2023年 年頭の辞
ー 生産性UP、売上UPでコロナ禍克服! ー

両備グループ
代表兼CEO 小嶋光信

新年あけましておめでとうございます!

はや、コロナ禍も4年目に入り、パンデミックの凄まじさとロシアによるウクライナ侵攻の恐ろしさに加え、中国問題までが絡んで世界の歯車が一遍に狂ってしまいました。

昨年末に岡山の企業TOPが集まった会合で、会場の大広間の床の間に「天下泰平」という書軸が掛かっていました。現状は「天下泰平」どころか「天下大変」で、きっといつの世も泰平なことが少なく、願いを込めて書かれたものなのでしょう。

著名な経営学者のピーター・ドラッカーは、第二次世界大戦の終戦から冷戦時代が終わった時に地域紛争の時代になると予言しましたが、まさしく自分主義、自国主義が嵩じて一部の独裁者的リーダーの現出によって覇権主義がまかり通る時代が来てしまいました。

戦後の日本で平和な時代を過ごしてきた我々は、「国民を守るべきはずの国」が一部の指導者の権力欲で他国を侵略し、正義なき戦いで国民を戦争に駆り立て、相手のみならず自国の国民にまで多大な犠牲を強いることは国家犯罪であり国際犯罪だと強く思います。国連で発揮されるべき民主主義のルールが常任理事国というおかしな制度で十分機能せず、紛争と分断を拡げている様子を見ていると人間という生き物は進歩しないものだとつくづく思い知らされます。

そんな中、カタールのドーハで開催されたサッカーのワールドカップで、日本代表チーム・サムライジャパンが世界の強豪チームであるドイツとスペインを破り、「ドーハの悲劇」を「ドーハの奇跡」へと変えて、日本中が歓喜にわきました。残念ながら、あと少しで念願の8強に入ることはできませんでしたが、世界中を驚かせて称賛されたのは、試合に勝っても負けても、自国の試合でなくてもスタジアムをきれいに掃除して帰る日本のサポーターの姿でした。カタール大会開催中にFIFAが公式ツイッターで「汚れ一つない」と日本代表の控え室を称賛したことが広く発信されたこともあり、世界中のマスコミが注目して、テレビニュースのインタビューで日本のサポーターが「掃除するのは当たり前です」と異口同音に「当たり前」と答えたことから、何と「モッタイナイ」の次に「ATARIMAE」という言葉が世界で通用するようになりました。すると次々に世界各国のチームのサポーターたちが試合後のスタジアムを「ATARIMAE」といって掃除していく姿が見られるようになり、そのニュースは戦争のニュース等々で殺伐とした世界に温かい空気を拡げてくれました。

一日も早く、平和も「ATARIMAE」のことで、侵略者は国際裁判などで裁かれ、戦争しなくても解決されることが「ATARIMAE」になってほしいものです。

スポーツと言えば、年末にもう一つ良いことがありました。(公財)両備檉園記念財団でささやかな奨励賞の支援をしている倉敷FSC出身の髙橋大輔さんと村元組と小松原組の岡山勢の二組が何と全日本選手権でワンツーフィニッシュをしました。大ちゃんは何とフィギュアスケートのシングルとアイスダンスで二冠という快挙です。大ちゃんはいつもちょっとしくじるので、バンクーバーオリンピックの時には猫は何処から飛んでもちゃんと着地できるので「たま駅長」の写真を持たせたところ大きなミスなく銅メダルを取り、そのことが新聞にも載りました。今回も素晴らしい演技のラストでコケて、ハラハラドキドキでしたが、大きな点差で優勝してやれやれです。

昨年の経営方針は、
コロナ禍乗り越え事業の再構築
一に改革、二に変革、三に実行徹底を!
でした。

コロナ禍とロシアの侵攻や中国問題は、過ぎ去れば元の経済社会に戻るのではなく、社会のシステムや生活を変えてしまいました

新型コロナによって、団体から少数・個の世界となり、会議もリモート中心となり、買い物や食事の出前もオンラインが当たり前の社会になり、人流や物流が変わってしまいました。ロシアの侵攻や中国の覇権主義的行動から、資源の調達やサプライチェーンの在り方に対して国としてどうあるべきかが問われ、平和な日本も安全保障の在り方が問われる時代となりました。

2022年は、各部門・ユニットで果敢に「改革と変革」が実行され、両備グループとして強い体質になりつつあります。改善、改革と変革は永遠のテーマで、やり続けることが大事で、手を休めてはいけません

ともすれば、「貧すれば鈍する」で、新型コロナの経済災禍で、両備グループが「忠恕=心からの思いやり」を守り続けられるか心配しましたが、各職場とも労使の努力でサプライズプレゼントやグループ内転職での温かい対応等の思いやりあふれるほのぼのとした職場環境が醸成されています

両備グループの労使強存強栄の真骨頂が発揮されたと思います。

執行部門とそれらを統括した松田社長もこの前代未聞な世界不況のコロナ禍での大不況を経験し、攻めだけではなく守りもしっかりとして危機を乗り切る力を得たことは大きな財産であり、この大不況で学び、その中で両備グループ最大級の開発である「杜の街グレース」プロジェクトを粛々と進めている姿や、各部門・ユニットでのコロナ禍脱却の経営改善や新規事業の取組みに両備グループの未来を感じています

2023年の経営方針は、アフターコロナを睨み、
ルール厳守で安全・安心
生産性UP、売上UPでコロナ禍克服
とします。

*安全・安心は「ATARIMAE」

安全・安心とセキュリティは企業の生死を決める大切なファクターですが、ともすると、事件・事故が起こった時に再認識するようなことで、日ごろから安全・安心とセキュリティを毎日反芻して対処しなければ、いつも後の祭りとなってしまいます。

これは、トランスポーテーション&トラベル部門(以下、T&T部門)やICT部門のみならず、くらしづくりやまちづくりの部門でも同様で、ひとたび安全・安心やセキュリティ面での信用を失えば万事休すです。

特に、T&T部門では新交通三悪を策定していますが、いまだに飲酒やスマホ、バック事故等のケアレスミスが根絶できずにいます。今年はこれらの「知っていながらやってしまう」という、言わばポカミスなどの安全・安心違反のヒューマンエラーを徹底的に身体で覚えさせるように、「ルール厳守」で新交通三悪違反をゼロにしてください。

昨年から安全運転は心の問題が大事というので、その根底にあるホスピタリティやサービスに目を向けてサービス三悪改善運動」を進めています。

1.粗い運転→優しい運転
2.粗い言葉→優しい言葉
3.粗い接客→優しい接客
「粗い心」を「優しい心」に切り替える運動もだんだん端緒についてきました。

安全・安心とサービスは、両備グループでも「ATARIMAE」と言えるように、両備労使で力を併せて本気で取組んでください。

そのためには、口で安全・安心やセキュリティと繰り返しても、社員の皆さんの心に届いていないので、今年は班別など5~6人の小集団で各社、各カンパニーで職場ごとに1時間程度、それぞれ個別に開催して、「安全と新交通三悪、サービス三悪改善運動」をテーマに社員の皆さんのディスカッションと「安全・安心 誓いの言葉」のカードを自ら作って、1年間の指針として事故撲滅を図りましょう。

*日本経済が停滞から脱却するには生産性UPが必須

30年間も停滞した日本の経済を世界が揶揄してジャパニフィケーション=「日本化(病)」と言われています。いわゆるデフレ経済を脱却できずに低成長・低所得・低物価・低金利のままで停滞した社会になり、何とヘタをすると今年中に先進国脱落です。先進国の中で最低の一人当たりの生産性を何とかしなければ、豊かさの維持は困難です。この日本病にコロナ禍が加わったために、更に酷い経済の様相となっていますが、この日本病やコロナ禍の落ち込みを乗り切る秘訣は、一人当たりの生産性をUPして、売上をあげることです。

いつも「守って勝った大将なし」と言っていますが、まさに日本は30年間を守ってしまったために「失われた30年」となってしまったと言えるでしょう。

なぜ、日本は低所得になってしまったのか、ここをしっかり考えなくてはなりません。根本的に賃金は一人当たりの生産性がUPしないとあがらないのです。そして、「同一労働・同一賃金」なのです。従って、生産性をUPして、能力のキャリアアップをしないと賃金があがらないという当たり前の時代になったのですが、高度成長期やオイルショックの高インフレ対策のベースアップが当たり前と勘違いしたことが低迷する要因でしょう。

日本は時間で賃金が支払われるため、効率が無視されていますから、同じ成果を頑張って短い時間でやり遂げると賃金が減ってしまいます。この仕組みでは、効率をあげた正直者は働いて損をするので、日本は効率があがらない社会を築いてしまったのです。

両備グループでは、20年以上前から「能力主義的安心雇用」に転換するように促していますが、まだ一部しか達成していません

また、人生100年時代を迎えて、年齢給や退職金制度を大幅に変更しなければ、生産性と賃金が全く不合理になってしまいます。

生産性をあげれば賃金もあがるように、「正直者が得をする」ように、大きく改善してください年齢ではなく、生産性と能力で報われる賃金体系に早く切り替えてください。

特に、2024年4月から労務改善基準が適用される予定で、生産性をあげる仕組みにしていかねばT&T部門や現場作業部門は一人当たりの生産が大幅に下がってしまい賃金も下がってしまいます。早急に労使で真剣に議論し、対策してください。

この生産性UPができるか否かが、21世紀の両備グループ発展の大きな鍵となります。

生産性UPには、賃金体系の能力主義的安心雇用への制度面の変更と、社員の皆さんのエンゲージメントと幸せ感の高まりが大事です。

松田社長が執行部門に向けて、「やり切る」という2023年のスローガンを掲げています。大事なことは「行動規範」にあるように、良いと思ったら「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」を「やり切る」ことなのです。

*地域公共交通が大きく変わる道筋ができた!

日本の地域公共交通は、バス事業も鉄軌道も8~9割が赤字という企業体質だったところへこのコロナ禍で、ほとんど全社赤字の事業となってしまいました。今回は大手も手ひどい被害を受けていますが、特に、バス事業は路線事業の赤字を観光バスや高速バスの黒字で内部補助して補って、何とか賄っていただけに、その観光バスや高速バスもなかなか将来の目途が見えない現状では、事業モデルが大きく変わったと考えなくてはなりません。

両備グループでは、津エアポートラインでの公設民営の実証実験の成功から、和歌山電鐵や中国バス、井笠鉄道の再建を通じて地域公共交通活性化再生法や交通政策基本法の法制化に携わり、(一財)地域公共交通総合研究所を設立して、全国各地での再生を通した実証や2020年秋から2022年夏までに4回にわたるコロナ禍による被害実態の調査・分析を調査報告書として広く発信し、提言活動をしてきました。地域公共交通の改革は政治課題と方針転換し、再生を手がけた地域の国会議員の皆さんに窮状をお伝えしたところ、昨年の春に宮沢洋一議員が会長、加藤勝信議員が会長代行、山下貴司議員、赤沢亮正議員が会長代理、岸田総理が顧問として「公共交通ネットワーク再構築議連」が設立され、『骨太の方針2022』で「地域公共交通のネットワーク再構築」が政策課題となりました。片山さつき議員も金融調査会などで公共交通の応援をしてくださっており、地域公共交通の課題が国の課題として大きく動き始めました

この動きを後押ししたのが、JR西日本の赤字路線の発表です。地方鉄道へ大きく目が向けられており、実態はバス事業も旅客船事業も航空事業も変わらずで、今後の地域公共交通の動きが変わってくると思います。

残念ながら、日本は事件が起こらないと変わらないことと、目先が改善すると改革の手が止まってしまうので、今回は何としても地域公共交通がサステナブルに維持・発展できるように制度改革に向けて更に頑張らなくてはいけないと思っています

*2023年の経営テーマ

皆さんの企業経営のテーマとして、将来の両備グループにとって大事な3点を説明します。

1.若手を磨け!
両備グループは、ヒューマントレジャーセンターやSSP-UPセンターなどの教育機関や、経営管理基礎講座という通称・両備大学、青年重役制度(JB制度)という通称・両備大学院に加え、RQC活動や言わば予備校的役割の30歳までを対象としたU30、25歳までを対象としたU25という活動に加えて職場でのOJT活動で人財の養成をしています。昨今は特にU30やU25の活躍が素晴らしく、もっともっと若い時から仕事での課題を与え、やりがいを創ってあげれば、ものすごく伸びると実感しています。

各社、各カンパニーで、もっと若手にテーマを与えて活用を図ってください。もっと若手をRQCやU30、U25をはじめとして経営管理基礎講座やJB活動などで思い切って磨いてください!大きな成果が出るでしょう。

2.健康こそ全て!
両備グループは「日本一健康な企業」を目指していますが、残念ながら、現状は全国の平均値より下位にいます。両備健康づくりセンターが中心となって必死に啓蒙していますが、中高年を中心に今一つ「健康思想」が欠如しています。朝の「欠食」、「どんぶり飯で野菜不足」、「寝る前の飲食」、「喫煙」、「運動不足」と数え上げたら不健康要因が目白押しです。人生50年の時代には、健康が大きな問題になる前に人生を終えていましたが、人生80年、100年時代は「健康こそ全て」の生活の基礎です。日本人は長命と言われますが、実態の健康寿命はマイナス7年であり、高齢化の最後は7年間も寝たきりという始末です。

1999年に、両備グループの方向性として「チェンジ、チャレンジ、コンペティション」で21世紀はこうなる!と予想しましたが、まさに予想通りとなり、もう国が国民を守れる時代は過ぎ去ろうとしています。「一身独立して一国独立す」とは福沢諭吉先生の卓見ですが、まさに自分のことは自分で責任を持つ、その責任の前提となるものは自分の健康だとしっかり認識してください。今後、若い社員には入社早々から健康思想をしっかりと植え付けていきます。

「社員の幸せの方程式=健康×能力×やる気+夢」で健康を一番前に持ってきているのは人生の幸せの基礎は、実は健康なのです。健康があれば、多少お金がなくても生きていけますが、不健康ならいくらお金があっても足りません。その上、不健康では人生の幸せのチケットが買えません

3.やり切れ、やり続けろ、DX!
昨今、世の中でDX、DXとお題目のように言っていますが、みんな上手くいっていませんし、IT化とDXは違います。もちろん、IT化は今日では当たり前で、IT化していない企業は残念ながらいずれ淘汰されていくのではないかと危惧しています。

両備グループは生活総合産業として、一つ一つの事業は大きくありませんが、生活を中心とした企業集団として世界でも稀なる存在なのです。その業態に西日本でトップクラスのICT部門の両備システムズグループがあることが、両備グループの最大の強みと将来の可能性なのです。

いろんな事業を知り尽くし、異業種も含めて多彩な事業と経験からICTという触媒で化学変化が起こり、新しい価値を生み出す事業を創造していかなくてはなりません。実は、これができるもっとも近いところにいるのが両備グループなのです。若手社員のワーキングチームでもあるU30やU25には、同じく若いICT部門の若手メンバーがたくさん参加していることで、大きな化学変化が起こっています。

ぜひ、COOや幹部の皆さんは興味を持って、彼らの問題意識やソリューションを聞いてあげてください。自分の会社、カンパニーの若手社員の意見に興味を持たなければ、DXなどは絵にかいた餅でしょう。むしろ、経験の浅い若手ほど、思い切ったプランができてDXに近づけるのです。その意見を幹部が聞けば、事業化の道が見えてくることでしょう。

「やり切れ!DX!」… これこそが両備グループのチャンスです。

*経常利益の松竹梅に加え、成長性の松竹梅と安全性の松竹梅を制定します

2000年に入って、両備グループの経営の指標に両備グループ独特の松竹梅管理を創定し、経常利益率7%以上を松企業、5%以上を竹企業、3%以上を梅企業として基準を設け、企業と役員の評価基準を創りました。当初、両備グループの経常利益は何と梅以下の2.2%。この基準で皆さんの目標ができて、コロナ禍にあっても現在は5%越えというグループ全体では竹ランクの企業グループとなり、上場企業と比べても業績の良い企業グループに比肩しています。すでに各社・各カンパニーでは、特松という経常利益率が10%を超える事業もゴロゴロと出てきており、今後が楽しみです。

実は、2000年当時から日本の低成長を予見して、ムリな成長基準は入れず、しっかりした収益体制への切り替えを目指しましたが、今後の経営には収益力とともに成長性と安全性が重要となるため、新たに基準を設けました。

<成長性の松竹梅>
松:成長率 7%以上
竹: 〃  5%以上
梅: 〃  3%以上

<安全性の松竹梅>
松:自己資本比率 40%以上
竹:  〃    30%以上
梅:  〃    20%以上

「社員の幸せ」として、それぞれの部門やカンパニーの業績が上がれば目に見える「決算賞与」を両備独自の社員への企業配当として創り、このことが「企業の収益力を上げれば、自分たちの手当ても上がる」という実感を醸成できましたが、今後は更に社員が幸せになる基準を加えて、安全性の高い成長企業として、より一層、働く社員が魅力的な企業にしていきます

*守って勝った大将なし!

未だ、4年越しとなったコロナ禍には収束の兆しが見えません。2020年1月に新型コロナの感染者が日本国内で初めて確認されてから1年後の2021年に「大ピンチは大チャンス!」と言いましたが、本当に皆さんの懸命な努力のお蔭もあって、大ピンチを乗り越えて大チャンスの兆しが見えてきました。コロナ禍の収束を待っていたら、企業が疲弊しきってしまいます。このウイズコロナ、アフターコロナへの対応次第で企業力には大きな差ができるのです。

守るのではなく、「生産性UP、売上UP」を合言葉にして、コロナ禍でも果敢に攻めて次代の先取りをしてください。

両備グループは、いち早く「忠恕=真心からの思いやり」を21世紀の企業理念としましたが、ヨーロッパも今までの競争主義や合理主義から転換して、国家や社会が「QOL(クオリティ・オブ・ライフ)=生活の質」を大事にする時代へと変わってきました

より良く働き、より良く楽しみ、エンゲージメントを高めてください。「忠恕」による「人に寄り添う」経営で、「社会正義、お客様第一、社員の幸せ」に向かって、両備精神ここにあり!と大いに豊かな心で社員一人ひとりがQOLを高めましょう!

両備グループ