平成24年入社式式辞「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」とプラス思考で次代を切り拓く逞しい人財へ

両備グループ代表:CEO
小嶋光信

皆さん両備グループにご入社おめでとうございます。
ようこそと心から歓迎申し上げます。

式に先立って、昨年3月11日に発生した東日本大震災と、それによる福島第一原発事故で言語に絶する困難辛苦に遭われた皆様に心からの哀悼と、早急な復興を祈って黙とうをしていただきました。
これから数十年、日本はこの困難を背負って、逞しく活きていかなくてはなりませんが、その中で、厳しい就職戦線の中から選ばれた皆さんは、両備グループの「忠恕=真心からの思いやり」をしっかり心に刻んで、決して忘れないようにしていただきたいと思います。

先日カナダのバンクーバーに行きました。その時、車の運転などお世話をしてくださった日本人が、現在の日本の苦境を海外から見ていて、「今の日本の不振は、二十数年年前のバブルの時に苦労もせずに就職した我々が、楽しいことだけをして頑張らなかったことが原因かもしれません」と自嘲的に言われていました。人間というものは苦労して手に入れると大事にしますが、容易く手に入れると大事にしないものです。皆さんは、大変厳しい就活(就職活動の略)戦線を勝ち抜いてきて、やっと手に入れた人生の切符だと思います。この人生の切符を大事にしてください。

両備グループは、全国でも新入社員の「退職率が低くて素晴らしい」と誉めていただいています。以前は両備グループでも新入社員の退職率が高く困っていたので、皆さんにこの入社式で私との三つの約束を守ってくださいと言うようにしたら、退職者が減り、全国でも誇れる定着率になったようです。

第一の約束は思いやりを持つということです。

私はみなさんに「忠恕=真心からの思いやり」の心が持てそうもなかったら、両備グループを希望しない方が良いですよとはっきり申し上げています。
忠恕という理念は、私が十数年前両備グループの代表になった時に、あまりに企業理念が幹部、社員に浸透していないので、何とか一言で言い表せる言葉はないかと考えあぐんでいた時に、頭に閃いた二文字でした。この言葉を調べてみると、両備グループの創立者である松田与三郎翁の戒名の一部でした。その戒名は、お坊さんでなく自ら思いを込めて創られたもので、「天海院忠恕一貫居士」と言います。平たく読めば、「空よりも高く、海よりも深く真心からの思いやりを一生貫いた男」です。まさに両備グループの理念をダビンチコードのように刷り込んであったのです。

実は、両備グループが100年以上こうやって成長できたのも、忠恕の心で、社員を逞しく育てて、決して安易に解雇したり、リストラしなかったからです。実は、人材が余った時、他社はリストラをされますが、両備グループでは100年以上余剰人材の適材適所の活用を図ってきたから大きくなったのです。

両備グループが交通運輸と観光のコア、情報関連のコア、生活関連のコア、と3つの事業コアを有する52社約8000人を超える企業グループに成長したのは、まさに忠恕の発揮だったのです。

思いやりでこの厳しい時代を乗り越えられるか、と言われる方もいますが、お陰様でこの大不況にも拘わらず、両備グループの業績と話題は、コマーシャルソング『街は青春』の歌詞のように花盛りです。それは、安心して働ける職場で、長期的な教育を受け、逞しく育った人財である社員がしっかり頑張っているからです。いつ首になるか分からない企業に、誰も一生を託せません。

社員への思いやりとして両備グループは、売り手市場であれ買い手市場であれ、採用への方針はブレません。皆さんがお勤めして、企業の理念やポリシーに共感が覚えられなければ、いずれ去っていくことになり、お互いが不幸になるからです。ですから、皆さんは、少なくとも思いやりを持とうと集まってくださった頼もしい社員であると信じています。

第二の約束は3年の我慢です。

桃栗三年柿八年と言いますし、また、石の上にも三年と言うように、初心忘れず、色々なことがあっても3年辛抱してください。
一般的に入社後2~3年間で30~40%も離職するという原因は、

  1. 些細なことで叱られた。
  2. 思ったような仕事でなく、やる気を失った。
  3. 上司や同僚と良い人間関係が結べない。

ということのようです。

不安もあるし、失敗して叱られることもあるでしょうが、3年は叱られることが仕事だと思ってください。五日市剛さんという詩人が、「失敗と書いて経験と読む」と言っていますが、まさにそのとおりです。失敗して叱られたら「有難うございました」と言える逞しさを持ってください。そこから本当の仕事が見えるのです。その前に辞めてしまうと、人生はいつもリセット、逆戻りで進歩がなくなります。

先日、3年を経過したガイドや社員の皆さんと話をしていたら、3年間我慢しなさいというので我慢して、山を越えたら、仕事が楽しくなったと言ってくれました。継続は力なりとしっかり覚えておいてください。

仕事は単純なことから学びますが、基本は仕事の土台で、単純な基本の仕事をシッカリ身につけていただかなくてはなりません。
職場の人間関係を築くためには、まず挨拶ですが、この挨拶という字に答えが込められています。挨拶とは、心を開くという意味で、まず自分から心を開いて飛び込まねば、挨拶になりません。

心構えさえシッカリしていたら、仕事は楽しいものです。
両備グループの場合は、皆さん方のお兄さん的な先輩が指導員としてこの1年間の指導のために付いてくれます。皆さんの仕事や環境が変わって悩むこともあるでしょうが、それを親身に聞いてくれます。何でも隠し事をせずに相談してください。必ず皆さんに正しい方向と対処の仕方を教えてくれるでしょう。

第三の約束はご両親、ご家族や先生方への感謝です。

皆さんにまず思いやりを発揮していただきたいことは、皆さんをここまで育てていただいたご両親やご家族、先生方にお礼を言って欲しいということです。帰ってから、電話でもメールでも結構ですから「今日までありがとうございました。これから社会人として頑張ってやっていきますから、安心してください」と感謝の言葉を言っていただきたいのです。両備グループでは、まず「良き社員」の前に、「良き息子」であり「良き娘」であって欲しいと思います。お世話になった両親にもお礼の言葉が言えなければ、見も知らぬお客様に思いやりの気持ちなど沸くはずがありません。

両備グループは、損得だけを中心に仕事を考えるのではなく、まず社会やお客様や社員への思いやりで考えるようにみんな努力しています。もちろん、企業ですから儲けなくてはなりませんが、まず利益のまえに社会やお客様への思いやりが大事なのです。儲かるという字は人偏で切れば諸人、信で切れば信者で、諸人が信じてくれるから利益が生まれるのです。まずお客様からの信頼、信用が利益の源なのです。

行動規範は「知行合一」です。良いと思うことは必ず実行しようという陽明学の大事な言葉です。これから社会で多くの事柄を学んでも、実際に実行しなければ、学ばぬことよりもっと悪いと言うことです。

この理念と行動規範が、和歌山電鉄や中国バスの再生や、両備システムズの東海コミュニケーションズとのIDCの提携などになって、企業姿勢として社会に高く評価されるようになりました。「忠恕」と「知行合一」という考えがなかったら、公共交通の再生のように労多くして功少ない事業で社会貢献する事もなかったでしょうし、和歌山電鉄のたま駅長も生まれなかったでしょう。

事業の再編成と活性化は、「安全・安心・エコで健康」という経営テーマに沿って行なわれています。
両備グループは、この理念、方針とテーマに沿って社会や地域の問題解決を図る提案型企業として成長していっているのです。
街は青春花盛りと、花が咲いただけでなく、次代の実を付けはじめています。

実は、この社会ニーズへの解決力と開発力が両備グループを光らせるソースなのです。独創的なアイデアが信条なのです。
両備グループの伝統でもあり個性でもある「信託経営」や、「労使強存共栄」の思想と、新しく構築してきた「能力主義的安心雇用」でグループの各種委員会やグループ監査本部などの経営システムの整備により着々と大手に負けない企業体質を作り上げていっています。そして誠実にコツコツ頑張る社風が困難な状況でもしっかりした業績をあげられていると思います。

藤井正隆さんという法政大学大学院中小企業研究所特任研究員の「ウサギとカメの経営法則」という著書で、日本を元気にしてくれる18の会社に両備ホ-ルディングスが選ばれましたが、その題がふるっています。「思い切って任せるとネコも働く」と評して両備グループの信託経営が紹介されました。
今日ここに皆さんを祝って集まっていただいている各社、各カンパニーのCOOの皆さんに、経営の執行を全面的に任せて、全社独立採算で自立しているから、各社が黒字となり、全社がグループシナジーを発揮しているから、逞しい成長を始めているのです。

両備グループの3つのコア、「交通運輸・観光」「情報関連」「生活関連」の産業とも共通点は労働集約産業、言い換えると人間でしか出来ない仕事です。お客様へのサービスであり、ソリューションであり、イノベーションであり、お客様のご期待への思いやりのお返しなのです。お困りなら、どうしてあげたらお客様が喜ばれるかを両備グループ8000人超の社員が一丸になって考えたら、日本一素晴らしい企業グループになります。思いやりの心がCSを磨くのです。そして、お客様がそれを認めてくれたから、付加価値が生まれるのです。

両備グループは教育産業かといわれるくらい、色々な教育をやっています。両備教育センターと両備健康づくりセンター、それに加えて各社の専門教育で、人間として、社会人として、専門性のある社員として教育していきます。
さらに、やる気のある30歳までの社員教育制度のアンダー30、コーポレートユニバーシティーとしての両備大学である経営管理基礎講座、さらに両備大学院としての青年重役制度と、これだけの教育システムは大手でも稀でしょう。100周年を記念して、地域の人材育成に両備大学を一部無料開放もしています。

忠恕と知行合一をベースに、「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」とプラス思考で、次代を自ら切り拓いていく逞しい人財になってください。

入社式

両備グループ