両備グループ
代表 小嶋光信
11月24日に西日本旅客鉄道㈱(以下JR西日本)執行役員岡山支社長の長谷川一明さんと両備グループとして、公共交通の発展のための相互協力の覚書の締結を行ないました。
覚え書き締結の趣旨は、岡山駅を中心とした公共交通について、現代の喫緊の課題である高齢化社会への対応と地球環境問題への適合を重視する観点から、利用者にとってより利便性の高い公共交通ネットワークを構築するために相互に協力しようということです。
- 公共交通の必要性、重要性について、利用者をはじめとする関係者の理解、支援を深めるために連携して取り組むこと。
- 岡山駅を中心とした各々の交通事業の活性化に努めるとともに、様々な方策によって一層の利便性の向上を図ること。
- 「環境」と「高齢化」に対応し、21世紀に誇れる岡山市内の公共交通を目指すとする基本的な認識について共有すること。
具体的に何をということではありませんが、地域公共交通の一端を担わせていただいている地域企業と、幹線を扱うJR西日本との緊密な連係、協力は本来不可欠なものです。
国鉄時代は、旧両備運輸(現両備ホールディングス)の岡山-小豆島航路が国鉄との連絡運輸になっていて、それなりの連係が取られてしまいました。
しかし、国鉄が民営化され、分割されてJR西日本が誕生した時点で、この連絡運輸の協力関係が薄れてしまいました。国鉄時代は、大手私鉄は別として、地域の私鉄、バスは国鉄の地域局とそれなりの連係を意識して、協力関係がありましたが、現在は現場でダイヤ編成などでの関わりがある程度になり、トップ同士が問題を共有して地域の公共交通発展のために緊密に関わっているかというと、これもまた真空に近く希薄になってしまいました。
時あたかも、高齢化社会の進展と、環境社会の構築に公共交通への必要性が高まってきましたが、皮肉にも地方ではマイカー社会の進展と、規制緩和による退出自由と、三位一体改革による地方財源の枯渇で、地方私鉄、バスは倒産、再生、縮小、廃止の嵐にさらされて、現在も70%以上の地域公共交通の私鉄、バスが赤字経営、路線も70%が赤字路線で、10年もすると地方では現状の30%程度しか路線が残らないと思われるピンチに立たされたのです。
何と、先進諸国の中で民間に公共交通を任せきったのは日本だけと知っている国民も行政も業者もほんの少数です。その理由は簡単で、社会人の多くの移動手段はマイカーに移り、既にピークの60%のお客様を失うが、装置産業でコストがあまり下がらないので、ビジネスモデルとして成立しなくなってしまったからです。日本は、その徐々に転移していく行く末を問題解決せずに、補助金と赤字路線の廃止などで逃げてきたのです。そして、この公共交通をどうするかという議論のほとんどは、交通強者が集まって考えているのです。その中でプロ集団である公共交通の業者が窮状を訴えると、経営努力不足、私企業の利益誘導に見られてしまう懸念があるのです。そのため地域公共交通の実情がしっかり検証されないまま、規制緩和による補助金政策の転換が行なわれ、退出自由と地域の財源不足で窮地に陥ったのです。地域では通勤、通学の10%以下、雨の日の傘代わりに公共交通がなってしまいました。
この現状を何とか知っていただこうと、津エアポートラインや和歌山電鐵、中国バスの再生で、いささかでも地域の公共交通の実情がご理解いただけたのではと思っています。
それぞれの公共交通事業者が、生き残りをかけて不採算路線をどんどんカットせざるを得ない現状ですが、実は交通は本来ネットワークなのです。如何にスムースに地域や国内を移動できるようにするかということが利用者利便の向上になるのです。しかしながら、現状、地域はバラバラになってしまいました。公共交通で全国の地域が繋がらなくなっているのです。身体でいえば、血管が無くなって、血が巡らなくなっている状態です。これらの地域はどうなるかは、火を見るより明らかです。
唯一ICカード化がネットワークを取り戻すツールとして登場し、これらの活用も含めてチャンスがやってきました。
また、来年中には交通基本法が出来るかもしれないという大事なときになりました。このときこそ公共交通事業者が手を携えて小手先の延命の解決ではなく、しっかり問題点を把握した抜本的解決を図る最後のチャンスです。そしてエコ公共交通大国のように将来、地域の公共交通を世界一にするという明確な国家の意志と、財源確保がいると思います。