両備グループ代表兼CEO
小嶋光信
両備グループに御入社おめでとうございます。心から歓迎申し上げます。
初めて社会人となって、期待と不安が入り交じった、地に足がつかないような複雑な気持ちであったことを私も経験しています。
これから皆さんは社会人となるわけですが、社会人ってなんだろうということです。答えはハタラクということにあると思うのです。ハタラクは、人偏に動くと書きますが、人が動いただけではハタラクことにはなりません。ハタラクとは「端を楽にする」というという意味で、自分のために働くだけではありません。自らが働いて社会にお役に立ち、お客様のためになり、会社の仲間たちのためになることが大事です。
[善因善果、悪因悪果]
昔から善因善果、悪因悪果と言われています。自分さえ良ければいいと、自分のためになれば相手を傷つけても良い、相手を陥れても良いとインターネットなどで悪口雑言を言う人もいますが、このような悪さはいずれ自分も不幸にするのです。人を傷つけるような社員は両備の社員ではないと心に刻んでおいてください。
[三つの約束]
人間というものは苦労して手に入れると大事にしますが、たやすく手に入れると大事にしないものです。皆さんは、大変厳しい就活(就職活動の略)戦線を勝ち抜いてきて、やっと手に入れた人生の切符だと思います。この人生の切符を大事にしてください。
両備グループは、全国でも新入社員の「退職率が低くて素晴らしい」と誉めていただいています。以前は両備グループでも新入社員の退職率が高く困っていたので、皆さんにこの入社式で私との三つの約束を守ってくださいと言うようにしたら、退職者が減り、全国でも誇れる定着率になったようです。
第一の約束は思いやりをもつということです。
私はみなさんに「忠恕:思いやり」の心がもてそうもなかったら、両備グループを希望しないほうが良いですよとはっきり申し上げていますし、昨年からは就業規則に盛り込まれて、理念だけでなく、雇用上の約束という強いものになっています。
忠恕という理念は、私が10数年前両備グループの代表になった時に、あまりに企業理念が幹部、社員に浸透していないので、何とか一言で言い表せる言葉はないかと考えあぐんでいた時に、頭に閃いた二文字でした。この言葉を調べてみると、両備グループの創立者である松田与三郎翁の戒名の一部でした。その戒名は、お坊さんでなく自ら思いを込めて創られたもので、「天海院忠恕一貫居士」と言います。平たく読めば、「空よりも高く、海よりも深く真心からの思いやりを一生貫いた男です」と、まさに両備グループの理念をダビンチコードのように刷り込んであったのです。
実は、両備グループは100年以上こうやって成長できたのも、忠恕の心で、社員を逞しく育てて、決して安易に解雇したり、リストラしなかったからです。人材が余った時、他社はリストラされますが、両備グループは100年以上余剰人員の適材適所の活用を図ってきたから、大きくなったのです。
両備グループは運輸交通と観光のコア、情報のコアと生活関連のコアと3つの事業コアを有する53社約8400人を超える企業グループに成長したのは、まさに忠恕の発揮だったのです。
「思いやりとは相手の立場で考えること」と最近あるタイヤメーカーの宣伝でいうようになりました。
思いやりでこの厳しい時代を乗り越えられるかと言われる方もいますが、お陰様でこの大不況にも拘わらず、両備グループの業績と話題は両備グループのコマソンの『街は青春』の歌詞のように花盛りです。
首都圏への進出に次いで昨年から始めたアジアへの進出も、ベトナムの駐在員事務所の設置とサイゴン運輸への資本参加で橋頭堡を築くことができました。
両備グループの発展は、安心して働ける職場で、長期的な教育を受け、逞しく育った人財である社員が、しっかり頑張っているからです。いつ首になるか分からない企業に、誰も一生を託すことをしないでしょう。
社員への思いやりとして両備グループは、売り手市場であれ買い手市場であれ、採用への方針はブレません。皆さんがお勤めして、企業の理念やポリシーに共感が覚えられなければ、いずれ去っていくことになり、お互いが不幸になるからです。ですから、皆さんは、少なくとも思いやりを持とうと集まってくださった頼もしい社員であると信じています。
第二の約束は3年の我慢です。
桃栗三年柿八年と言いますし、また、石の上にも3年と言うように、初心忘れず、色々なことがあっても3年辛抱してください。
一般的に入社後2~3年間で30~40%も離職するという原因は、
- 些細なことで叱られた。
- 思ったような仕事でなく、やる気を失った。
- 上司や同僚と良い人間関係が結べない。
ということのようです。
不安もあるし、失敗して叱られることもあるでしょうが、3年は叱られることが仕事だと思ってください。五日市剛さんという詩人が、「失敗と書いて経験と読む」と言っていますが、まさにそのとおりです。失敗して叱られたら「有難うございました」と言える逞しさを持ってください。そこから本当の仕事が見えるのです。その前に辞めてしまうと、人生はいつもリセットで、いつも逆戻りで進歩がなくなります。
仕事は単純なことから学びますが、基本は仕事の土台で、単純な基本の仕事をシッカリ身につけていただかなくてはなりません。
職場の人間関係を築くためには、まず挨拶ですが、この挨拶という字に答えが込められています。挨拶とは、心を開くという意味で、まず自分から心を開いて飛び込まねば、挨拶になりません。
心構えさえシッカリしていたら、仕事は楽しいものです。
両備グループの場合は、皆さん方のお兄さん、お姉さん的な先輩が指導員としてこの一年間付いてくれます。みなさんの仕事や環境が変わって悩むこともあるでしょうが、それを親身に聞いてくれます。何でも隠し事をせずに相談してください。必ず皆さんに正しい方向と対処の仕方を教えてくれるでしょう。
第三の約束はご両親、家族や先生方への感謝です。
皆さんにまず思いやりを発揮していただきたいことは、みなさんをここまで育てていただいたご両親やご家族、先生方にお礼を言って欲しいということです。帰ってから、また電話でもメールでも結構ですから「今日までありがとうございました。これから社会人として頑張ってやっていきますから、安心してください。」と感謝の言葉を言っていただきたいのです。両備グループでは、まず「良き社員」の前に、「良き息子」であり「良き娘」であって欲しいと思います。お世話になった両親にもお礼の言葉が言えなければ、見も知らぬお客様に思いやりの気持ちなど沸くはずがありません。
両備グループは、損得だけを中心に仕事を考えるのではなく、まず社会やお客様や社員への思いやりで考えるようにみんな努力しています。勿論、企業ですから儲けなくては潰れてしまいますから儲けるのは当たり前で、まず利益のまえに社会やお客様への思いやりが大事なのです。儲かるという字は人偏で切れば諸人、信で切れば信者で、諸人が信じてくれるから利益が生まれるのです。
まずお客様からの信頼、信用が利益の源なのです。
[行動規範]
行動規範は、「知行合一」です。良いと思うことは必ず実行しようという陽明学の大事な言葉です。これから社会で多くの事柄を学んでも、実際に実行しなければ、学ばぬことよりもっと悪いと言うことです。
この理念と行動規範が、和歌山電鉄や中国バスに続く井笠バスの再生や、東海コミュニケーションズとのIDCの提携やベトナムのサイゴン運輸との資本提携になって、この企業姿勢が社会に高く評価されるようになりました。忠恕と知行合一という考えがなかったら、公共交通の再生のように労多くして功少ない事業で社会貢献する事もなかったでしょうし、和歌山電鉄のたま駅長も生まれなかったでしょう。
[経営テーマ]
事業の再編成と活性化は、「安全・安心・エコで健康」という経営テーマに沿って行われています。
両備グループは、この理念、方針とテーマに沿って社会や地域の問題解決を図る提案型企業として成長していっているのです。
まちは青春花盛りと、花が咲いただけでなく、次代の沢山の実を付けはじめています。今年はこのコマソンの文字から命名されたバーチャル社員の七葉院まゆせさんが3月8日の両備フェアで一足先に入社していますが、皆さんの同期生です。
実は、この社会への変化へのスピーディーな対応とニーズへの解決力と開発力が両備グループを光らせるソースなのです。独創的なアイデアが信条なのです。
東南アジアでは日本人のことをNATO、すなわちノーアクション、トークオンリー、言うだけで行動しないとか、3L、ルック、ラーン アンド リーブ、見て、学んだだけで去っていくと揶揄します。この失われた20数年は国や政治がまさにNATOでした。
ところがこのスピード力を身につけた両備グループは、東南アジアで、日本でこんな意志決定の速い会社があるのかと言っていただいて、仕事がバリバリ広がっています。「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」が21世紀の仕事の合い言葉です。
両備グループの伝統でもあり個性でもある信託経営や、労使強存共栄の思想と、新しく構築してきた能力主義的安心雇用とグループの各種委員会やグループ監査本部などの経営システムの整備で着々と大手に負けない企業体質を作り上げていっています。そして誠実にコツコツ頑張る社風が困難な状況でもしっかりした業績をあげられていると思います。
藤井正隆さんという法政大学大学院中小企業研究所特任研究員の「ウサギとカメの経営法則」という著書で日本を元気にしてくれる18の会社に両備ホ-ルディングスが選ばれましたが、その紹介がふるっています。「思い切って任せるとネコも働く」と評して両備グループの信託経営を紹介してくれていますが、今年は24時間、365日サラリーいらずで世界に向かってインターネットで働くバーチャル社員も加わりました。
今日ここに皆さんを祝って集まっていただいている各社、各カンパニーのCOOの皆さんに、経営の執行を全面的に任せて、全社独立採算で自立しているから、殆ど全社が黒字で、全社がグループシナジーを発揮しているから、逞しい成長を始めているのです。
[人にしかできない人間産業]
両備グループの3つのコア、交通運輸関連産業、情報産業、生活関連産業とも共通点は、労働集約産業、言い換えると人間にしか出来ない人間産業です。お客様へのサービスであり、ソリューションであり、イノベーションであり、お客様のご期待への思いやりのお返しなのです。お困りなら、どうしてあげたらお客様が喜ばれるかを両備グループ8400人超の社員が一丸になって考えたら、日本一素晴らしい企業グループになります。思いやりの心がCSを磨くのです。そして、お客様がそれを認めてくれたから、付加価値が生まれるのです。
両備グループは教育産業かといわれるくらい、色々な教育をやっています。両備教育センターと両備健康づくりセンターと各社の専門教育で、人間として、社会人として、専門性のある社員として教育していきます。新入社員教育から先輩が指導員として就いてくれ、仕事のみならず人生まで同じ目線で相談にのってくれます。そして、やる気のある30歳までの社員教育のアンダー30、コーポレートユニバーシティーとしての両備大学である経営管理基礎講座、両備大学院としての青年重役制度とこれだけの教育システムは大手でも稀でしょう。100周年を記念して、地域の人材育成に両備大学を一部無料開放しています。
思いやりを「本気」「根気」「やる気」で実践してください。知行合一で、良いと思うことを必ず実行してください。善因善果のプラス思考で、端を楽にさせ、明るく楽しい人生を自ら切り拓いていく逞しい人財になってください。
「守って勝った大将なし」で、常に積極的に攻めの行動を通じて自らの人生を勝ち戦にしていきましょう!
両備グループ
両備ホールディングス