公益法人になって第一回目の両備檉園記念財団研究助成金贈呈式

(公)両備檉園記念財団 理事長
小嶋光信

昭和47年に、ヤクの研究から始まった両備檉(てい)園記念財団が、今までの活動の公益性が認められて、この10月1日に公益法人になりました。まさにこの34回目の贈呈式が、記念すべき公益法人としての贈呈式の第一回目となったわけで、受賞された皆様に心からお祝いを申し上げます。

財団の名前の由来である両備檉(てい)園のていという字(木へんに聖)は中国の柳の一種で、創業者の松田与三郎翁が、どんなに大風や嵐でも、しなやかに折れず、時の流れにしぶとく生き抜いていくという様を好んで雅号に使っていたもので、その記念の財団ということです。

この財団の元になったヤクという動物は、牛の一種で、チベットやインドにいる珍しい動物の研究で、何のヤクに立つのかなと思っていましたが、調べてみると日本との関わりは古くからあるようです。

ヤクの尾毛は、日本では兜や槍につける装飾品として武士階級に特に愛好されていたそうで、尾毛をあしらった兜は輸入先の国名を採って「唐の頭(かしら)」と呼ばれていたそうです。かの徳川家康さんの兜の飾りは、中国から入ってきたこのヤクの尾毛だったそうで、「家康に過ぎたるものが二つあり、唐の頭に本多平八」と詠っていたくらい大事にしていたようです。幕末に江戸城が新政府軍の手に落ちた時、収蔵されていたヤクの尾毛も接収され、 黒毛が薩摩藩、白毛が長州藩、赤毛が土佐藩の手に渡り、三藩の指揮官クラスの軍帽として使用されたそうです。

この珍しい動物の研究から、生物学の研究全般に財団の助成目的も拡大され、現在ではその新産業創出に係る研究や、自然科学学術集会研究助成、文化・芸術・教育研究、文化財保護保存、スポーツ振興などの助成と多岐にわたっています。

助成金額も、昨今では約1千万円をキープすることができ、両備グループの業績も堅調なうえ、資産運用も着実かつ効率的に進められて、財源の下支えになっています。

研究助成への応募も非常に積極的であるばかりでなく、内容も世界的研究と言えるものまで含まれており、審査はそれぞれの専門家が選考委員になって厳正に行なわれています。
今回は生物学に係る研究では36件の申請の中で23件について助成されました。

また、スポーツにおいては、この郷土岡山が生んだ世界のフィギュアスケーターの高橋大輔さんへの助成や、それに続く田中刑事さんの助成もさせていただいており、いささかでもお役に立っていればと思っています。

昨今、研究者にとっては、なかなか研究費の捻出に苦労されている折柄、いささかでも弊財団の助成金がお役に立ち、岡山県や日本、ひいては世界をけん引するような研究のお役に立てば幸いです。

(公)両備檉園記念財団