平成26年入社式式辞 個性とやる気で未来を拓け!

両備グループ代表兼CEO
小嶋光信

「両備グループへようこそ」と御入社を心から歓迎いたします。
この厳粛な入社式で、どんな社会人生活が待っているのか期待と不安が入り交じったような複雑な気持ちだと思います。
大事なことは、これからは親の手元から巣立ちして、社会人として自主自立した人生を歩むと言うことです。

社会人とは

社会人とは何かの答えはハタラクという言葉にあると思うのです。ハタラクは、人偏に動くと書きますが、人が動いただけではハタラクことにはなりません。ハタラクとは「端を楽にする」というという意味で、自分のために働くだけではありません。自らが働いて社会にお役に立ち、お客様のためになり、会社の仲間たちのためになることが大事で、その結果として自分自身のためにもなるのです。

端を楽にするということで、両備グループは忠恕を経営理念にして、社会にお役に立つ仕事をコアに事業を進めることを企業の方向性にしています。

その中でも規制緩和によって地方鉄道、路線バスの多くが破綻し、縮小されて、このままでは交通難民が地域で生まれる懸念や、地域の人口の離散とともに地域の衰亡化の懸念が生じています。

その解決のために、津エアポートラインでの公設民営の実証実験にはじまって、和歌山電鐵、中国バス、井笠バスカンパニーなどの再生、再建を通じて、地域公共交通活性化及び再生に関する法律の制定、交通基本法から交通政策基本法の成立に関わり、全国の地域公共交通が国、都府県、市町村で計画的に事業運営が地域問題として計られる道筋をつけることが出来ました。全国的な問題を一企業の努力によって、大きく関わって行われるということは稀有なことですが、両備グループの行動規範である「知行合一」、すなわち「良いと思うことは必ず実行する」「すぐやる! 必ずやる! 出来るまでやる!」の成果だと思っています。

退職率が低いことが強み

両備グループは、最近全国でも新入社員の「退職率が低くて素晴らしい」と誉めていただくようになりました。以前は新入社員の退職率が高く困っていたのですが、皆さんにこの入社式で私との3つのコミットメント=約束を守ってくださいと言うようにしたら、退職者が減り、全国でも誇れる定着率になってきました。

3つの約束

第1の約束は「思いやりをもつ」ということです。

私はみなさんに「忠恕:思いやり」の心がもてそうもなかったら、両備グループを希望しないほうが良いですよとはっきり申し上げていますし、一昨年からは就業規則に盛り込まれて、理念だけでなく、雇用上の約束という強いものになっています。

忠恕という理念は、私が10数年前両備グループの代表になった時に、あまりに企業理念が幹部、社員に浸透していないので、何とかひと言で言い表せる言葉はないかと考えあぐんでいた時に、頭に閃いた2文字でした。この言葉を調べてみると、両備グループの創立者である松田与三郎翁の戒名の一部でした。その戒名は、お坊さんでなく自ら思いを込めて創られたもので、「天海院忠恕一貫居士」と言います。平たく読めば、「空よりも高く、海よりも深く真心からの思いやりを一生貫いた男です」と、まさに両備グループの理念をダビンチコードのように刷り込んであったのです。

実は、両備グループが100年以上こうやって成長できたのも、忠恕の心で、社員を逞しく育てて、決して安易に解雇したり、リストラしなかったからです。実は、人材が余った時、他社はリストラされますが、両備グループは100年以上余剰人材の適材適所の活用を図ってきたから、大きくなったのです。
両備グループは運輸交通と観光のコア、情報のコアと生活関連のコアと3つの事業コアを有する56社、約8,500人を超える企業グループに成長したのは、まさに忠恕の発揮だったのです。

「思いやりとは相手の立場で考えること」と、最近あるタイヤメーカーの宣伝でいうようになりました。
思いやりでこの厳しい時代を乗り越えられるかと言われる方もいますが、お陰様でこの大不況にも拘わらず、両備グループの業績と話題は両備グループのコマソンの「街は青春」の歌詞のように花盛りです。

首都圏への進出に次いでアジアへの進出も、橋頭堡を築くことができました。
両備グループの発展は、安心して働ける職場で、長期的な教育を受け、逞しく育った人財である社員が、しっかり頑張っているからです。いつ首になるか分からない企業に、誰も一生を託すことをしないでしょう。
社員への思いやりとして両備グループは、売り手市場であれ買い手市場であれ、採用への方針はブレません。皆さんがお勤めして、企業の理念やポリシーに共感が覚えられなければ、いずれ去っていくことになり、お互いが不幸になるからです。皆さんは、少なくとも思いやりを持とうと集まってくださった頼もしい社員であると信じています。
「忠恕の配慮 本気! 根気! やる気!」を実践しましょう。

第2の約束は「3年の我慢」です。

「桃栗三年柿八年」と言いますし、また「石の上にも三年」と言うように、初心忘れず、いろいろなことがあっても3年辛抱してください。

一般的に入社後2~3年間で30~40%も離職するという原因は、

  1. 些細なことで叱られた。
  2. 思ったような仕事でなく、やる気を失った。
  3. 上司や同僚と良い人間関係が結べない。

ということのようです。

不安もあるし、失敗して叱られることもあるでしょうが、3年は叱られることが仕事だと思ってください。
五日市剛さんという詩人が、「失敗と書いて経験と読む」と言っていますが、まさにそのとおりです。失敗して叱られたら「有難うございました」と言える逞しさを持ってください。そこから本当の仕事が見えるのです。その前に辞めてしまうと、人生はいつもリセットで、いつも逆戻りで進歩がなくなります。

仕事は単純なことから学びますが、基本は仕事の土台で、単純な基本の仕事をシッカリ身につけていただかなくてはなりません。
職場の人間関係を築くためには、まずあいさつですが、このあいさつという字に答えが込められています。あいさつとは、心を開くという意味で、まず自分から心を開いて飛び込まねば、あいさつになりません。

心構えさえシッカリしていたら、仕事は楽しいものです。
両備グループの場合は、皆さん方のお兄さん、お姉さん的な先輩が指導員としてこの一年間の指導のために付いてくれます。みなさんの仕事や環境が変わって悩むこともあるでしょうが、それを親身に聞いてくれます。何でも隠し事をせずに相談してください。必ず皆さんに正しい方向と対処の仕方を教えてくれるでしょう。

第3の約束は「ご両親、家族や先生方への感謝の念の発揮」です。

皆さんにまず思いやりを実践していただきたいことは、みなさんをここまで育てていただいたご両親やご家族、先生方にお礼を言って欲しいということです。帰ってから、また電話でもメールでも結構ですから「今日までありがとうございました。これから社会人として頑張ってやっていきますから、安心してください」と感謝の言葉を言っていただきたいのです。両備グループでは、まず「良き社員」の前に、「良き息子」であり「良き娘」であって欲しいと思います。お世話になった両親にもお礼の言葉が言えなければ、見も知らぬお客様に思いやりの気持ちなど沸くはずがありません。

お客様の信頼・信用が商売の源

両備グループは、損得だけを中心に仕事を考えるのではなく、まず社会やお客様や社員への思いやりで考えるようにみんなで努力しています。もちろん、企業は儲けなくては潰れてしまいますから儲けるのは当たり前ですが、利益のまえに社会やお客様への思いやりが大事なのです。
儲かるという字は人偏で切れば諸人、信で切れば信者で、諸人が信じてくれるから利益が生まれるのです。
まずお客様からの信頼、信用が利益の源なのです。

行動規範

行動規範は「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」です。これは「知行合一」良いと思うことは必ず実行しようという陽明学の大事な言葉から来ています。これから社会で多くの事柄を学んでも、実際に実行しなければ、学ばぬことよりもっと悪いと言うことです。
この理念と行動規範が、他社が出来ない困難を乗り越え、数々の企業再生や資本提携や業務提携に結びついているのです。

経営テーマ

経営テーマは、「安全・安心・エコで健康」で、現状の事業の再編成と活性化を行なっています。
両備グループは、この理念、方針とテーマに沿って社会や地域の問題解決を図る提案型企業として成長していっているのです。
“街は青春花盛り”と、花が咲いただけでなく、次代のたくさんの実を付けはじめています。

幸せな一生は人生の計画から

好むと好まざるとに拘わらず、一生には幼年期、少年期、青年期、壮年期、老年期と最後の死期があります。

論語の中に「孔子の一生」が書かれています。

『子の曰く、吾れ
 十有五にして学に志す。
 三十にして立つ。
 四十にして惑わず。
 五十にして天命を知る。
 六十にして耳順う。
 七十にして心の欲する所に従って、
 矩を踰えず。』            (為政編)
(わたしは十五歳で学問に志し、
 三十になって独立した立場を持ち、
 四十になってあれこれと迷わず、
 五十になって天命(人間の力を超えた運命)をわきまえ、
 六十になって人の言葉がすなおに聞かれ、
 七十になると思うままにふるまって、
 それで道をはずれないようになった。)
 

  

これを今日の「人生計画」として置き換えてみれば、

1.青計

20歳代、30才代は社会人として学び、資格などのキャリアを積み、結婚し家庭を持ち、家を造ることを計画する時代です。親からバトンタッチして新しい家庭を造り、子どもたちを生み育てていく大事な時代を計画的に生きていくことが、人生の生きがいが生まれます。人間は幸せに生きること、素晴らしい家庭と家族に恵まれることが大事な要素です。

2.壮計

40歳代では企業ではリ-ダ-として人を育て、家庭では子どもたちに教育を受けさせ社会人として育て上げるように計画する時代です。

3.老計

50歳代では人生の着地点を考え、子どもたちを結婚させ、自立させ、自らも人様に迷惑をかけない、健康で楽しい老後生活になるように計画する時代です。

4.死計

そして人生の最後が死計で、ピンピンころりで人様に迷惑をかけずに、老後も自分のことは自分で出来るように、健康で元気で、最後を迎えることが素晴らしい生き様です。この生き様が人生の有終の美を創るのです。

すぐやるスピードが両備の戦略

スピードを身につけた両備グループは、東南アジアで、日本でこんな意志決定の速い会社があるのかと言っていただいて、仕事がバリバリ広がっています。「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」が21世紀の仕事の合い言葉です。
成功の秘訣は「すぐやる! 必ずやる! 出来るまでやる!」であり、また反対にすぐやらないことが大失敗の原因になっているケースが多いのです。

両備の経営の特色

両備グループの伝統でもあり個性でもある信託経営や、労使強存共栄の思想と、新しく構築してきた能力主義的安心雇用とグループの各種委員会やグループ監査本部などの経営システムの整備で着々と大手に負けない企業体質を作り上げていっています。そして誠実にコツコツ頑張る社風が困難な状況でもしっかりした業績をあげられていると思います。

藤井正隆さんという法政大学大学院中小企業研究所特任研究員の「ウサギとカメの経営法則」という著書で日本を元気にしてくれる18の会社に両備ホ-ルディングスが選ばれましたが、その紹介がふるっています。「思い切って任せるとネコも働く」と評して両備グループの信託経営を紹介してくれていますが、昨年から24時間、365日世界でサラリーいらずで働くバーチャル社員も加わりました。

今日ここに皆さんを祝って集まっていただいている各社、各カンパニーのCOOの皆さんに、経営の執行を全面的に任せて、全社独立採算で自立しているから、ほとんど全社が黒字です。それぞれの企業とのグループシナジの発揮が、逞しい成長を実現しているのです。

両備グループの3つのコア、交通運輸事業、情報産業、生活関連産業とも共通点は、労働集約産業。言い換えると人間でしか出来ない仕事です。お客様へのサービスであり、ソリューションであり、イノベーションであり、お客様のご期待への思いやりのお返しなのです。お困りなら、どうしてあげたらお客様が喜ばれるかを両備グループ8,500人超の社員が一丸になって考えたら、日本一素晴らしい企業グループになります。思いやりの心がCSを磨くのです。そして、お客様がそれを認めてくれたから、付加価値が生まれるのです。

企業即教育体

両備グループは教育産業かといわれるくらい、いろいろな教育をやっています。両備教育センターと両備健康づくりセンターと各社の専門教育で、人間として、社会人として、専門性のある社員として教育していきます。新入社員教育から先輩が指導員として就いてくれ、仕事のみならず人生まで同じ目線で相談にのってくれます。

そして、やる気のある30歳までの社員教育の「アンダー30」、コーポレートユニバーシティとしての両備大学である「経営管理基礎講座」、両備大学院としての「青年重役制度」とこれだけの教育システムは大手でも稀でしょう。100周年を記念して、地域の人材育成に両備大学を一部無料開放していますが、今後この公開講座を増やしていきます。

今年は郷土が生んだ素晴らしいマルチアーティストである竹久夢二さんの生誕130年です。夢二が両備のイメージと言うことで、夢二電車や髙島屋での展覧会など、両備らしい夢二芸術の伝導活動を展開していきますので、是非ご家族でお楽しみください。
この社会貢献活動や文化活動が、実は豊かな思いやりを育むのです。

これからは汗だけ流しても現状の企業や皆さんの生活を守ることは出来ません。しかし汗と努力を忘れた企業も発展は望めないでしょう。汗と努力をベースに、これからは若い皆さんの豊かな個性とやる気が新しい両備の未来を創っていくのです。

思いやりを「本気」「根気」「やる気」で実践してください。「知行合一」で、良いと思うことを必ず実行してください。
「守って勝った大将なし」で、常にプラス思考で、端を楽にさせ、明るく楽しい人生を自ら切り拓いていく逞しい人財になってください。

20140401

両備グループ
両備ホールディングス