平成23年入社式式辞 「人の痛みが分かる思いやりのある人財になろう!」

両備グループ
代表 
小嶋光信

皆さん御入社おめでとうございます。心から歓迎申し上げます。 3月11日の東北関東大震災で多くの方々が災害で亡くなられ、また罹災されました。ホームページにも言葉を失うほどの大惨事とお見舞い文を載せたのですが、本当に言葉が出ないほどの惨状で、心から哀悼の意を表したいと思います。また大地震の二次災害で起こった福島第一原発の事故は、長期間日本国中に重い不安を撒き散らすと憂慮しています。

私は、大震災の当日、東京の八重洲のビルの3階にいて、ちょうど講演を終えたところでした。するとグラグラときたのです。私は東京育ちで地震に慣れていますが、今回の地震だけはいつ揺れが収まるかと思うほど、長い長い地震でした。これは大変と震源地を調べると宮城県沖と言うので、これは大災害だと思いました。そこで危機管理として早く岡山に帰ろうと、待たせていたハロー・ト-キョ-のタクシーに乗りました。しかし、すぐに電車や高速道路はストップし、道路は人と車で溢れて、到底空港まで行ける状態でないと判断し、翌日朝の新幹線で帰ってきました。不安が的中し、信じがたい大震災でした。

被災地でも、皆さんと同じように新社会人として希望を燃やしていた若者が多くいらっしゃったと思います。その矢先に起こった災害で、その方々の痛みを是非忘れないようにしていただきたいと思います。

皆さんは、大変厳しい就活(就職活動の略)戦線を勝ち抜いてきて、やっと手に入れた人生の切符だと思います。この人生の切符を大事にしてください。

3つの約束

先日ある会合で岡山県の幹部の方が「両備グループは退職率が低くて素晴らしい」と誉めてくださいました。退職率が低い理由の一つに、皆さんがこの入社式で私との「3つの約束」を守ってくださっているからだと思います。

第1の約束は思いやりをもつということです。

皆さんが、両備グループの会社説明会に来ていただいたときに、私は皆さんに「忠恕:真心からの思いやり」の心が持てそうもなかったら、両備グループを希望しないほうが良いですよとはっきり申し上げました。両備グループは、売り手市場であれ買い手市場であれ、採用への方針はブレません。一生皆さんがお勤めしていくときに、企業の理念やポリシーに共感が覚えられなければ、いずれ去っていくことになり、お互いが不幸になるからです。ですから、皆さんは、少なくとも思いやりを持とうと集まってくださった頼もしい社員であると信じています。

第2の約束は3年の我慢です。

桃栗三年柿八年と言いますし、また、石の上にも3年と言うように、初心忘れず、色々なことがあっても3年辛抱してください。

一般的に入社後2~3年間で30~40%も離職するという原因は、

  1. 些細なことで叱られた。
  2. 思ったような仕事でなく、やる気を失った。
  3. 上司や同僚と良い人間関係が結べない。

ということのようです。 不安もあるし、失敗して叱られることもあるでしょうが、3年は叱られることが仕事だと思ってください。五日市剛さんという詩人が、「失敗と書いて経験と読む」と言っていますが、まさにその通りです。失敗して叱られたら「有難うございました」と言えるたくましさを持ってください。そこから本当の仕事が見えるのです。その前に辞めてしまうと、人生はいつもリセットで、いつも逆戻りで進歩がなくなります。

先日、3年経った社員の皆さんと話をしていたら、「社長が3年間我慢しなさいというので我慢して山を越えたら、仕事が楽しくなった」と言ってくれました。継続は力なりとしっかり覚えておいてください。

仕事は単純なことから学び、最初は思ったような仕事でないかもしれませんが、基本は仕事の土台で、単純な基本の仕事をシッカリ身につけていただかないと応用は利きません。

職場の人間関係を築くためには、まず挨拶ですが、この挨拶という字に答えが込められています。挨拶とは、心を開くという意味で、まず自分から心を開いて飛び込まねば、挨拶になりません。

心構えさえシッカリしていたら、仕事は楽しいものです。 両備グループの場合は、皆さん方のお兄さん的な先輩がこの一年間指導員として付いてくれます。皆さんの仕事や環境が変わったことによる悩みなどを親身に聞いてくれます。何でも隠し事をせずに相談してください。必ず皆さんに正しい方向と対処の仕方を教えてくれるでしょう。

第3の約束はご両親、家族や先生方への感謝です。

皆さんにまず思いやりを発揮していただきたいことは、皆さんをここまで育てていただいたご両親やご家族、先生方にお礼を言って欲しいということです。帰ってから、また電話でもメールでも結構ですから「今日までありがとうございました。これから社会人として頑張ってやっていきますから、安心してください」と感謝の言葉を言っていただきたいのです。両備グループでは、まず「良き社員」の前に、「良き息子」であり「良き娘」であって欲しいと思います。お世話になった両親にもお礼の言葉が言えなければ、見も知らぬお客様に思いやりの気持ちなど沸くはずがありません。

ネクスト100年勝ち残りのコツ
忠恕と知行合一

昨年7月31日で両備グループは100周年を迎えました。「感謝の100年、思いやりでネクスト100年」のスローガンのもとに、皆さんはネクスト100年の元年に入社されたのです。

過去の10年はこれからの2~3年に匹敵するような変化の早い時代です。この次の100年をキッチリ勝ち残っていくコツは、先ほど申し上げた創業の経営理念である「忠恕=真心からの思いやり」です。我々が100年培ってきた「忠恕=真心からの思いやり」を、最近震災で自粛されているテレビコマーシャルの穴埋めをしているACジャパンという民間の広告ネットワークが流してくれています。

今回の大震災で如何に思いやりが大事か国民は勉強しました。自分さえ良ければという人が多くなってきていましたが、社会はお互いに思いやる、人という字のごとくお互いに支え合って初めて活きているのです。

両備グループは、損得だけを中心に仕事を考えるのではなく、まず社会やお客様や社員への思いやりで考えるようにみんな努力しています。勿論、企業ですから儲けなくてはなりませんが、まず利益の前に社会やお客様への思いやりが大事なのです。儲かるという字は人偏で切れば諸人、信で切れば信者で、諸人が信じてくれるから利益が生まれるのです。

まずお客様からの信頼、信用が利益の源なのです。
行動規範は、「知行(ちこう)合一(ごういつ)」です。良いと思うことは必ず実行しようという陽明学の大事な言葉です。これから社会で多くの事柄を学んでも、実行しなければ、学ばぬことよりもっと悪いと言うことです。

この理念と行動規範が、和歌山電鐵や中国バスの再生や、岡山高島屋の地域支援となって、この企業姿勢が社会に高く評価されるようになりました。忠恕と知行合一という考えがなかったら、これらの労多くして効少ない事業で社会貢献する事もなかったでしょうし、和歌山電鉄のたま駅長も生まれなかったでしょう。

今日、皆さんを歓迎してくれているのは、グループ労使の幹部の皆さんと、100周年記念として社員の有志で編成された両備バンド「オルケスタ デ ブルースプリングス」と両備バスガイドの皆さんです。『秘密のケンミンSHOW』で岡山県を代表されるコマソンに選ばれたこのアップテンポの両備グループのコマーシャルソング『街は青春』は、約30年前にバス事業からこれからは地域づくり、まちづくりだという願いを込めて作ったコマソンです。

お陰様でこのコマーシャルソングのように、両備グループは運輸交通観光のコア、情報のコア、生活関連のコアと3つの事業コアを有する50社8千人を超える企業グループに成長しました。この大不況にも拘わらず、両備グループの話題は歌詞のように花盛りです。

経営テーマ
安全、安心、エコで健康

事業の再編成と活性化は、「安全、安心、エコで健康」という経営テーマに沿って行われています。両備グループは、この理念、方針とテーマに沿って社会や地域の問題解決を図る提案型企業として成長していっているのです。

また課題であった岡山のシンボル京山も、世界で最先端の集光型太陽光発電の研究施設となり、併せて両備ホールディングスとソレックスとでこの発電を使った野菜の栽培技術の研究をして、地域発展と子供たちの夢づくりに頑張っています。この植物工場のノウハウは、きっと21世紀の食糧問題や、このたびの放射能汚染などでの安全安心な野菜の確保に答えを出してくれると期待しています。

21世紀バス「SOLARVE(ソラビ)」や自転車も乗せることができる「SAIBUS(サイバス)」の開発など、両備だからできる新しい提案を、それぞれの事業で積極的に進めています。

“街は青春花盛り”と、花が咲いただけでなく、次代の実を付け始めています。 実は、この社会ニーズへの解決力と開発力が両備グループを光らせるソースなのです。独創的アイデアが信条なのです。グループコラボレーションを進める一つのツールが、両備グループと岡山高島屋で共同開発した「たまルンポイントカード」です。まさに今日からサービスを開始しました。開発したシステムズの幹部が、貯まったポイントを大震災の義援金に振り向けられるソフトを考えてくれました。両備グループの忠恕らしい素晴らしいアイデアです。

真似をせず、スピーディにことを進め、交通運輸観光部門、情報部門、生活関連部門の3つの部門を有機的にコラボレーションさせることが両備グループの強みで、より進化を続けていきます。

両備グループの伝統
信託経営と労使強存共栄思想

両備グループの伝統でもあり個性でもある信託経営や、労使強存共栄の思想と、新しく構築してきた能力主義的安心雇用とグループの各種委員会や監査本部などの経営システムの整備で着々と大手に負けない企業体質を作り上げていっています。

信託経営の意味は、両備グループの各企業は社会から信託を受けてお預かりしたもので、決して労使共に私物化してはいけませんという意味と、社長、会長は経営責任に専念し、経営の執行は執行責任者である副社長、専務、常務に信託するという2つの意味合いがあります。皆さん方の仕事上のトップは、今日ここに皆さん方を迎えてくれている幹部の皆さんです。両備グループは人材豊富ですねと良く言われますが、約40年来培われてきた経営責任と執行責任を分けて任せる経営が人材を育てたのです。そしてそれぞれの責任を分けていたことで、オイルショックにはじまって、円高ショックやバブル、リーマンショックなどの経済の激変を乗り切ることが出来たのです。

また、両備グループの現場では、親会社、子会社の関係はありません。皆、対等な会社同士です。資本関係は形式的なもので、大きい小さい、古い新しいではなく、業績良く良い経営をしている会社が良い会社、業績不振や赤字で経営になっていない会社が悪い会社ということです。

両備グループの伝統である労使強存共栄思想は、労使対等のもとに、お互いに強く存在し、労使共に栄えると言う考えです。お互いに強くと言うことは、経営も労働組合も、社会とお客様と社員への思いやりを共有して、それらがより良くなるように考えて、対等の立場で行動すると言うことです。労使が交渉をするのは、その結果の付加価値や利益の分配です。利益が上らずに、賃金や労働条件を求めれば潰れるだけです。労使どちらかが強すぎてもいけないのです。例えば、今再生している中国バスは、最盛期には3千人もの社員がいましたが、労使不仲で、ストライキばかりして、結局会社を潰してしまって、退職金も満足にもらえませんでした。今は両備型の労使関係で、安全やサービスと生産性が飛躍的に向上しています。

最近10数年来の人事方針が、能力主義的安心雇用です。年齢でなく能力を中心に処遇や退職年齢を考えるという過去の「年功序列型」の決別と、「能力序列型」への転換です。お互いの能力と報酬の違いを認め合って、安心して雇用される企業づくりに挑んでいます。

これらの伝統の上に、誠実にコツコツ頑張る社風が困難な状況でもしっかりした業績をあげています。 如何なる状況でも社内が明るいのは、社会にお役に立つ仕事を社員一同がしているという誇りと、思いやりがあるからです。我々は目先だけの仕事をしているのではありません。

3つの事業コアは
人間でしか出来ない仕事

両備グループの3つのコア、交通運輸観光部門、情報部門、生活関連部門とも共通点は、労働集約産業、言い換えると人間でしか出来ない仕事ということです。お客様へのサービスであり、ソリューションであり、イノベーションであり、ご期待への思いやりのお返しなのです。お困りなら、どうしてあげたらお客様が喜ばれるかを両備グループ8千人超の社員が一丸になって考えたら、日本一素晴らしい企業グループになります。思いやりの心がCSを磨くのです。そしてお客様がそれを認めてくれたから付加価値が生まれるのです。

企業即教育体

両備グループは教育産業かといわれるくらい、色々な教育をやっています。両備教育センターと両備健康づくりセンターと各社の専門教育で、人間として、社会人として、専門性のある社員として教育していきます。新入社員教育から先輩が指導員として就いてくれ、仕事のみならず人生まで同じ目線で相談にのってくれます。そして、やる気のある30歳までの社員教育のアンダー30、コーポレートユニバーシティとしての両備大学である経営管理基礎講座、両備大学院としての青年重役制度とこれだけの教育システムは大手でも稀でしょう。100周年を記念して、地域の人材育成に両備大学を一部無料開放しています。

思いやりとプラス思考で、人の痛みが分かる人財として育っていけば、素晴らしい皆さんの人生と幸せを保証してくれるはずです。是非一緒にネクスト100年を頑張りましょう。

両備グループ