岡山市地域協議会が再開!

両備グループ 代表
岡山電気軌道 社長
小嶋光信

今年1月に岡山市内の乗合バス事業者7社と岡山県バス協会がコロナ禍で中断した地域協議会の再開を岡山市にお願いし、本日開催になったことに御礼を申し上げたい。

令和3年2月に協議会の中断に応じた理由は、

  • 経営的に激しい影響を受けるコロナ禍を見極めたいこと。
  • 再編実施計画の具体案について、意見の統一が困難な状況下にあり、その実質的効果が期待できないため、分科会などで事業者サイドからの提案を再度検討したいこと。
  • 地域公共交通を支える国の制度が地方へ権限を委譲することが主体で、財源や制度が未整備で自治体もノウハウが不足していると感じられたこと。

にあった。

地域公共交通は、規制緩和以後、バス利用客のマイカーへの逸走に加えて少子高齢化の影響を受け、8〜9割の乗合バス事業者が赤字となり瀕死の状態のところに、コロナ禍の追い打ちがあり、ほぼ100%の地域公共交通事業者が赤字化した。しかし、これに対する国や自治体の支援は十分とは言えず、この間に被った経営的損害は両備グループのシンクタンクである(一財)地域公共交通総合研究所調べで自力返済困難が2割、10年以上返済困難は4.5割、合計6.5割と3社に2社がこの災禍ともいうべき経営難が長期化するという瀕死の状態に陥っていると言える。

もはや地域公共交通の民間経営としてのビジネスモデルは、大都市部や極一部の地域の優良路線をもつ事業者以外は崩壊していると言える。

今後も、リモートワークやインターネットの普及で8~9割程度までしか利用者の回復が見込めないという厳しい見通しもある。

また、利用者の利益の増進を中心に据えた運送法とこれに起因する競争激化により、市内中心部では顧客争奪戦から100円運賃などの過当競争が生じ、消費税を除く実質運賃が20年以上、上がらないという事態に陥った。その結果、運送法の定める適正な利潤すら確保することが困難となり、賃金低下を招いたことから乗務員不足が社会問題化した。これに加えて世界的な燃料価格の異常高騰も発生し、将来が見通せない状況にあり、世界的なカーボンニュートラルへの対応のためのEV化や、自動運転、地方では遅れているバリアフリー化やデジタル化、DX推進など前向きな投資が全く出来ない状況下に置かれている。

このままでは再び不採算路線の減便や路線廃止というサービスレベルの低下による負の連鎖が進み、現行運送法の掲げる利用者の利益の増進に反する事態に陥ることは火を見るより明らかである。

この様な中で、国も長年来私が主張していた「競争から協調」へと方針の舵を切り、国から地方への動きなど地域公共交通のネットワーク再構築の動きが本格化し、交通政策基本法の理念である国、自治体、市民と交通事業者が一体になって地域公共交通のネットワークを支えていく方向性が明確になった。

また利用者の利益は健全な交通事業者の存在があってこそで、事業者が立ち行かなければ路線は存在し得ないという認識も国に広がりつつある

そこで交通網計画などの制度変更があり、地域公共交通のネットワークの再構築へ向かっている。具体的には、交通網形成計画が地域公共交通計画に発展し、再編実施計画も利便増進計画と改善し、地域公共交通確保維持事業ではエリア一括協定運行など新しい制度ができてきた。

今まで私は、①法整備②財源確保③利用促進として「乗って残そう公共交通」をテーマに地域公共交通活性化再生法、交通政策基本法の成立に尽力してきたが、ここに至って国の方向性がハッキリしてきたので協議会の再開をお願いした。

協議会においては「競争から協調へ」をテーマにエリア一括協定運行等を軸に建設的な議論を行っていきたい。

具体的には、前回の岡山市の再編案である、

  • 供給過剰の「西大寺線」からめぐりん益野線(八晃運輸)を廃止する
  • 八晃運輸から路線拡充の申し出のある「岡山駅国立病院線」については、供給過剰にならないように1時間1本での参入とする
  • 全国的に最低レベルにある「運賃の適正化」を図る。
  • バス事業者各社の管理下にあるハレカの一般利用客の共通利用化を図る。

の4項目について、1から4まで一体の再編であるならば、両備グループとしても、「競争から協調」の理念を推進するべく、他の事業者の意見も十分に参酌しつつ、容認する方針である。

なお、その他の路線再編の具体案については、これに賛同する企業で仮称「ももたろう交通連合」を結成し、エリア一括協定に基づく運行を視野に分科会で検討し、再編実現を推進するとともに、広島市などでは既に取り組んでいる「市内均一運賃」で分かりやすく、使い易い運賃体系にしていきたい。

また軌道事業においても、今後、国において地域公共交通計画の中に含め、まちづくりの一環として軌道運送高度化事業による、いわば上下分離による実質公有民営になるようなスキームが出来てくると思われるので、これらの施策に沿いながらバスと軌道の連携による岡山市のまちづくりに協力したい。

 

岡山が中四国の交通結節点として「公共交通利用で歩いて楽しいまちづくり」を実現できるように2010年にバスと鉄軌道による「エコ公共交通大国岡山構想」を発表したが、やっとその実現に向かっての素地が出来てきたと思う。

両備グループとしては、現在運行している各社が独自の経営を維持しながらも、地域公共交通活性化再生法等の理念の下に協調し、市民にとって真に使いやすい交通網形成と維持に向けて自治体とも連携しながら早急に進めて行くことを願っている上記、日本一の「ももたろう交通連合」の実現により、夢ある公共交通に変幻し、利用者に安心・安全な移動を提供すると共に、公共交通で働く者に夢を与えていきたい。