感動!サンピア倉敷スケートリンク存続奮闘記

両備グループ代表 
小嶋光信

今まで私のアフターファイブに行っているボランティア活動について多くを語ったことはありませんが、私が会長をしている岡山県スケート連盟でのサンピア倉敷スケートリンクの存続活動が、あまりに感動的で、奇跡とも言うべき素晴らしい話なので、みなさんにご披露することにしました。

世界的なフィギュアスケート選手である高橋大輔さんが育ったサンピア倉敷スケートリンクが、一昨年に施設全体が年金・健康保険福祉施設整理機構によって売却されることになり、昨年3月末で閉鎖が発表されました。大輔さんら世界に通じる多くの有望な選手が、フィギュアでもスピードでも育っているリンクであり、岡山県スケート連盟のみならず、日本のスケート界にも大事なスケートリンクです。直ちに対応について、連盟幹部から緊急の相談がありました。

私としては和歌山電鉄や中国バスなどの事業再生の経験から、存続にはまず地元のみなさんの熱意と行政の協力が必須であり、その見極めが必要でした。

岡山県スケート連盟としては、資金も無く、財政上行政での収容も見込めない中で、悩んだあげく、戦略を練りました。まずはホップ・ステップ・ジャンプで、私個人で心密かにサンピア倉敷トリプルアクセル作戦と命名した作戦がありました。トリプルアクセルとは、フィギュアスケートで、難易度の高い3回転半のジャンプのことです。

その作戦の前提は、

  1. 西日本の拠点として、子供たちの夢を叶えるスケートリンクとして存続を計る。
  2. スケートの収益力では建物などの施設賃貸料は払えず、運営費だけを賄う無償貸与を前提にした他設自営型という、最も難しい、難易度100%の作戦とする。

の2点です。

まずはトリプルアクセル作戦の
1回転目は、地元が燃えるか、地元行政が協力的であるかが課題
2回転目は、整理機構からリンクが借りられるか、借りても収支が合わせられるかが課題
3回転目は、シナジー効果あるホワイトナイト(買い手)が現れて、無償で受託運営出来るかが課題
アクセルは、日本スケート連盟の何らかの近畿以西の拠点となりうるかが課題
これら4つの課題をクリアしていく作戦でした。

地元の熱意を見てみると、すぐに倉敷スケート協会の前田さん、佐々木さんを中心に、存続運動が始まり、スケートを習う子供たちも含めて街頭運動などを展開し、全国的に存続運動が広がる展開をみせました。

一昨年末、地元の存続運動が本物であることを確認できた段階で、スケート連盟の皆さんが両備ホールディングスの私のところにお願いに来られ、陳情を受けることにしました。みなさん両備で買って欲しいという気持ちが顔に書いてありましたが、弊社ではシナジーもでないし、お互いにお荷物になるだけであることを説明しました。そこで存続に関わる私の作戦を説明しました。みんな、国の売却資産を借りられるか、購入先が果たしてスケートリンクを残してくれるか、スケート連盟で経営出来るのか半信半疑でしたが、全員私の案に賭けてくれました。

1回転目では、8万通以上の署名が集まって、存続運動は大いに燃えました。地元が燃えるのに伴い行政の応援が酸素になりますが、昨年には子育て重視の伊東市長が新市長となり、サンピア存続への努力を献身的に行ってくれました。

2 回転目は、一昨年から何度も機構へ折衝して、高橋大輔さんはじめ過去のスケートの実績が認められ、前例のない岡山県スケート連盟への貸与が実現しました。岡山国際スケートリンクの社長で、連盟の副会長の長谷川さんの協力で臨時開業し、昨年4月の実績で、何とかランニングコストだけなら収支が合わせられることが分かりました。また、1回目の入札には希望者がなかったため、昨年の10月からは連盟だけでなく、伊東市長も機構にお願いをしてくださって、引き続き借りることが出来ました。

3回転目は、何組かの希望者が現れたようですが、伊東市長が「ホワイトナイトは地元で」の熱い思いで、地域に声かけを広くおこなってくださり、その中に、サンピアのごく近くに加計学園の倉敷芸術科学大学がありました。ここには健康科学科もあり、スケートとのシナジー効果がもっとも得られる組織です。その加計学園が名乗りをあげてくれたのです。

アクセルは、伊東市長が日本スケート連盟・橋本会長に会い、西日本の拠点としての支援の要請をしてくださいましたし、そのフォローとして中四国や近隣のスケート連盟が声援をしてくれ、また大西副会長と藤井理事長から日本スケート連盟の常山専務理事や、伊東フィギュア部長への要請が実って、近畿以西ブロック選手育成中核拠点施設としての正式な要請が岡山県スケート連盟に打診されました。これは日本スケート連盟としては全国で初めての設置であり、思わぬ大成果で、アクセルならぬ、4回転ジャンプとなり、5コンポーネンツも満点で、見事な着地となったといえます。

3月15日15時から、旧サンピア倉敷で、加計学園・加計理事長と岡山県スケート連盟の私との覚書に、倉敷・伊東市長と日本スケート連盟・常山専務理事立会いの下に無事調印ができました。スケートリンクでは、大勢のスケート選手がお祝いのスケートを披露してくださり、その子供たちからたくさんの花束をいただいて、感激しました。

私も色々な再生シナリオを書きましたが、今回ほど思う以上の流れになったケースはありません。これらの成果は、関係されたみなさんの善意と熱意溢れた努力と協力の結晶で、奇跡としか言いようがありません。先日加計学園との打ち合わせ会談で、加計さんが学園の幹部のみなさんに、「岡山県スケート連盟に無償で貸与したのだから、連盟がやりやすいようにあまり色々言わないことにしましょう」と言われたときには、感激して涙が出そうになりました。ご恩返しは、更に素晴らしい選手を育て、実績を積み上げて、子供たちの夢を叶えること、加計学園が中京大学のような役割が出来る大学になるように協力し、倉敷市が、岡山県がスケート選手育成の西の拠点になることだと思いました。

素晴らしい感激のドラマで倉敷スケートリンクが再生したことを、大いなる喜びを持ってご報告します。

両備グループ