Message代表メッセージ

2018.03.15

「廃止届を取り下げる」ことで4市長との協議がまとまりました!

両備グループ
代表兼CEO 小嶋光信

両備バス、岡電バスの廃止届の提出により、ご利用いただいている皆さまには多大なご不安とご心配をおかけしたことを先ずもってお詫び申し上げます。

本件について、3月14日に岡山市長、倉敷市長、玉野市長、瀬戸内市長から廃止届取り下げの要請がありました。

この廃止届は108年の間、両備グループが育て、赤字路線を支える大きな原資となっている路線(西大寺線)を狙い撃ちにした競合会社の今回の申請に対し、市民への周知もなく、何ら公の協議もないまま突如認可されたことに対する国への抗議と、少子高齢化社会における地域公共交通が、規制緩和による競争によって如何に毀損されるかという問題提起として出したものです。もし本件認可を看過すれば、全国で黒字路線のみを狙ういわゆる路線のクリームスキミング的進出を許すことになりかねず、一部の黒字路線で多数の赤字路線を維持している地域公共交通を崩壊させかねない現状に対する警鐘を鳴らすものでもありました。

この警鐘は、国民の皆さまの地域公共交通への不安とその維持に向けた共感をいただき、SNSなどの調査では90%を遥かに超えるご賛同を得て、国民の関心の高さを実感いたしました。ご賛同くださった多くの市民、国民の皆さまに厚く御礼を申し上げます。もちろん、今回の廃止届については厳しいご意見もいただいていますが、いただいた全てのご意見を真摯に受け止めて参りたいと思います。

そしてこの度、4市長の皆さまからの廃止届取り下げの要請を受け、また私どもを含めた五者間で協議を行った結果、今週中に廃止届を取り下げることを決意しました。廃止届取り下げの理由については、以下のとおりです。

1.新学期や新年度が迫っており、新入生や新社会人の皆さまが社会に出る門出の4月までには問題解決をしておきたいという思いがあったこと。

2.多くの国民の皆さまの応援と声援をいただき、異例なことにこの廃止届提出の5日後の2月13日に石井国交大臣が記者の質問に答える形で、少子高齢化社会では『規制緩和の競争と路線維持は両立しない』という私の主張に理解を示され、また『今後の地域公共交通政策をしっかり進める決意』を述べられ、続く2月22日の衆議院予算委員会の質疑でも安倍首相がこの石井大臣の意見に沿った答弁をされ、地域公共交通への国の理解と今後の方向性が見えたこと。

3.平成21年1月に岡山市に要請して以来、9年間設置がされなかった法定協議会が岡山市で開催されることになり、また、岡山県でも地域公共交通対策協議会が開催されることが決定したこと。

4.関連4市の首長の皆さまから地域の交通網を守りたいという熱心な要請があり、協議の結果、今後、地域公共交通維持の努力を連携して進める旨の各市の意向が確認できたこと。加えて今後、岡山市、倉敷市、玉野市、瀬戸内市の4市が、本件に関する提言を国へ行っていくということも伺っており、全国的問題として提起したことが今後、議論されるということが確認できたこと。

数ヵ月に亘って、監督官庁他、関係各所へ本件認可が下りた際には、地域公共交通網の破綻を招き、結果、地域の健全たる発展・維持が阻害される可能性があること、またこの岡山の本件が前例となって、全国で同様の事例が起こりかねない重大な問題であることを訴えて参りました。地元の方々にも、日常的にご利用される公共交通機関というご自身の生活と深く関わるものについて、今何が起こっているかを正しく把握していただくために断腸の思いで決断した廃止届という形での訴えが、ムダではなかったと、今実感しています。

今後については、
1.3月5日に提言した10の提言の実現を関係各所と連携しながら進めます。

特に柱となる、
(1)規制緩和の弊害を解消するために道路運送法改正などの法整備をし、特に路線のクリームスキミングを明確に審査項目の一つとすること。
(2)少子高齢化社会の地域公共交通を支える新たな財源として交通目的税を新設すること。
(3)国民の積極的な公共交通の利用を促す、「乗って残そう地域公共交通運動」を国家的
プロジェクト(国民運動)として推進
すること。

以上、3つの提言内容が実現され、法的にも財源的にも、利用者である国民の意識改革としても、公共交通が地域活性化の一つのツールとして少子高齢化社会でもサステナブルに機能するように、関係自治体とも協力して最大限、努力して参ります。

2.本件の認可取り消しへ向け引き続き努力します。
(1)情報の公開請求
(2)行政不服申し立て
(3)申し立てが理解されねば裁判

地域路線網維持より競争が優先と言う国の認可理由が全国の悪しき前例とならないように徹底して闘います。既に石井国交大臣が「地域公共交通において路線維持と規制緩和の競争は両立しない」と理解されているので、どのような結論が出るか注視していきます。

今回の廃止届によって、地域公共交通を支える国、自治体、公共交通事業者、市民の皆さま、それぞれが少子高齢化社会では地域公共交通を維持することが如何に重要かを再認識していただけたのではないでしょうか。

特に私どもの社員には、路線網を維持するためには地域と市民の皆さまに向き合い、寄り添っていかなければならないという大きな使命感が生まれました。そして、地域の皆さまから「両備さん、何か協力することがある?署名運動でも何でもするよ」と言っていただいたときには、108年の先輩たちの努力がこの路線に血のように流れているのだなと実感しました。

両備グループは、規制緩和以来、地方の公共交通に過度な競争を持ち込むのは危ないと将来を分析し、路線維持に努めてきました。また、路線維持だけでなく、公共交通利用で「歩いて楽しいまちづくり」運動、「エコ公共交通大国おかやま構想」や「子どもの楽しいまちづくり運動」を提唱し、地域活性化のツールとしてのノウハウに磨きをかけてきました。

乗り物を移動だけの手段ではなく、楽しく観光に、地域の活性化に活かす工夫をし、実践してきました。バスは鉄道と異なり観光資源にするのは難しい乗り物ですが、降車ボタンを押すと「ニャあ~ん」と鳴く岡電バスの「たまバス」や「黑の助バス」など新たな試みが観光とインバウンドの起爆剤になるものと期待しています。

「雨降って地固まる」ように、今回の廃止届の問題提起が地域公共交通を新たなステージに創り変え、導くものとなるように全身全霊を傾けて頑張りたいと思いますので、ご支援・ご声援をよろしくお願いいたします。

両備グループ

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