平成20年両備グループ代表年頭所感 チャレンジ5で日本一!『現場力を磨く』

両備グループ代表 
小嶋 光信

あけましておめでとうございます!
家族のみなさんとご一緒に素晴らしい新年を迎えられたこと、お慶び申しあげます。

昨年は、「チャレンジ5で日本一!」運動の2年目として、色々花の咲いた年でした。
お正月、和歌山電鉄貴志駅長に三毛猫「たま」を任命したことが”招き猫”になったのか、テレビ番組『日経スペシャル ガイアの夜明け」(テレビ東京系列)に和歌山電鉄と中国バスの2件の再生が取り上げられるなど、全国に両備ありと大いに話題になった年でした。

とかく暗くなりがちな企業再建を、明るく、話題性をしっかりもって再生ができていることは、現場で頑張っている社員のみなさんのひたむきな努力の結果だと感謝しています。

「おもちゃ電車」(和歌山電鉄)や本皮シートの観光バス「ファーストグレース」(両備観光)の投入、募集型ツアー商品「ゆりあな季(とき)」(両備観光)での質の高い旅の提供、新たなタクシーサービスの提案と需要の創造を目的とした「両備グレースタクシー」の開業など、運輸交通系の話題だけでなく、情報系でも、豊かな地域社会の実現に貢献できるよう地方自治体向けソリューションを統合した新ブランド「R-STAGE(アール・ステージ)」(両備システムズ)の発表や、特定健診・特定保険指導義務化に伴う新しいサービスの投入(両備システムズ)など、久しぶりに大きな話題がありました。
販売系では、9年ぶりに両備ストアが食品スーパー「リョービプラッツ」を核とした複合型ショッピングセンター「Pモール藤田」を新規開店でき、食品スーパー事業の新たな方向性を示しました。

また、事業活動だけでなく、両備の財団(両備てい園記念財団)がささやかな応援をしてきたフィギュアスケートの高橋大輔選手が、世界フィギュアで銀メダルに輝きましたし、津田永忠顕彰会が提案した「近世岡山の文化・土木遺産群-岡山藩郡代津田永忠の事績-」の世界遺産登録への取り組みも、みなさんのご協力もあり、行政に正式に取り上げていただき、文化庁へ提案されました。岡山の誇りが着実に育っていると思います。とかく世界遺産は観光面のみ取り上げられますが、白川郷(岐阜県)で効果が見られたように、世界遺産登録で地元の誇りが生まれ、若者が地域に戻り、出生率も全国有数に高まったそうです。地域の誇りが、地域を活性化させるのです。

「チャレンジ5で日本一!」の2年目となる昨年の取り組みは次の通りです。

1. 両備ホールディングス(株)の発足

企業体質の良い両備バス(株)と、成長力のある両備運輸(株)の合併で、成長力も企業体質も良い企業を目指して両備ホールディングス(株)を創り、私の約30余年にわたる企業経営の経験の集大成として、中小企業型の事業クラスターとしてのホールディングスを開発しました。
ヒト・モノ・カネという経営資源は両備経営サポートカンパニーで一元管理し、各カンパニーは必要な経営資源だけを使って効率的な経営をするという方式です。

大きな組織では大企業病になりますし、小さな組織では目先の効率経営はできますが、規模の利益と、事業と人材の成長性を享受できません。小回りが効き、その上企業力を発揮できる体制を目指しています。両備経営サポートカンパニーもプロフィットセンターとして、各カンパニーに経営資源の貸付だけではなく、余剰経営資源の効率的運用で収益体制を目指して、最小の間接費になるようにオペレーションをします。
大企業の経営の研究はたくさんあるのですが、我々のような地方企業の経営の仕組みは、誰も教えてくれないのです。両備型の経営を開発して、効率的で、成長力の強い体質造りをしなくてはなりません。

通常、これだけの大きな合併では、インターフェースが取れるまで2~3年かかりますが、ごく一部の社員に意識改革の遅れが見られるものの、社名も変え、本社も変え、人心も一新しましたので、新しい両備のパワーが生まれてきていると評価しています。
ちょうど燃料の大高騰、サブプライム問題での景気不安、政情の不安定という逆境の出発になったので、締まった良い企業体質が生まれると思います。みな順境の船出を望みますが、『順境は人を殺し、逆境は人を育てる』の例えのように、企業も苦労を重ねるほど、強い体質が生まれるのです。

2. グループ企業の体質整備

ア)両備グループ安全管理委員会 創設

松田副社長(両備ホールディングス)を中心に、『日本一安全な運輸企業』を目指して、内部監査体制と教育、ヒヤリハット事例の分析に基づく新たな教育体制の導入など、安全管理体制の再構築をしました。乗務員さんが本気になれば、有責事故ゼロは実現出来るということをいくつかの職場が証明しています。多くは注意不足の自損的事故で、プロの運転手としては恥ずかしい事故が多いのです。徹底した安全意識をつくりましょう。

イ)両備グループ監査室 創設

佐藤専務(中国バス)を中心に、目利きで経験豊かな専務、常務、役員経験のあるOB4名を両備グループ監査役に任命しました。社長の守備範囲が広がっていますので、経営理念、経営方針、経営目標がキチンと執行されているか、5つの執行責任(業績・改善・人材育成・方針徹底・次代の種まき)を果たして、問題の解決や、事業拡大の戦略が熱心に計られているかなど、社長を補佐してチェック、評価と指導的監査を実施していただいて、かなりの効果が出てきました。

ウ)両備グループのコアの整備

両備グループのコアは運輸・交通部門、情報部門、生活関連部門の3つですが、両備情報グループ長に坂本副社長(両備システムズ)を、両備トランスポートグループ長に三村常務(両備ホールディングス)を、両備タクシーグループ長に大西専務(岡山交通)を任命し、一体化したオペレーションの必要な部門の経営力を高める努力をしています。飲食関係は長久副社長(中国商事)を中心にまとめていきます。それぞれの各社がしのぎを削ると同時に、経営力と品質の一体化を目指します。

エ)両備グループ情報管理組織 立ち上げ

徹底した情報化と情報セキュリティの構築のために、最高情報責任者(CIO)に坂本副社長(両備システムズ)を任命し、委員会を創設しました。

これまでの総務・人事・財務の3委員会に加え、縦型の組織に横グシを入れて、P(プラン)・D(ドゥ)・C(チェック)・A(アクション)のサイクルをキチンと回す体制づくりをほぼ完成させました。これは「経営管理のグリッドシステム」と言います。

オ)新しい企業の両備グループ加入

フェリー部門では小豆島航路の日生-大部間の「瀬戸内観光汽船(株)」に加え、池田-高松航路の「国際フェリー(株)」も加わり、岡山県から海上2航路で小豆島に入り高松に抜けるという、本州と四国につながる航路が完成しました。これで、航路戦略が効果的に運用できるようになり、小豆島の発展に寄与できると思います。

タクシー部門も岡山交通が広島県福山市に新営業拠点となる「福山両備タクシーカンパニー」を新設したほか、尾道市には中国交通の事業を引き継いだ新会社「(株)中国交通」を設立し営業開始するなど、拠点が広がってきました。

また物流部門では、共栄運輸倉庫グループが仲間入りし、空白地帯だった北関東や北陸、信越などの拠点が広がったばかりでなく、冷蔵・冷凍輸送と保管、防爆倉庫や静脈物流などの新たな仕事のノウハウも加わり、今後の付加価値の高い仕事へのシフトが可能になりました。

昨年は『速・考働』をテーマに、チャレンジをして、多くの改革や再生、M&Aなどを素早く出来た年といえるでしょう。また、提案制度もやっと緒について、情報系や製造系などの理系だけでなく、交通・サービス業や管理部門で良い提案が出始めました。

平成20年のテーマは、”チャレンジ5で日本一!『現場力を磨く』”です。

「お客様第一」と経営方針にうたっていますが、現場で直接お客様に接するカウンターやレジ、運転職、観光ガイド職、営業、電話応対等の業務だけでなく、私たちが行なう全ての業務上にあるお客様との接点で、本当にお客様第一になっているでしょうか。

お客様不在で自分たちに都合の良い論理で仕事をしていないか、管理職が現場に出向かず現場任せになっていないかを今年は徹底的にチェックし改善します。

お客様に向かっての商品・サービスのレベルアップを前提に、ムリ・ムダ・ムラを排除した効率的な仕事になっているか、同じ記入を何回もくりかえすような事務処理になっていないか、さらには情報化された効率のよい業務体制になっているかを徹底的に分析して、現場力を磨いてください。

現場力の基本は5SAF(整理・整頓・清潔・清掃・躾+挨拶と服装・態度)です。両備ストアが岡山市藤田にリョービプラッツを出店する際、地元の方々は当初大手企業の誘致も希望していたようですが、「両備の社員は我々にも挨拶してくれる」ということで、「大手より両備が良かった」と言ってくださいます。再建中の中国バスでも「運転手が挨拶してくれた」と、意識改革を評価してくれています。挨拶ひとつでお客様の評価が様変わりするのです。

“現場力を磨く”ツールとして、プロジェクトチームやQC活動、ABC分析やブレーンストーミング、KJ法を学び、分析力を磨いてください。
今日やっていることを、明日も同じレベルでやっていては進歩が無く、恥ずかしいことだと思って、「改善・改革」とより良い提案を進めてください。

交通・運輸部門は日本一安全・安心な運輸企業を目指して、現場力を磨いてください。点呼にもプロジェクションを取り入れ、ヒヤリハットを「見える化」して、運転手さん一人ひとりが、自分の無事故方針を確立してください。もちろん安全管理の機器導入も進めます。

情報部門や交通運輸部門など時間外や休日出勤の多い現場は、効率的な仕事の仕方を徹底的に追及して、「社員の幸せ」と現場力を一致させてください。

グループの地盤が岡山県を中心に西日本エリアに片寄った経営ですが、これから首都圏シフトを徹底的に進めます。首都圏一極集中は留まるところを知らず、「上りゆく首都圏」対「落ち目の地方」という縮図となっています。地方企業として生き残っていくためにも、成長力の高い首都圏をキャッチアップします。できれば首都圏とその他の地域の収入を、10年以内に五分五分まで持っていきたいと思っています。

情報化を進めて、情報を駆使した新事業の構築に努力していきます。これからの商売は、メーカーと運輸業と情報業があれば、極端に言って無店舗でもできる時代になりました。その点、両備グループはその大事な2つの要素の事業を持っていますから、知恵を絞ってそれらの事業のコラボレーションを進めれば、新事業は生まれやすいのです。

両備ハッピーライフプロジェクトを通じて展開している「社員の幸せ」ですが、昨年は健康面でメタボリックシンドロームを取り上げ、「両備健康塾」で大いに成果をあげました。しっかりした能力とやる気があれば、健康で働きたい年齢まで働いて、年金がどうの、保険がどうのと他力本願で大騒ぎしなくても、幸せに生きられるのです。
「健康」で「働く能力」と「やる気」があれば、年を取っても職場を確保することが企業の責務です。

今年は、みなさんに「人生計画」を学んでいただき、これを実行すればもっと幸せになるということを伝えたいと思います。

人生のステージには、計画が必要です。若いときは「青計」で結婚し家庭を築き、中年になれば「壮計」で家や老後の蓄え、子息の結婚を考え、さらに歳を重ねた「老計」では、老いてみんなに迷惑をかけない人生計画を造ります。一歩先を考えれば、人生の不安は少なくなり、行きあたりばったりの根無し草の人生を歩まなくてもよいのです。計画的な人生を送るためにも、企業経営が安定していて、将来が見えなくてはいけないのです。

現場力を磨くためには、まず自分自身を磨くことが大切です。今年も健康と安全に留意して、大いに頑張りましょう!

両備グループ