SAI BUS(サイバス)登場!

両備ホールディングス 社長 
小嶋光信

お陰様でこの7月31日で両備グループは100周年を迎えます。約50社、7000人を超える企業グループになれたのも、母なる西大寺鐵道から両備バスへと続く公共交通のお陰です。

ところが、今地方では、電車、バスという公共交通の存続が極めて危ない状況になっています。人生の交通弱者であった18歳未満と、運転が出来なくなった高齢化時代に、必ず人生の入りと出で2回ご厄介になる交通手段です。しかし、規制緩和と三位一体の行財政改革の失策で、地方では公共交通の倒産や路線廃止が相次ぎ、マイカー社会に飲み込まれようとしています。

この窮地に、両備グループは、地域へのご恩返しとして、何とか地方に公共交通を残して、これから続く世代に安心して暮らせる地方にするために頑張っています。

そのために、和歌山電鐵と中国バスの再生を行い、公有民営法の成立や補助金制度に経営のインセンティブを入れる改善の一助になりました。

しかし、マイカー社会で事業基盤を失った地方の公共交通は、他の先進諸国のように交通権を認めて、公設民営などに切り替えて、根本的解決を図らなければなりません。そのための交通基本法の成立に努力するとともに、財源の確保の論拠としてエコ公共交通大国おかやま構想を発表しました。騙し騙し公共交通の延命を図るのでしたら数百億円で済むでしょうが、将来のエコやバリアフリーやシステム化された世界に誇れる公共交通大国に切り替えるには、どうしても2千億円程度を10年間くらいの国家プロジェクトで行うことが大事なのです。幸い、暫定税率2兆5千億円を環境税化するときに約1割程度を割けば、環境や高齢社会に役立つばかりでなく、その公共交通システムが輸出産業になって、世界の環境や高齢化に役立つのです。

もう一つ公共交通の存続に大事なことは、将来の見込み客子供たちに夢を与える車両にすることです。電車では、岡山電気軌道のMOMO(モモ)、和歌山電鐵のいちご電車、おもちゃ電車、たま電車と、子供たちのみならず大人の乗客の皆さんにも夢を感じていただけました。

しかし、路線バスはなかなか様になりません。 それで、100周年記念として、西大寺鐵道の気動車を現代に再現したバスと、21世紀の未来型のバスの作製を企画しました。 西大寺鉄道は、自転車や荷物も載せられて、大変便利で、皆さんの生活に直結した乗り物でした。西大寺鐵道の気動車のように自転車を載せるデッキをバスにつけると最初に私が提案したときには、上手く出来るかと現場は半信半疑で、中古のバスの改装でしたいと回答がありました。却って中古の方が、新車の買えない地方バス会社らしいし、古いバスでも生き返る証拠になるので、オーケーを出しました。未来型バスは勿論新車です。

弊社デザイン顧問の水戸岡先生なら、きっとこのアイデアを素晴らしいデザインで纏めてくれると信じていましたが、思った以上の素晴らしいバスになりました。これだけのバスが出来たのも中国運輸局とその岡山運輸支局の皆さんの、バスの夢を作らせてみようというご好意のお陰だと感謝しています。

名前は「SAI BUS(サイバス)」としました。これは西大寺鐵道サイ西大寺観音院の犀(さい)をかけたものです。 西大寺は、元は犀戴寺(さいだいじ)と言ったそうです。西暦777年、安隆上人(あんりゅうしょうにん)が大和の長谷寺で修行三昧されていたとき、“備前金岡庄の観音堂を修築せよ”と夢にお告げがあり、上人は直ちに西国に下向し藤原皆足姫の擁護のもとに海路を船で急ぎ金岡の庄に向かいました。その途中、児島の槌戸ノ浦にさしかかった時、犀角を持った仙人(龍神)が現れて、「この角を持って観音大師影向の聖地に御堂を移し給え」と霊告されました。感涙した上人は、犀角を鎮めた聖地に堂宇を建立し、法地開山されたのが起源で、このとき寺号を犀戴寺としました。後年に後鳥羽上皇の祈願文を賜り西大寺と改称したそうです。

SAI BUS(サイバス)は、可愛い犀がマスコットキャラクターです。実は、故松田基会長が、生前西大寺の住職に提案したことから、西大寺には沢山の犀の置物がコレクションされています。

さて、お披露目に共生保育園の園児の皆さんをお招きして、子供たちの反応をチェックしてみたところ、園児たちはキラキラした目で歓声をあげて乗り込んでくれました。そして、バスの中で先生たちと楽しそうに歌を歌ってくれました。子供たちの夢のバスが出来ました!

このSAI BUS(サイバス)を岡山駅から西宝伝まで犬島の渡船につなぐ路線バスとして瀬戸内国際芸術祭に花を添えることにしています。

両備ホールディングス