平成29年年頭の辞 優しい言葉、思いやりの行動 初心に帰り、安全意識の再構築!

両備グループ代表兼CEO
小嶋光信

あけましておめでとうございます!
皆さんご家族と良いお正月を迎えられ、心新たに過ごされたことと思います。

今年は、全日空さんの初日の出フライトに乗せていただくチャンスに恵まれました。本当にフライト日和となり、素晴らしい空からの「初日の出」と「ダイヤモンド富士」を堪能できました。定期便の帰路も、思いがけず富士山の上を飛ぶルートとなり、まさに真上から綺麗に冠雪した富士山を眺めることができました。人間とは面白いもので、大の富士山好きの私にとって本当に素晴らしい新年の出発となり、一年のモヤモヤも吹き飛び、大いなる希望が湧いてきました。

素晴らしい事業活動が目白押し

昨年の企業業績は、不動産関連や燃料安でのコスト安で好調に推移しました。また、新規事業や夢のある取り組みが目白押しの良い一年でした。

国内においては、

  1. 新生「岡山ガーデン」に子どもが楽しめるツリーハウス登場
  2. ニャーと鳴く乗降ボタンのたまバス・路面電車が登場
  3. たまバスで、自転車が乗れるバスを自社開発
  4. たま駅長が「和歌山殿堂第1号」として殿堂入り(2月)と、和歌山電鐵新しい10年へ
  5. 瀬戸芸5島を巡る島一泊クルーズのテストマーケティング実施
  6. 和歌山電鐵に「うめ星電車」が初お目見え
  7. 「グレースタワーⅢ」の販売開始と水戸岡デザインのポケットパークの発表
  8. 「両備バスまつり」や「両備タクシーまつり」の開催
  9. 井笠バスカンパニーに、「菜の花バス」(4月)に続く、「ひまわりバス」が登場
  10. 両備テクノカンパニー倉敷工場の起工
  11. 「小豆島サイクルステーション」のオープン
  12. 乗り物から乗りたい物へ「おかでんミュージアム+水戸岡鋭治デザイン」のオープン
  13. 情報系は両備システムズの藤崎第4棟の起工とIDC拡張の発表

社会貢献事業としては、

  1. 夢二のふるさと・岡山で竹久夢二学会「夢二国際シンポジウム」開催
  2. 「第2回ひがしやま備前焼市」開催
  3. 夢二郷土美術館で幻の名画『西海岸の裸婦』を一般公開
  4. 「ねこの駅長たま~びんぼう電車をすくったねこ~」を執筆、角川つばさ文庫から発刊
  5. (一財)地域公共交通総合研究所の第4回シンポジウム開催
  6. 「ツーリズムEXPOジャパン2016」へ、県内14の自治体と協働で華々しく出展
  7. 夢二郷土美術館に「お庭番 黑の助」登場

と多彩に繰り広げました。

加えて、(公財)両備檉園記念財団で応援しているフィギュアスケートの田中刑事選手が、「第85回全日本フィギュアスケート選手権大会」で準優勝し、今年の世界選手権への出場が決まったことも、髙橋大輔さんに次ぐ快挙として我が事のように嬉しい出来事でした。

海外においては、

1.ベトナム・ホーチミン市に7温度帯のランプウェイを備えた最新鋭の物流倉庫を完成

2.ミャンマーに新規進出の足掛かりを構築

と順調に進んでいます。

個人的にも、国土交通大臣から交通文化賞をいただきました。この表彰は、これまでの和歌山電鐵などの公共交通の再建と、それらの取り組みが交通政策基本法などの法律制定の原動力になったこと、そして、(一財)地域公共交通総合研究所の設立に関して評価いただいたという個人表彰で、嬉しい表彰でした。これも、支えてくださっている皆様のお蔭であり、心から感謝です!

景気は大きな転換点

今年は景気の大きな転換点を迎えており、トランプ相場ともいえる株価や原油が値上がりを始め、加えて円安が進行しています。輸入品の値上がりで国内物価の上昇が懸念されますが、一方で輸出が好調になる、インバウンドに弾みがつくなど経営環境の変化が大きいので、経営のかじ取りは要注意です。

日本一働きやすい会社を目指して

両備グループは、「会社のためではなく、お客様のため、社員の幸せのために会社がある」を基本に、経営方針の「社員の幸せ」を実現すべく、働き方改革を重点施策として実施しています。生産性を上げ、利益を確保するのもその目的を達成するための手段として必要だからです。

「社員の幸せ」プロジェクトで、クオリティ・オブ・ライフ=QOLの改善を図ります。

  1. 全職種で、社員は最低月一回は家族と過ごせる「土・日祝休み」が確保できる体制への取り組みに努力します。
  2. 時間外、休日出勤は三六協定遵守で、上司の指示で行動するように徹底します。
  3. 働く女性の応援プロジェクトを女性管理職・経営職の特別講座や、女性特別JB(青年重役会)、「魁!ママさん塾」などで推進します。
  4. 若手からの健康教育やWEB健康セミナー2016の初開催で、日本一健康な会社づくりを目指します。
  5. 両備グループのOB会「両備グループ忠恕の会」を充実させます。

昨年の経営方針

昨年の経営方針は、「忠恕の実践、夢の実行」でした。昨年の事業の取り組みのように、大いに「夢の実行」は本格化してきていると思います。
しかし、「忠恕の実践」は、現場への落とし込みが重要な課題だと思います。

この6年くらい、新入社員の採用には「思いやりを大事にできない人は両備には不向き」と言って採用していますから、浸透してきていると思いますし、総合職は昨年の3月までに全員3カ年かけて経営理念や経営方針を学んでもらったのでベースはできています。

しかし、肝心な現場では、「忠恕」の言葉だけが飛びかい、内容までは本当に理解はできていないのではと懸念しています。もし、できていたら心を痛めるような問題は起こるはずがありません。これからは、「社員の心を創る」に魂を入れることが課題です。

昨年は、「安全・安心」の面で、運輸交通部門のみならず、情報関連部門や生活関連部門でも問題が散見されました。これらの問題は、ほんの一部の社員の気の緩み、経営職や管理・監督職の現場でのチェック不足、規則を軽んじることなどから生じる「人が原因」の問題と言えるでしょう。

「安全を運転する」という安全意識の再構築

まず第一に、両備グループは運輸交通業のみならず、事業の多くは「人の生命をお預かりしている」大事な仕事をさせていただいているということを再認識し、それを誇りに感じることです。
「何を守らなければいけないのか」「これをやったらおしまいよ」という、それぞれの部門の原理・原則と、規則と決まりを大事にしなければいけません。

安全の問題を起こした事業所の再発防止をチェックしてみると、

  1. 問題の事業所は、長年、自己責任の重大事故はなく、また、10万キロメートル当たりの有責事故も地球67周に一回という非常に安全な事業所でした。
  2. 問題を起こした乗務社員は、勤続11年で、7年来無事故で、無違反・無遅刻・無欠勤で明るく優秀な乗務社員でした。

事業所も安全体質で、乗務社員も優秀な社員であったのに、何ゆえあのような大事件が起こったのか…です。

安全を阻害するエラーには大別して2つあるでしょう。

1.安全を組織的に管理する「安全システムエラー」
このシステムエラーは以下の2つに大別できます。
「安全管理体制エラー」とも言える、安全確保の法律、決まりや運輸安全マネジメントを守る仕組みと、その管理資料と管理組織があるかどうか。
「安全現場徹底エラー」と言える、決まりはあるが現場に徹底できているかいないか。

両備グループでは、「交通三悪追放プラスIB」で、「運転中の携帯電話、徹底追放」を決めていました。しかし、現場への徹底面では、管理・監督職は現場の携帯やスマホの使用状況の把握を普通にしていては防げず、職場に安全への文書を掲示しただけでは重要な情報は伝わらないということです。また、単に安全の唱和をしただけでは、絶対してはいけない禁止事項という強いメッセージとして伝わらず、今回の一件もそれが原因ではなかったのかと、現場への徹底状況を懸念しています。

2.人によって引き起こされる「安全ヒューマンエラー」
このヒューマンエラーも以下の2つに大別できます。

① その根底は、安全意識への「安全モラルエラー」であり、両備グループの「忠恕=真心からの思いやり」に基づく「社会正義」の経営方針の違反です。健康の確保をすることもプロの乗務社員のモラルの一つです。

乗務社員の安全モラルエラーは、管理・監督者の現場の教育・訓練と、管理・監督者が常に経営理念や経営方針の伝道者として努力することで防がなくてはなりませんが、何より、それらの徹底不足、現場からの遊離をチェックすることが大事です。

② もう一つ怖いヒューマンエラーが「安全うっかりエラー」です。
運転の技術や能力は問題なく関連法規や会社の決まりはよく理解しているのですが、仕事中によそ事を考えていたり、マンネリから法律や基本を軽んじて起こるうっかりケースが大半です。「これくらいは良いだろう」「人が見ていないから…」はインターネット時代には通用しません。何処ででもチェックされている時代、全ての情報が一瞬で世界を駆け回る時代なのです。

両備グループの管理方針は、社員一人ひとりが「自己管理」するように管理・監督することです。

両備グループは、西大寺鐵道を母なる企業としてバス事業に転化し、他産業に発展したことから、昔から乗務社員は会社を出たら自分が「しゃちょう=車長」と言っていました。即ち、会社を出たら管理できない職種なのです。法律も決まりをいくら作っても自らが管理して守らなければ「安全の確保」はできません。

今回、「交通三悪プラスIB」の改定をしていますから、全社あげて徹底してください。「仕事と運転中は一意専心」で、スマホや他のことに心を奪われず、仕事や運転に専念してください。それだけで防げるヒューマンエラーが大半です。

大きな問題を分析すると、安全システム面で管理状況も良く、過去の事故率も低い優秀な事業所において、本人も優秀な乗務社員で、通常のチェック体制では分かり得ぬことが起きたということです。運転中の状況をチェックしなければ分からないという、極めて、管理やチェックの難しいヒューマンエラーの壁にぶつかっていると言えるでしょう。

従って、昨年末、両備バスは人心を一新して初心に帰って組織と管理の再構築をしました。
今回のような問題が起こっても、多くのお客様が「大変でしたね」「心を痛められたでしょう」「両備の皆さんは素晴らしい仕事をしてくれて、これからもファンです」と励ましてくださいました。お客様の有り難みが身にしみます。

私は、大部分の両備社員は誠実で、安全を旨として心の優しい素晴らしい人間性をもっていると誇りに思っています。この悔しさをバネに、忠恕の発揮で、「日本一安全な運輸企業」を目指して、社員皆で協力して心新たに頑張りましょう!

こんな苦しい時期こそが「両備精神」の真骨頂を発揮するときです。ミスはミスと謙虚に認めて、大いに反省し、ここでもう一度、初心に立ち帰って全社員一人ひとりが「忠恕」の再確認をしてください。

「凡打を打ったらヒットを打つ」が両備精神で、社会やお客様のためにどんどんヒットを打ちましょう。現状にヘコまずに「信頼」の再構築を雄々しく進めていきましょう。

従って、本年の経営方針は、

一、優しい言葉、思いやりの行動
一、初心に帰り安全意識の再構築!

とします。

「忠恕=真心からの思いやり」をどのように現場で教育し、実践するか、まずは「優しい言葉」づかいと「思いやりの行動」を「すぐやる・必ずやる・出来るまでやる」ですぐ実践してください。人の命をお預かりする事業者として、「初心に帰り、安全意識の再構築」を図り、「日本一安全な企業」を目指して頑張りましょう。

昨年、各社各カンパニーで身近な忠恕のテーマを決めて、毎月チームごとに忠恕の実践をする「思いやりの見える化」を指示しました。会長方針でも「対流型経営」への変革を指示していますが、実際は上滑りしていたのではないかと謙虚に反省し、今年は徹底的に現場に下ろし、本当にしているか、できているか否かをチェックします。言いっ放し、やりっ放しにならないように、人事委員会を中心にPDCAを回していきます。

頑張った事業所を「忠恕・安全意識トップランナー」として表彰します。

21世紀の新しい事業

「思いやりでネクスト100年」として、21世紀の両備グループ創りに数々の取り組みをします。

1.AI(人工知能)とロボット化の推進

21世紀はAIとロボット化の時代で、もう数年で道路に無人の自動車が走り、介護や接客、配膳や移送などを支援するロボットがどんどん登場するでしょう。今、我々がやっている仕事の40%はロボットに置き換えられる時代になるとも言われています。すでに自動車工業などのメーカーは工場で多くのロボットが働いています。

それでは、ロボットに置き換えられる40%の社員は一体何をすれば良いのでしょう。収入を得ることができる仕事がなくなってしまいます。

実は、その時代のために経営理念を「忠恕=真心からの思いやり」にしているのです。今後、すごい速さで何も考えずに行なっている単純な作業や運転はロボット化していくでしょう。しかし、思いやりをもった行動、社会やお客様へ思いやりを考え実行し、社員の幸せを考えるロボットはいないのです。「流れ作業ではなく、考える仕事を!」と言っているのはその所以です。ロボットに優しさや思いやりを発揮する仕事や、クリエイティブな仕事はできません。

「忠恕の、人間にしかできない仕事をする」ことが価値を生み出し、この価値ある仕事で生活を豊かにすることが21世紀の事業課題です。

2.「子どもの楽しいまちづくり」

MOMOやグレースタワーなどで実践してきた「歩いて楽しいまちづくり」に加え、「岡山ガーデン」や「おかでんミュージアム+水戸岡鋭治デザイン」で方向性を示した「子どもの楽しいまちづくり」を徹底して進めます。少子高齢化や地方の消滅など暗い話題が日本全体に暗雲をもたらしていますが、こんなに良い日本を、素晴らしい地方を負の遺産にしてはなりません。子どもたちが目を輝かせて楽しく育つ「まち」こそが真のまちづくりであり、それを創りあげる力こそが両備グループのデベロッパー事業です。

3.「小豆島・瀬戸内海」を世界の観光地に

小豆島と瀬戸内海を世界の観光地にするために、海のななつ星プロジェクト、瀬戸芸クルーズの開発、小豆島サイクルアイランド構想、小豆島の88カ所ミニ霊場を復活させる小豆島スピリチュアル構想などを「ツーリズムEXPO」とフリーマガジン「WONDERFUL SETOUCHI(ワンダフル瀬戸内)」に連動して世界に発信し、世界の観光地とするメニューを創り、実行します。

新・会長方針問題も3年目を迎えます

新・会長方針とは、次の5つです。

  1. 営業力と労働生産性の向上
  2. 対流型経営への転換
  3. 日本一安全・安心な企業づくり
  4. 人を育てる経営の強化
  5. 伸びる地域へのシフト

しかし、新・会長方針で両備グループの課題を示したところ、各職場・部署での実行面で大きな差が出てしまいました。ちゃんと取り組んでくれた職場・部署は、対流型経営で社員とのコミュニケーションを確実に行ない、風通しの良い職場として進化しましたが、現場を疎かにしてCOOのリーダーシップをはき違えた職場・部署は問題を引き起こしてしまいました。問題を起こしていなくても、まだまだ、新・会長方針の真意を理解せず、旧態依然の経営をしているところが散見されます。

今年は、年齢・性別に関係なく、実務や課題を現場で考えることができ、すぐ行動して努力するリーダーの採用に大きく人事を切り替えていきます。ミッションをハッキリした発令で、人事評価と処遇に連動させていきます。

樹木の年輪は、寒さ暑さがハッキリするほどしっかりと刻まれていきます。厳しさを乗り越え、たくましく成長した企業に、明日以降、次の100年があるでしょう。

純金の純度は99.99%で、約9,000人の社員の両備グループでは、一人の不始末で純金ではなくなってしまいます。SMAPの『世界に一つだけの花』の歌のように、皆さん一人ひとりが両備の花として仕事への真面目な取り組みが、両備グループを純金に導いてくれる大事なポイントです。まさに皆さん一人ひとりが主役なのです。

「全ては安全・安心のために、全てはお客様のために」。ここで初心に帰って、「人のため、社会のために」を口だけでなく行動として、思いやりが発揮できる企業、お客様に「安全・安心」にお付き合いいただける企業グループとなれるよう、一人ひとりが責任感を持ってやる気一杯で頑張りましょう!

2017010401

2017.01.04
両備グループ