Message代表メッセージ

2009.04.01

平成21年入社式式辞「おもいやりがCSを磨き、おもいやりで大不況を乗り切れる」

両備グループ代表 
小嶋光信

両備グループへご入社おめでとうございます。

期待と不安の入り混じった複雑な気持ちが、社会人としての第一歩の気持ちかもしれません。

今日、皆さんを歓迎してくれているのは、グループ労使の幹部の皆さんと、社員の有志で編成された両備グループ設立100周年記念へ向けて結成された両備バンド「オルケスタ デ・ブルー スプリングス」と両備バスガイドの皆さんです。不況を吹き飛ばすアップテンポの両備グループのコマーシャルソング「街は青春」で、明るい皆さんの将来を予感していただければと思います。

皆さんが、昨年いわゆる就活(就職活動の略)で両備グループの説明会に来ていただいたときに、私は皆さんに「忠恕:おもいやり」の心が持てそうもなかったら、両備グループを希望しないほうが良いですよと厳しく申し上げました。昨年は、まだ今年のような大不況でなく、どちらかといえば皆さんにとって売り手市場で、企業は上手いことばかり言っていた時期でした。敢えてその時、皆さんに「おもいやり」の心がなければ両備グループはやめたほうが良いですよと申し上げたのは、一生皆さんがお勤めしていくときに、企業の理念やポリシーに共感が覚えられなければ、いずれその企業を去っていくことになるからです。ですから皆さんは、少なくとも「おもいやり」を持とうと集まってくださった頼もしい社員であると信じています。

石の上にも3年と言いますが、初心忘れず、色々なことがあっても3年辛抱してください。不安や失敗、時に叱られることもあるでしょうが、3年間はそれが仕事です。そこから本当の人生が見えるのです。その前に辞めてしまうと、人生はいつもリセットで、逆戻りして進歩がなくなります。

まず皆さんに「おもいやり」を発揮していただきたいことは、皆さん方をここまで育てていただいたご両親やご家族、先生方にお礼を言って欲しいということです。帰ってから、また電話でもメールでも結構ですから「今日までありがとうございました。これから社会人として頑張ってやっていきますから、安心してください」と感謝の言葉を言っていただきたいのです。両備グループでは、まず「良き社員」の前に、「良き息子」であり「良き娘」であって欲しいと思います。お世話になった両親にもお礼の言葉が言えなければ、見も知らぬお客様に「おもいやり」の気持ちなど沸くはずがありません。

元気の源は両備グループの経営理念・方針と社風

こんなに大不況でも両備グループは元気ですねと皆さんが言ってくれます。それは経営理念がしっかりしていて、目標や経営方針が明確だからかもしれません。そして誠実にコツコツ頑張る社風が光っているのかもしれません。

両備グループをこの100年近く力強く育んできて、これからも遺していかなくてはいけない企業の仕組みに「信託経営」「労使強存・共栄」と、新たに付け加えた「能力主義的安心雇用」という思想があります。

両備グループには交通運輸事業、情報関連事業、生活関連事業の3つのコアがあります。そして、それぞれの会社は、親会社、子会社の関係でなく、自主独立しています。しかもこの「信託経営」と「労使強存共栄」思想と「能力主義的安心雇用」で、ほとんどの会社が自立して黒字で経営されています。

しかしながら、信託経営が一部、時代とともに任せっぱなしの経営に変わってしまっていますので、安全管理委員会、情報管理委員会などの安全面と、両備グループ監査室や、総務、財務、人事の各委員会など経営面の横グシを企業間に入れる「グリッドシステム」を取り入れたことで、問題点が次々発見され、企業の整備が進んでいます。今後はお客様へのサービス度をもっと上げる仕組みとして「CS(顧客満足)推進室」も取り入れます。

また、「忠恕=おもいやり」の経営方針として、

 1.社会へのおもいやりとしての「社会正義」
 2.お客様へのおもいやりとしての「お客様第一」
 3.社員へのおもいやりとしての「社員の幸せ」

を掲げました。

そして、社会のために、お客様のために一生懸命働いて、皆さんが幸せになっていただきたいと、「両備ハッピーライフプロジェクト」を実行中です。社員の幸せを、自ら努力もしないで会社が幸せにしてくれることと勘違いしている社員もいますが、まず努力して会社を支えるくらいの逞しい社員になることが、結果として隆々とした会社を造ることになり、自らも幸せになるのです。実際に中国バスの再生をして、いかに労使の問題が大事か、再確認することができました。

大不況乗り切りも「おもいやり」で

この大不況で苦しいのはみんな一緒です。社員も苦しければ、会社も苦しいのです。苦しいから社員だけをリストラして済むものではありません。苦しさは分かち合って、乗り切るしかないのです。社内が明るいのは、社会にお役に立つ仕事を社員一同がしているという誇りと、おもいやりがあるからです。我々は、目先だけの仕事をしていません。和歌山電鉄や中国バスの企業再生は、今までの仕事への誇りと、社会へのおもいやりから生まれたと言っても過言ではありません。

和歌山電鉄は、南海電鉄貴志川線が廃止になるということで、市民団体の皆さんがお困りになって、何とか存続の知恵を貸して欲しいということで、岡山電気軌道と両備グループの経営ノウハウをボランティアで教えて差し上げた結果生まれました。再生もぜひ岡電で、両備グループでということで、それならお力を貸しましょうと始まったのです。

スーパー駅長たまちゃんも、和歌山電鉄の開業日に、公道に小屋を置いていたため、行政に撤去を求められ、困って私のところに頼みに来られたことがきっかけです。それで気の毒だから駅に住めるように駅長にしてあげたら、皆さんたまちゃんを大事にしてくれるだろうと思ったからです。

中国バスも、破綻の寸前に、前社長が藁をもすがる気持ちで私を訪ねてこられて、誰も助けてくれないので両備さんが最後の頼みですと言われたときには、そのご心労を思って、再生を決めました。同じ交通運輸業界で、血を吐くようなご苦労をされてる姿を見て、我々の先輩から培った経営ノウハウがお役に立てばと思ったのです。

これらの気持ちが生まれた背景は、来年両備グループが100周年を迎えることに大きく起因しています。次の100年元気に発展していくために、先ほど説明した経営理念や目標、経営方針を整備していたからです。「忠恕:おもいやり」の精神は、創業者の松田与三郎翁が戒名に刷り込んでいた、両備の守らなくてはならないダビンチコードだと思っています。和歌山電鉄もたまちゃんも、中国バスも、社業ではありませんがサンピア倉敷スケートリンクの存続も、お困りなら、何とかしてあげたいという気持ちが、忠恕の理念から湧いてきたのです。ここで何とかしてあげなくては、忠恕の精神にもとると思ったのです。

おもいやりとCS

いま両備グループは、CS=カストマー・サティスファクション=顧客満足に必死に取り組み始めました。お客様の苦情や要望、お困りのことを何とかして差し上げたいという、お客様へのおもいやりがなければ、CSは出来ません。サービス業の基本は、お客様へのおもいやりがなければ出来ないのです。両備グループの3つのコアである、交通運輸事業、情報関連事業、生活関連事業とも共通点は、労働集約産業。言い換えると人間でしか出来ない仕事で、お客様へのサービスであり、ソリューションであり、イノベーションであり、お客様のご期待へのおもいやりのお返しなのです。お困りなら、どうしてあげたらお客様が喜ばれるかを両備グループ7千人超の社員が一丸になって考えたら、日本一素晴らしい企業グループになります。おもいやりの心がCSを磨くのです。そして、お客様がそれを認めてくれたから、付加価値が生まれるのです。儲かるという字は人偏で切れば諸人、信で切れば信者で、諸人が信じてくれるから利益が生まれるのです。

猫に学ぶ人の育て方

最近教育問題が日本的な課題になっていますが、両備グループでも、両備グループは教育産業かと言われるくらい、色々な教育をやっています。両備教育センターと両備健康づくりセンターと各社の専門教育で、人間として、社会人として、専門性のある社員として教育していきます。新入社員教育から先輩が指導員として就いてくれ、仕事のみならず人生まで同じ目線で相談にのってくれます。そして、やる気のある30歳までの社員教育としてアンダー30の制度、コーポレートユニバーシティとしての両備大学である経営管理基礎講座の開講、両備大学院としての青年重役制度とこれだけの教育システムは大手でも稀でしょう。

しかし、なかなか社員の資質を大幅に変えるまでには至っていません。何故だろうと思っていたとき、「幸せな猫の育て方」という本が目に留まりました。たまちゃんが活躍しているので、面白そうと本屋で立ち読みをしていたら、目から鱗が落ちました。その本によると、猫は一年間母猫が育てると、母猫は、ある日物すごい形相で子猫たちを巣の外に追い出すのだそうです。子猫たちは母猫が恋しいので、ニャーニャー母猫にすがりつきますが、猫パンチ、猫キック、あげくは噛んで、追い払うのです。母猫に嫌われたと、子猫たちはトボトボと去って行って、お腹が空いて、お腹が空いて、どうしようもなくなって、餌を自分で取った子猫だけが生き残るのです。そして餌を取ったときに初めて親猫になるというのです。おまけにこう書いてありました。「餌を与えている家猫は一生親猫にならない」と。

餌を取ったとき、すなわち自立したとき、初めて親、すなわち大人になるのです。はっと思いました。会社でも、社員一人ひとりが今までの家庭から独立して、大事なお客様から仕事をいただいたという気持ちがなければ、甘えた社員ばかりになってしまいます。仕事で自ら苦労して、自分の給料の3倍以上稼いだという自信がなければ、いつまでも自立しない社員ばかりになってしまい、それでは会社を維持していくことは不可能です。福沢諭吉先生が、「一身独立して、一国独立する」と言われましたが、みんなが働いて、稼いで、自立した家庭を築かなければ、一国の独立もないのです。「順境は人を殺し、逆境は人を育てる」といいますが、ぜひ、逆境に強い、ハングリー精神とおもいやりの心を持った社員になってください。たまちゃんもそうしてニャーと言って、皆さんを待っています。

もう一度言います。「忠恕=おもいやり」の精神と、独立の気概を持って、力強い社員として育って下さい。そして、ご両親や先生方に心からお礼を言ってください。これが両備グループ入社の第一歩です。

素晴らしい皆さんの人生を一緒に築いていきましょう。心から歓迎の言葉を申し上げ、式辞といたします。ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

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