両備グループ
代表 小嶋光信
一般財団法人 日本科学技術連盟 主催の「第6460回QCサークル全国大会-岡山-」へ講師としてお招きを受け、「QCと知行合一」と題して、あらためてQCの素晴らしさを皆さんにアピールさせていただきました。
実は、両備グループのQC活動の歴史は古く、当時の両備グループ青年重役会の答申に基づいて1971年にスタートしました。以来、27年間、製造業ではない当時の両備バスを主体とする交通運輸や、サービス業を主体とする業態の企業グループではQC活動への参加は全国でも珍しく、毎年、グループ内で開催された大きなQC発表大会へは、グループ役員・幹部は必ず出席するという華々しい大会でした。
もちろん、私も必ず出席していましたが、ご多分に漏れず回を重ねるごとにマンネリ化し、QC活動ではなく大会で発表するためのQCとなっている感が否めませんでした。どう見ても、QCの活動テーマだけ聞けば答えがうすうす分かってしまうような問題を、あたかもQC手法を駆使してストーリーを作り上げているような発表が何年も続き、誰言うとなく「QCのためのQCだな」という声とともに、当時、グループの主力だったバス事業が2000年代の規制緩和を控えて徐々に業績不振となってきていたこともあり、両備バスを中心に費用のかかるものは何でも止めてしまおうという風潮がまん延していて、1998年にQC活動は敢えなく休止(=急死)してしまいました。
私がグループのトップになった1990年には、すでにQC活動は雲散霧消していて、「何でも費用のかかることは止める」風潮を、止めてしまうのではなく経営の改善・改革へ切り替えて、様々な経営改善・改革を実行したこともあって、お蔭様で経営の立て直しが進み、2007年に両備バスと両備運輸を経営統合(対等合併)して両備ホールディングスを設立し、更なる両備グループの改革に努めていました。
ところが、諸々の経営改革をしていくうちに社員の皆さんの分析能力の弱さや、問題点の絞り込み・分析が情緒的になっていっている感がしてきた矢先に、かつてQCのお世話をしていた社員から熱烈なQC復活の要望があり、私なりにQC活動を見直してみました。
確かに、品質改善運動としてのQCは、製造業ではない両備グループにとって、定量的・計数的に分析することは難しいのですが、分析手法としてはこれに勝る手法はないと再認識しました。QCを止めるきっかけとなったマンネリと形骸化は、QC活動が悪いのではなく、やり方に問題があると分かったのです。簡単に言えば、上司からの指示で渋々QC活動をやったフリをしていたという「お仕着せ」での体制に問題があったのだと分かりました。
特に、若い社員の皆さんの科学的分析能力を磨くにはうってつけの手法でもあり、2008年に新たに「両備グループRQC活動」として再出発しました。
両備教育センター(※現:両備グループヒューマントレジャーセンター)のQC担当の皆さんの地道な努力と啓蒙によって2009年9月の第5123回QCサークル岡山地区大会で「両備プラッツ玉島店」が「前出し時間の短縮」をテーマに素晴らしい発表をしてくれて感動しました。
また、2012年には再出発後、初めて「第一回 両備グループRQC発表大会」を開催することができ、2015年にはRQCグループ事務局を設置して各社の活動をサポートするようになりました。
そして、2019年には、岡山交通・両備タクシーセンターチームのテーマ「私たちのやる気スイッチ」が全日本選抜大会JHS(事務・販売部門)の発表大会で初めて「審査委員長賞」をいただき、2020年に両備バスカンパニー玉野のテーマ「若手乗務担当社員定着のために」が地区大会で「銀賞」を、2021年は両備バスカンパニー玉野のテーマ「エンゲージメントUP」が全日本選抜大会JHS(事務・販売部門)「銀賞」、2022年も両備バスカンパニー岡山のテーマ「事故削減に向けて」が全日本選抜大会JHS(事務・販売部門)「優秀賞」をいただくなど、「だんだん良く鳴る法華の太鼓」ではありませんが少しずつサークルも増え、2022年には過去最高となる12サークルが、両備グループの発表大会にて事例発表を行いました。
現在、地道にQCサークルが育っている要因は以下の通りでしょう。
1.RQCグループ事務局が本気でQCの普及に取り組んでいる。
2.RQCグループ事務局で地道なQC手法の教育が行われている。
3.各社のチーム作りがQC活動を自発的にやりたい者たちのチームであり、会社や職場のお仕着せになっていない。
4.チームのリーダーが本気で取り組み、チームの啓発を積極的に行っていることと、メンバーがマンネリ化しないようにメンバーの入れ替えを図っている。
5.コロナ禍で普段はあまり一緒に活動できない乗務担当社員さんたちが対面参加で活動できる時間が取れたという「災い転じて福となす」ことができた。
そして、何と岡山電気軌道 の労働組合がチーム名:Shinin遇~ 、テーマ;「優しい接客、優しい接遇 ~ 接遇向上に向けて」で初参加してくれました。 QC発表で労働組合のチームの参加はキッと世界で初めてでしょう。そして、見事に両備グループ発表会(2022年11月24日開催_第10回発表会)で努力賞を受賞されました。両備グループの労使強存強栄の真骨頂と言えるでしょう。
さらに、何よりもQC活動の後押しとなっていることは、両備ホールディングスの設立と2010年の両備グループ100周年に相前後してグループの経営理念を「忠恕=真心からの思いやり」とし、経営方針を「社会正義」「お客様第一」「社員の幸せ」、社員の幸せの方程式として「社員の幸せ=健康×能力×やる気+夢」と定め、健康は両備健康づくりセンターが、能力アップは「両備教育センター」(※)がそれぞれ社員の幸せのために活動・支援して、特に社員の能力アップにはQC活動が効果的というグループの後押しができるようになったことです。
そして、両備グループでは「知行合一=良いと思うことは必ず実行する」という行動規範を合言葉にしていますから、「QC活動は良い」という位置づけで「必ず実行する」方向にしっかりと向いていると思います。
25年前にQC活動が休止(=急死)してしまったのは、QC活動そのものの「善し悪し」を論じる前に「会社の経営が厳しいのでコストや手間のかかることは止める」という短絡的な考え方が問題であって、きっと社員の能力アップにQC手法は「是か非か」を考えれば、費用や手間をかけずにマンネリを打破して新しいQC活動に変化させられたのではないか、それこそ「QCは是か非か」をテーマにQC手法で分析すれば面白い結果が出ていたのではないかとも思っています。
両備グループでも両備テクノモビリティーカンパニーという製造業や、ICT部門がありますから、これからも輪がだんだんと広がっていくと思います。
特にQC手法が定量的なデータ分析を用いるQC七つ道具に加えて、定性的な分析に役立つ新QC七つ道具をはじめ商品企画七つ道具、戦略立案七つ道具など多岐にわたる手法が工夫されて進化していますので、社員の分析能力と問題解決でのモチベーションアップにつながると思います。なかでも、バグで苦しむICT部門の品質改善には新QC七つ道具が役立つでしょう。
今後のQC活動の進化に期待しています。
〔参考〕…ウイキペディアより
QC(TQM)の手法には、QC七つ道具、新QC七つ道具、商品企画七つ道具、戦略立案七つ道具、統計的方法、品質機能展開、FMEA、FTA、QCストーリー(QC的問題解決法)などの手法がある。このうちQC七つ道具など七つ道具という組み合わせを用いる手法は日本で考えられた手法(ただし個々の手法には日本国外で考え出されたものもある)であるのに対し、統計的方法、FMEA、FTAなどは日本国外で考えられた手法である。なお、現在QC七つ道具は世界的に広がっており(英語版Wikipedia:Seven basic tools of quality)、ISO9001において明示されていない品質ツールに関してアメリカ品質協会(American Society for Quality)においてもQC七つ道具が品質ツールとして認知されている。
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