岡山電気軌道 社長
小嶋光信
9年ぶりにMOMO2(モモツー)が岡山電気軌道に登場しましたが、初代のMOMO(モモ)は、「瓢箪からモモ」で偶然の一言から生まれました。
10数年前から、これからの環境化や高齢化する都市社会の次世代のツールとして、市民団体のRACDA(現、NPO法人公共の交通RACDA)などが中心になって路面電車普及キャンペーンを張っていました。そのパネルディスカッションの中で、ある参加者が、「両備はケチなんだから、タダでLRVのデザインしてあげてください」と冗談とも本音とも思える爆弾発言をされて、パネラーとして参加していたデザイナーの水戸岡さんが、岡山電気軌道のために本当にタダで初代MOMO(モモ)のデザインをしてくれたのです。
私たち岡電もその心意気に惚れ込んで、清水の舞台から飛び降りて、次世代路面電車の導入を決意しました。
水戸岡さんは、三案のデザインをしてくれて、その中から現在走っているデザインを選んで製作することになったのですが、製作を依頼していた新潟鉄工所が途中でつぶれるなど、幾多の困難を乗り越えてのデビューとなりました。
MOMO(モモ)のお披露目の後に水戸岡さんに、「両備さんはケチと聞きましたが、ペンキ一缶あれば街づくりが出来るのです。一緒にやりませんか」と言われました。ちょうど「公共交通利用で歩いて楽しいまちづくり」を提唱して頑張っていたところでしたので、「一缶でなく、二缶位買えますよ」と言ったところ、RACDAのみなさんと社員たちがこの東山の物置と信号を灰色とオレンジ色の2色で塗って、見違えるようになりました。
そして、水戸岡さんの好意に報いるために、両備グループデザイン顧問になっていただいて、ご一緒に街づくりを始めました。
MOMO(モモ)は、お陰様で全国でも大変な人気となり、第一回の日本鉄道賞をいただくなど、いっぺんに岡山電気軌道と両備グループがこの世界では有名になりました。その後、万葉線や富山ライトレールなどのLRVに同種の車両が採用され、今回MOMO2(モモツー)の導入により、全国に20編成40車両となりました。
また、RACDAなどが岡山電気軌道や両備グループの公共交通の取り組みを全国に紹介されたことから、各地から「電車の再建をするのにどうしたらよいか?」とか「新しくLRTを引きたいが協力して欲しい」とか色々な相談が持ち込まれるようになりました。
そして最初のヨーロッパ型の公設民営の実験は、鉄道ではなく海上アクセスで困っていた三重県津市からの依頼でした。この公設民営の手法と、三セクにせずに経営責任を明確にするために単独出資の運航会社にするというスキームに、お客様中心の運営委員会を加えて、和歌山電鉄貴志川線の再生をして、鉄道で公有民営法ができ、中国バスで補助金政策にインセンティブが法制化されました。
現在我々の努力の一端も含め、民主・自民・公明党の三党合意で、この臨時国会で交通基本法の成立に向けて進んでいます。
実は、この東山の車庫が一つの大きなエポックメーキングだったのです。
今回のMOMO2(モモツー)は、継続性の観点から同じデザイン、同じカラーですが、内装が白を基調の1車輛と焦げ茶を基調の1車輛の1編成です。電車内でパーティーが気楽に出来るように着脱式のテーブルがあり、お年を召したお客様が木の椅子ではお尻が痛いと言われたので、持ち運びできるクッションも装備しています。
また、デジタルサイネージで、岡山県内の行政や、美術館、博物館から依頼のお知らせを無料で流してあげて、MOMO2(モモツー)で岡山の情報をしっかり共有していただきたいと思います。日本の路面電車では初導入となる、WiFi(ワイファイ)の無線LANとお試し用のギャラクシータブ2個で、情報を調べることもできる移動空間です。
乗って楽しむ移動空間から、情報とふれあいの移動空間に進化したMOMO2(モモツー)を是非お楽しみください。