2019年年頭の辞
より良く働き、より良く生きよう!

両備グループ
代表兼CEO 小嶋光信

あけましておめでとうございます!

不思議なことに毎年やってくるお正月ですが、今年は平成最期のお正月ということで、何となく前の一年間を振り返り、「よし、今年も良い年になるように頑張ろう!」という気持ちが湧いてくるものです。

平成の年号の由来は「史記」の「内平外成(内平らかにして外成る)」と「書経」の「地平天成(地平らかにして天成る)」から採られ、国の内外や天変地異が平和であることを願ったものでしたが、この願いとは裏腹に世界はテロや経済の不安定で内外ともに穏やかならず、天変地異に襲われ、まったく”平静”な時代ではいられませんでした。

昨年は、今まで見たこともない逆走台風や、大型台風による突風、そして、台風や前線で発生した線状降雨帯での大雨かつ長雨による災害や北海道の地震など、本当に異常で大きな自然災害に襲われた一年でした。西日本でもとんでもない水害が起こり、被害に遭われた社員の皆さんやご家族に心からお見舞い申し上げます。被災された地域や社員の皆さんの生活の復旧には多くの時間が掛かるかもしれませんが、グループをあげて物心両面の支援をしていきますので、どうぞ希望を持って頑張っていただきたいと思います。

全国で最も安全・安心と言われていた岡山県でも安全神話が崩れ、これからは何処でも危ないという危機感をもって対処しなければなりません。グループ全体で勤務地や住居のある地域のハザードマップを確認して、いざというときの心構えと対処法をしっかり持つことが災難を未然に防ぐ大きな手段になるでしょう。メールでの「社員の安否確認」なども今までは平和ボケして感心がない社員の方々もいますが、これらを含めて皆さんが安心して仕事をし、暮らせるようにグループとしていろいろな対応をしていきますので、「まあ俺は大丈夫!」という甘い考えは捨てて、ぜひ一人ひとりが真剣に取り組んでいただきたいと思います。備えあれば憂いなしです。

自然災害だけでなく、「古い悪魔」とフランスのマクロン大統領が指摘した、ナショナリズムという世界を最も危険にさらす自国第一主義がトランプ大統領の言動から世界中に蔓延する懸念が出てきました。そのマクロン大統領のフランスでも貧富の格差に不満を持つ民衆の暴動があり、国際的なテロや、宗教戦争を思わせる中東の紛争など第一次世界大戦や、第二次世界大戦前夜のような嫌な予感がしますが、こういう時こそ、「ピンチはチャンス!」と課題を乗り越えていかなくてはなりません。

今年の経営方針

昨年の経営方針は、
一、安全力・現場力・営業力を磨く!
一、エンゲージメントでやる気をアップ!

でした。
これからも安全力・現場力・営業力は、両備グループの経営の中心であり、大きな課題です。

今年の経営方針は、
一、モラルアップ、エンゲージメントアップ!
一、より良く働き、より良く生きよう!

とします。

日本は「失われた20年」の間に、どうも将来の夢を失い、「やる気=エンゲージメント」が世界の139カ国中132位まで低下してしまいました。どうもエンゲージメントの低下が心の病気を併発しているのではないかと思われますが、こんな状況を払拭するために、まず「モラル」をアップして「やる気=エンゲージメント」を大いに引き上げて毎日意欲を持って仕事に向かい、より良く働けるように「働き方」を改革していかなくてはなりません。

「働き方」改革は生産性を上げる努力をしないで漫然とやれば減収になり、「働けない」改革になってしまうので、働き方の創意、工夫が必須です。

両備グループは「忠恕=真心からの思いやり」の経営理念のもとに、社会のために、お客様の喜びのために社員一丸になって努力をして、結果として社員の皆さんが幸せになることが目的です。会社が目的ではなく、会社は皆さん方が幸せになるための手段なのです。

実は「より良く働き、より良く生きよう!」の経営方針は、私が両備グループに帰ってくる前の昭和48年に松田基 元・会長から「何か時代にあった良い経営方針はないか?」と問われて進言し、採り上げられたものです。今まさに働き方を変えてより良く働いて、経営方針のようにより良く生きて、皆さんが幸せにならなくては意味がありません。

より良く働くためには、まず働くモラルを確立することです。両備グループは「安全がブランド」であり、「安全を運転する」をモットーに各部門とも安全やセキュリティに取り組んでいます。お客様の生命や財産をお預かりしているという使命感と仕事への誇りをもって、日々マンネリにならず「安全を運転」する気持ちを強く持つことが大事です。

しかし、現場ではどうも「自分だけは大丈夫」という「自分第一主義」で運転中にスマホを使ったり、プロ意識の欠如した生活態度で睡眠不足となったり、酒気帯びで出勤したりということを根絶できないというモラル欠如が業界中に蔓延していることが大敵です。

今年は「たま大明神」の交通安全のお守りは青から赤に切り替えて、安全への意識改革を全社員で進めていきます。

そして、仕事中は、やる気=エンゲージメントで真剣に取り組んで生産性を上げる喜びを共有することが大事です。

「より良く働き、より良く生きる」秘訣は「個人の幸せの方程式=健康×能力×やる気+夢」に示されている項目を実行することです。何と言っても、自分の第一の財産は健康です。そして自分の仕事の能力アップを図って、ここまでやってみよう!というやる気が夢を実現させてくれるのです。両備グループはこの4項目を評価の中心に据えて、「真面目に努力をした社員が報われる」ようにオペレーションをしていきます。

昨年も素晴らしい事業の花が咲いた年でした。

昨年のトピックスで最大のものは、何と言っても両備バスの伝統的な西大寺線に競合会社が不当に参入してくるという事件ともいうべき問題でした。地域公共交通という赤字産業への「良いとこどりの進出」に対して、問題提起として国交省に「両備グループの31の赤字バス路線の廃止届」を提出しました。廃止届の提出は、このような競合会社の「良いとこどり」の進出を許せば、ほんの一部の黒字路線で大多数の赤字路線を維持している地方公共交通がもたないということを国に理解してほしかったということです。

会社だけでなく、両備グループ労働組合連合会もこの問題を雇用維持、生活維持から重視し、世界でも珍しい「無改札スト」でご利用者には迷惑をかけずに社会問題として提起し、アメリカのブロガーで有名な「テキサス親父」さんから「文明的な人達のストライキ」として称賛され、ストライキの多いフランスでは「日本を見習え」という声が出たほど国際的にも波紋を呼んだ運動となりました。

国としても、この両備グループの問題提起に対して、石井国交大臣や国会での安倍総理大臣の答弁で「少子高齢化で人口減少が進む地方では競争と路線維持は両立しない」という認識を持っていただき、国交省で検討する委員会が設立されました。また今まで岡山市に無かった協議会も第一回岡山市公共交通交通網形成協議会として開かれ、岡山市だけでなく全国的な地域公共交通の問題として採り上げられるようになりました。

両備グループが発したこの問題提起は、行政だけでなく国民にも多くの共感を呼び、利用者の利益の指針である地域の国民の要望は「路線維持」がトップクラスに上がってきています。地域の公共交通は基礎的なインフラであるということをしっかり見つめなおして、国として対応していかなければ「地方消滅」の前に、「地方交通の消滅」が起きてしまいます。

今後の地域公共交通を守るには、
1.競争政策の弊害を糺し、表面的な制度改革に終わらず法改正をすること
2.ヨーロッパの先進国並みの交通目的税などの財源確保をすること
3.公共交通維持のみならず、環境や国民の健康を良くするという観点からの「乗って残そう公共交通」の国民運動化を国家問題として捉え、強い信念で地域公共交通を維持するという体制づくりをすること

の3つが必要です。

その他のトピックスとしては、

■トランスポーテ―ション&トラベル部門

[バス、鉄軌道、タクシーユニット]

1.今年も猫社員が大活躍 
・和歌電:よんたま駅長見習いが駅長に(1/5)
・おかでんミュージアムに「ねこ館員・美宇ちゃん」登場(1/24)
・和歌電:「三毛猫ヤマト便」全国初登場(2/5)
・「たま駅長」と赤い子ぎつね「アリ」の物語が北京でキックオフ(7/28)
・岡電:後楽園線に新たに「夢二黑の助バス」を導入(3/7)
・両備:津山線に「たまバス」を「岡山エクスプレス津山号」として投入し魅力アップを図る(9/7)
・岡電:観光バスとして後楽園バス登場(10/5)
2.おかでんチャギントン電車がお目見え
・世界初!路面電車に「チャギントン電車」が登場!ウイルソン・ブルースター号が観光列車に(1/11)
・チャギントンラッピング電車が和歌山に登場!(10/4)
・おかでんチャギントン電車が岡山に誕生!(10/23)
3.「中国バス100周年大感謝祭」を関係市町の参列を得て開催(10/21)
4.ミジュアリータクシー登場!(8/6)
5.WONDERFUL SETOUCHI BUS が誕生!

[フェリーユニット]

1.子どもも楽しい「クルーズフェリー」新造発表(5/18)

[トランスポートユニット]

1.ミャンマーのティラワ工業団地内に延床面積34,824㎡の4温度帯最新鋭倉庫が竣工稼働(6/12)
2.ベトナムRVDSのSHTP内倉庫がフル稼働となり、9月に竣工後、2年で単月黒字化
3.西日本豪雨災害の救援物資輸送業務や積み替え保管業務に対して中国運輸局や取引先企業から多数表彰

■ICT部門

1.両備システムズ:「岡山の人気企業ランキング1位」獲得(4月)
2.リオス:商用バスロケとして全国で初めて標準的オープンデータ公開(8月)
3.R‐SOL:「おかやま健康づくりアワード」を受賞(9月)
4.シンク:本社を博多駅前へ移転し、同一ビル内にICT部門新オフィスも開設(10月)
5.両備システムズ:富士通ミドルウェアマスター試験への取り組みが評価され、富士通Top Technology Company賞を受賞(10月)

■くらしづくり部門

[くるまユニット]

1.岡山三菱ふそうの本社・支店がふそう販社で5Sナンバーワンを獲得
2.両備テクノカンパニー倉敷工場がISO9001の認証を取得

[STARユニット]

1.ソレックスは事業完全黒字化、大幅増益(前年比575%)見込み
2.ユニット各社の創意工夫と活性化でユニット合計の経常利益が前年比152%に伸びる見込み

[生活ユニット]

1.部門内販売協力が進み、サルボ両備のカタログ販売(グルメ倶楽部・HFヨーグルト)を実施し、約400件の契約に成功。売上金額≒16,000千円・利益≒2,600千円の実績を確保。
2.ストアC:「フレッシュ・マルシェ倉敷駅前店」グランドオープン!(4/10)
3.ストアC:ボージョレ・ヌーボの販売で前年比約3倍を売上(売上本数 1,521本/前年比314%)。

■まちづくり部門

1.不動産広島C:広島第一弾! 「グレース幟町タワー」竣工!(5/24)
2.アールエステート+蒜山キャンピングヴィレッジPJ:「ひるぜん塩釜キャンピングヴィレッジ」オープン!(7/26)
3.岡山まちづくりC:岡山市立芳明小学校に雨水貯留タンクを寄贈(9/6)
4.岡山まちづくりC:グレースタワーⅢのポケットパークに「たま神社」の分社を建立!(10/11)
5.不動産東京C:大阪御堂筋にて大型オフィスビルのSPCへ出資
6.和田コーポレーション:売上100億達成(平成29年度)

■社会貢献部門

1.ワンダフルセトウチ/DISCOVERWEST連携チームがツーリズムEXPOジャパン2018で準グランプリを獲得!(9/23)

逆境にも伸びる両備グループ

両備グループは、不思議と問題が山積みの時ほど発展するという面白い企業グループで、「失われた20年」と言われたバブル崩壊以降の停滞期にも首都圏をはじめ、全国へとビジネスを拡げて地方の衰退をカバーしてきました。更に海外ではベトナムの多温度帯の物流倉庫が黒字化に5年を見込んでいましたが、現地の努力もあって2年強で黒字化したことには海外進出の大きな成果として勇気づけられました。ミャンマーのほか、タイへと着実に海外進出が進んでおり、今後はICT部門でも海外進出を積極化していきます。両備グループの各事業は、人間が生きていくには欠かせない事業の展開をしていますので、そのノウハウを持って世界中どこでもその国のお役に立つ進出ができると言えます。

また、両備グループは漫然と経営しているのでなく、その時代に社会に必要なテーマを持って事業を進めています

公共交通利用で「歩いて楽しいまちづくり」をテーマに、更にサブタイトルとして「子どもの楽しいまちづくり」のコンセプトを加え、グレースタワーⅢでは4階屋上に子どもも大人も楽しめる「グレースの杜・ポケットパーク」が水戸岡デザインで完成し、和歌山電鐵・貴志駅に鎮座している「たま神社」が初めて分社されました。イトーヨーカ堂の跡地開発でも「杜の街づくりプロジェクト」が始動しています。

また、両備グループの「まちづくり部門」では、大型開発した地域は、開発したらおしまいという常識的な業界慣行にチャレンジして、開発後も出石小学校跡地のインターパークスや妹尾駅前の「妹尾ニューシティ」などで地域と一体になってクリスマスイルミネーションをサステナブルに大きく展開していく、「明るいまちづくり」に取り組んでいます

両備グループは、公共交通の再生で地域の公共交通を守ってきましたが、それだけではなく、地域の都市の魅力づくりに大いに取り組んで「まちづくり」を基本テーマとしています。和歌山電鐵のみならず、岡山市でも今年の3月にはいよいよ「おかでんチャギントン電車」が営業開始しますが、LRT「MOMO」や、路面電車の「たま電車」「KURO」が走り、バスでも「ニャー」という停車ブザーでお馴染みの「たまバス」や、「黑の助バス」など楽しい電車やバスだけでなく、「子どもも楽しいクルーズフェリー」など、「世界で唯一の楽しい乗り物のまちづくり」をしています。

特に、これからの時代のキーは、「物流や交通」と「ICT」の融合で、人の移動やモノの販売が大幅に変わってくるでしょう。また、ロボット化での取り組みは新たなビジネスチャンスを開いてくれると思います。

そして、あらたな「AI、IoT、ロボット化」の時代に先駆けて、社員の皆さんがロボットに仕事を取られてしまうのでなく、「より良く働ける」ように、現在、多能工化を進めていますが、これからドンドン、一つの仕事からマルチの仕事へと幅が広がった次世代型の社員が生まれてくると思います。

ビジネスでは合理主義が蔓延し、心を失った不確実な世界が広がっています。不確実な世界では、かえって両備グループの「忠恕=真心からの思いやり」が評価される時代になるでしょう。「真心からの思いやり」こそが両備のビジネスの目指すところです。

今年天皇陛下がご退位されるということでマスコミの特集がたくさん組まれていますが、何気なく昨年末テレビを見ていたところ、50才になられた皇太子時代の会見で好きな言葉はと問われると、ためらいなく「忠恕」をあげられ、その中で日本にとっても最も大事な言葉だと言われていました。「自分の事のように相手の事を思いやることが大事です」と言われており、ますます両備グループの経営理念として我が意を得たりと大変うれしく思いました。

昨年12月に第35回SSP-UP技能コンテスト大会が開かれました。その中で、入社間もない若手社員の事務部門のスピーチ協議の題材は「未来につなぐ!両備でもらった忠恕の心」でしたが、彼らが一生懸命職場で忠恕の心を実践している姿が垣間見られ、着実に「忠恕の心」が現場で育っていることを実感できる素晴らしいスピーチばかりでした。

思いやりの心のこもった仕事を通じて「より良く働き、より良く生きる」ことで、皆さんが自ら幸せを掴めるようにしていきたいと思います。

ご安全に!

両備グループ