エコ公共交通大国おかやま構想の反響と対応について

両備グループ
代表 小嶋光信

「エコ公共交通大国おかやま」構想を発表し、多くの方々から激励やご声援をいただいた。特に有力な有識者の方々から、「20年もこの種の公共交通の変革の話があったが、具体的な話が一つも無くガッカリしていた。これは具体性があり、頑張って欲しい。」という声が圧倒的に多かったのには感激した。

当然ご批判もあったが、想定したよりはかなり少なく、意図的な批判が少しだけだったのには力づけられた。その少数の批判とは、「両備ばかりが上手いことになるのか」という、実態をあまりご理解されてないための発言がひとつだけだった。

現行の補助金は、事業会社の経営に直接投入され資産になるか負債の穴埋めになるものだが、今回のスキームは新しい公有民営化であって、投下された資金は「公共投資」であり、その資産は行政、すなわち市民の物だ。

従って、今回電車、バスで10年間累計で300億円の公共投資は、資産的には行政財産であり、事業会社の懐に入るものではない。

またその公共投資を無償に近い形で使って利益を得るのではという意見は、運賃許可の仕組みを知られないご発言で、自分の資産でないから費用は発生しないので、運賃に転化されず、全て市民に安い運賃として返されるということになるのだ。従って、「隣に蔵は立たない」と、はっきりと申し上げておきたい。

ただ、公共交通の70~80%の企業が赤字なので、もともとほとんど減価償却費がたっていない償却済みの電車やバスのケースが多く、運賃が安くはならないかもしれないがその分、古くて、バリアフリーでなく、環境にも優しいとはいえない現状のバスや電車が、あらゆる面で快適になり、そのサービスは利用者である市民に全て還元されることになる。

もちろん、運行会社は基本的に経営責任を持っており、今の補助金に頼る経営に対して、収入を増やし、コストを下げる本来の経営努力がいるようになる。

このように公有民営は、「官の責任」と「民の責任」を分割して、それぞれが責任ある経営や運営をすることができるスキームだ。これは、津エアポートラインの新設や和歌山電鐵の再生で証明してある。

簡単に言えば、公共インフラの道路は、税金で作られているが、それを走るバスは、道路を原価に入れず、利用を通じて市民に還元されていることの延長線上の事柄だ。 公共交通事業を長年続けてきた、プロとしての経験から申し上げさせていただくと、もうこのスキームを使ってしか、地域公共交通が再生し、そして次世代に通用するエコで、バリアフリーで、情報システム化され、ネットワーク化された交通手段として変革する方法はない。それどころかこのままでは、ジリ貧になって、一部の儲かる路線しか残らないことになる。気がついたときには、人生で二度必ず利用する交通弱者の時代、即ち子供たちやお年寄りに移動する足がなかったということになる。

後は、財源だが、交通基本法と財源のセットが、現実味を持ってきているので、エコ公共交通大国の実証を岡山でする絶好のチャンスだ。半信半疑だろうが、地方の一企業が、一経営者が、全国的な法改正を伴う制度改革を進める大きな一助になって、知恵を使い、汗をかき、リスクを負ってやってきたのは、創立100年の歴史を積み上げさせていただいた、社会やお客様への恩返しであり、孫子の代に間違いのない公共交通を残してあげたいからだ。

自社の経営努力で解決出来ないところまで、日本の地域公共交通は病んでいるのだ。

いにしえに、岡崎会頭や福武總一郎さん等、岡山商工会議所の皆さんから提案された1キロメータースクエア構想を、現実的に実行する努力を10年間もしてきたが、今度の交通基本法と財源の確保が見えてきて、やっと時がきた。

財源確保には、後ろ向き投資だけでなく、将来の日本を世界に誇れるスキームに作らねばならないし、何ゆえ財源が国全体で1年間に2000億円以上必要かの説明力がいる。また、それの実証実験がいる。そのために10年間で300億円の「エコ公共交通大国おかやま」構想を示した。腰ダメの数字だが、岡山の経済規模が全国の1.5%弱だから、1年間で2000億円以上の国家プロジェクトになるだろう。

出来るかどうかは、市民の熱意と、勇気ある行政と議会、そして運行する我々交通事業者の努力が結実するかだ。 300億円全てやるか、岡山構内乗り入れと岡山駅―市役所―大学病院―清輝橋の延伸で60億円程度の投資で抑えて、残りは将来課題にするか、いずれにせよこの機が、岡山市の都市交通の活性化の最後のチャンスだ。

やるなら中途半端にやらずに、思い切った施策を一番乗りで進めることが、地域の誇りとなり、財産になる。

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