく、自由と平和は民主主義によって達成されるので、選挙権は18歳以上なのですから必ず選挙に参加することが大事です。
また、我々のお給料を払ってくださっているのはお客様であり、常に「お客様第一」で物事を考える癖をつけてください。
両備グループの真骨頂は、社会のため、お客様のために頑張って、結果として社員が幸せにならなければならないという、企業目的が「社員の幸せ」にあるということです。
多くの企業が企業目的を業績と「株主への配当」とされていますが、もちろん株主への配当は重要ですし、業績を上げて利益を上げることは私企業としては当然なのですが、これは目的ではなく手段です。社会に貢献し、お客様に支持され、その結果として株主と同等に大事なステークホルダーである社員の皆さんが報われることが重要で、「社員の幸せ」こそが両備グループの目的なのです。皆さんがあってこそ企業活動が円滑にできるのですから、両備グループには頑張った企業の皆さんには第三の賞与として決算賞与があることが特長です。
これらの経営理念と経営方針を基にして経営が行なわれますが、その経営の特長は、
- 信託経営です。
両備グループの企業は社会の公器として社会から信託を受けているという考えと、その公器の経営執行はCOOに信託するという考え方です。皆さんの会社やカンパニーのCOOが執行責任者であり、企業は決して私物化せず、善良に経営管理されるように信託されています。WBCの栗山監督は選手を信頼するということで世界一になりましたが、両備グループも社員を信頼して経営をしていることが大きな特長です。もちろん信頼しすぎてトラブルが起こることもありますが、そのマイナスより信頼する善意主義の方がはるかに素晴らしい結果を生んでいます。
日本は逆にマイナスを恐れるばかりにマイナス思考となり、「角を矯めて牛を殺す」結果が失われた30年ではなかったかと思います。
両備グループには、「たま駅長」を代表とする猫社員が6名(匹)以上いますが、両備グループを評して「任せれば猫も働く両備グループ」と言われているように、任された皆さんは、猫であっても活き活きと活躍しています。
- 労使“強存強栄”思想です。
労使という、会社と働く社員の皆さんとは、両備の経営理念と経営方針に従ってそれぞれの目的達成のためにお互いが対等に強い存在で、立場の違いを尊重し認め合うとともに、お互いが繁栄できるよう労使関係を大事にしている、いわば共同経営のパートナーであるということです。他の私鉄グループとは異なる発展ができたのも、この労使“強存強栄”思想のおかげであると思っています。
「両備の行動規範が推進力」
そして昨今、両備グループの発展にドライブがかかってきている要因に「行動規範」があります。
実は、企業の成長のキャスティングボードは「すぐやるか、すぐやらないか」にかかっているのです。「知行合一=良いと思うことは必ず実行する」、すなわち「すぐやる・必ずやる・出来るまでやる」という行動規範と「即断即決、三日の原則」が素早い判断とスピード感ある行動として結果を創り出しています。
「社員の評価基準が明確であることがキャリアアップを進める」
また、皆さんを評価する基準が分かりやすいことも大事で、そこに「個人の幸せの方程式=健康×能力×やる気+夢」という方程式の一つ一つの項目が大事であると明確化しています。
まず、人間は健康第一、その上に能力を磨き、やる気を発揮することが大事で、夢を持って行動することが皆さんの幸せに通じるのです。いくら能力が高く2人前で、やる気が3倍でも健康が0なら2×3×0でイコール「ゼロ」なのです。幸せ感を持っている人は、そうでない人と比べて想像力が3倍、生産性や売上が3割以上アップし、健康でうつ病になりにくいという研究結果があります。
そして、健康管理は「両備健康づくりセンター」が、能力開発は「両備グループヒューマントレジャーセンター」が対応して、両備は教育産業かと言われるぐらい「企業即教育体」として、健康維持や能力開発、資格を得るプログラム等が充実していますから、大いに自分を磨いてください。
「グループ代表との3つの約束」
一般的には、新卒の3年間の離職率が3~4割と極めて高く、これでは社員の皆さんも会社も幸せにはなりません。両備グループは社員の幸せが目的で、それには長期雇用でキャリアアップして、安心して家庭をつくり、子どもたちを生み育てていくことができなければ少子高齢化へ向かう日本の家庭も社会も滅びてしまいます。
両備グループは定着率が良いと言われていますが、新入社員の定着率が上がった一つの要因は、私と皆さんとの3つの約束を皆さんが守ってくれているからだと思っています。
*第一の約束は、「思いやりを持つ」ということです。
私は皆さんに「忠恕」の心が持てそうになかったら、両備グループを希望しない方が良いですよとはっきり申し上げていますし、最近では就業規則にも明記されて、理念だけではなく、雇用上の約束という強いものになっています。
「思いやりとは、相手の立場で考えること」で、「忠恕」という文字は両備グループの創業者である松田与三郎翁の戒名の一部にもあり、その戒名を平たく読み解けば、「空よりも高く、海よりも深く、真心からの思いやりを一生貫いた男です」との意で、まさに与三郎翁は戒名の中に両備グループの理念をダビンチコードのように刷り込んであったのです。
*第二の約束は、「3年の我慢」です。
「桃栗三年、柿八年」、また「石の上にも三年」と言うように、初心を忘れず、いろいろなことがあっても3年間は辛抱してください。その代わり、両備グループは必ず3年で一人前になれるよう皆さんを育てあげます。
一般的に、すぐ辞めてしまう原因としては、
・些細なことで叱られた
・思ったような仕事でなく、やる気を失った
・上司や同僚と良い人間関係が結べない
ということのようです。もちろん、不安もあるし、失敗して叱られることもあるでしょうが、3年間は叱られることが仕事だと思ってください。
五日市剛さんという詩人が、「失敗と書いて経験と読む」と言っていますが、まさにその通りです。失敗して叱られたら、「有難うございました」と言える心の広さと逞しさを持ってください。
また、社会人で一番大事なことは、職場の人間関係を築くことで、まず挨拶から始めよ!です。この挨拶という字に答えが込められています。挨拶とは、心を開くという意味で、まず自分から心を開いて飛び込まなければ、挨拶にはなりません。
両備グループの場合は、これから一年間、皆さん方のお兄さん、お姉さん的な年代の先輩が指導員として、日々サポートしてくれます。皆さんも環境が変わって、仕事等で悩むことがあるでしょうが、指導員となった先輩がそれを親身に聞いてくれますので、何でも隠し事をせずに相談してみてください。必ず皆さんに正しい方向と対処の仕方を教えてくれるでしょう。
*第三の約束は、「ご両親やご家族、先生方への感謝の念の発揮」です。
まず、皆さんに実践してもらいたいのは、皆さんをここまで育ててくださったご両親やご家族、先生方にお礼を言って欲しいということです。
今日、帰ってから、電話でもメールでもLINEでも結構ですから、「今日までありがとうございました。これから社会人として頑張ってやっていきますから、安心してください」と感謝の気持ちを伝えてもらいたいのです。併せて、コロナ禍でも「両備グループは大丈夫だよ」とご両親方に伝えて安心してもらってください。
両備グループでは、まず「良き社員」の前に、「良き子ども」であって欲しいと思います。今までお世話になったご両親にお礼の言葉が言えなければ、見も知らぬお客様に思いやりの気持ちなど持てるはずがありません。
「皆さんへのプレゼント」
今日は皆さんに素晴らしく楽しいプレゼントを贈ります。
それは、新入社員の皆さん全員にお渡しする「両備フレッシュパスポート」です。和歌山電鐵の「たま電車ミュージアム号」や岡山電気軌道の「おかでんチャギントン」などの楽しい電車たちや、神戸ベイクルーズの御座船「安宅丸」、国際両備フェリーの「おりんぴあどりーむ せと」をはじめとする小豆島航路のフェリーたち、夢二郷土美術館や夢二生家記念館・少年山荘の入館券、ひるぜん塩釜キャンピングヴィレッジや「杜の街グレース」、昨年の秋にオープンしたばかりの杜の街プラザ等々、両備が実現した夢の数々にご家族や友人たちと一緒に触れてみてください。
まず、皆さんやご家族の皆さん方に両備グループの様々な商品やサービスを知ってもらい、ファンになってもらうことが肝心で、自分がファンになって初めて皆さんがお客様に両備グループを心からお勧めできるようになるでしょう。
「売上なくして会社なし」というように、皆さん一人ひとりが「全員セールス」する商人(あきんど)であることがコロナ禍を乗り切れるかどうかの大事なポイントの一つです。「コスト削減なくして利益なし」で利益を生むためには生産性を上げてコストを下げ、経営の効率化をしなくては、皆さんの生活を支えることはできません。
「忠恕の実践で世界一思いやりのある企業になろう!」
コロナ禍やロシアのウクライナへの侵攻やトルコの大地震などで、気の滅入ることが多い時代ですが、スポーツの世界では3月のWBC(世界ベースボールクラッシック)は本当に素晴らしい試合でした。大谷選手やダルビッシュ選手、ヌートバー選手をはじめ日本を代表する選手の皆さんの大活躍は本当にワクワクしました。ヌートバー選手は、お父さんがアメリカ人でお母さんが日本人ですが、幼い時から「私は日本人です」と言っているように、和魂洋才で今回の試合でも素晴らしい攻守を見せましたが、試合後に球場を去る時は帽子を取って一礼し、記者会見が終わったら自分のみならず他の選手のいすも綺麗に並べ、疲れていてもファンの求めに一生懸命応えてサインをしてくれています。きっと、お母さんが教えてくれたのでしょう。今の日本人は、ともすればこの「和魂」を忘れがちで、自分主義・個人主義に陥っていますが、チームのために一丸となっている侍ジャパンの選手たちは見ていて清々しく素晴らしいです。また、応援している観客側も、大谷選手が打ったホームランを運よく取った女性が、そのボールを皆さんにリレーのように回してあげて記念写真を撮ったら、ちゃんとその女性にボールが戻ったことを世界が知り、海外メディアやSNSが大絶賛してくれています。
この「思いやり」こそが世界に向けた日本の宝であり両備グループの経営理念なのです。今後ますます大事になることは、他人を思いやるという「忠恕=真心からの思いやり」の発揮です。
かつて、儲けのあるコアビジネスだけを「専業特化」するという経営がもてはやされた時期がありますが、思いやりのある「人のため」「社会のため」になる仕事をすることが、結果としてリスクを分散し、息長く企業の価値を高めると言えるでしょう。
皆さん、これから一緒に「忠恕の実践」で「世界一思いやりのある企業」を創りましょう!
両備グループ