Message代表メッセージ

2020.02.21

「良いとこどりの路線認可」の取り消しを求め
最高裁に上告しました

両備グループ
代表兼CEO 小嶋光信

今回の東京高裁での裁判でも本来あるべき時代や社会情勢まで考慮した上での審理は一切なされず、一審の「原告適格なし」との判断を支持するということで、誠に遺憾な判決でした。

本件裁判は地方の生活交通の赤字路線維持を支えているほんの一部しかない黒字路線を狙い撃ちにした申請内容の、それも瑕疵のある認可の是非を問うものであり、これに対するかかる表面的な判決を看過すれば、必死に地域の生活路線を支えている地方交通事業者の今後の路線維持に極めて重大な影響を及ぼす、悪しき裁判例となりかねません。

このような地方交通の維持に問題が生じる認可の是非を司法で判断せず、「原告適格なし」として葬ってしまえば、間接的にこのような地方の生活路線の破綻を早める「良いとこどり」の行為が公然化する恐れがあるため、最高裁の判断を仰ぐことにしました。

即ち、競合事業者に対し、競合路線での瑕疵のある違法な国の認可に一切の司法判断さえ仰げない、いわば「門前払い」としたことは裁判を受ける権利を剥奪するようなもので、決して容認することはできません。

1.時代認識が全くなされていない判決といえる。

東京高裁の判断は東京地裁の判決を支持し、「運送法は道路運送事業者の安定的な経営の確保を保護しているとは解されない」し「営業上の利益が一般的公益の中に吸収解消されないで個別的利益として保護されているものと解釈することも困難」ということですが、20年前の規制緩和当時とは時代が変わり、少子高齢化が進む地方においては運賃の安さとか云々ということ以上に、如何に路線が維持されるかこそが運送法が第一に守るべき「利用者の利益」となってきています。

高裁判決では、この利用者の利益が時代とともに変わってきているということが理解されていません。

また、利用者の利益である「路線の維持」は、交通事業者の営業上の利益がなければ確保できないもので、許認可で運行の個別的権利を認めたことは、暗黙のうちに営業上の利益を認め、安定的な経営の確保を求めているといえます。

2.関連法令などとの総合的な判断がなされていない判決で、そろそろ規制緩和の呪縛から解き放たれるべき時期に来ている。

高裁判決は、運送法だけの、しかも表面的な条文解釈に終始しており、その後の少子高齢化での需給調整規制廃止による地域主要路線バス会社や観光バス会社の相次ぐ倒産の弊害や、乗客の取り合いによる経営を無視した価格競争などの反省から生まれた地域公共交通活性化再生法や交通政策基本法が活かされていない判決であるといえます。

少子高齢化社会における地方交通の危機への反省から生まれたこれらの法律を総合的に判断せず、法令の文言を地方の国民の苦しみに照らして判断していない、規制緩和当時への先祖返りのような判決といえます。

これらの法律の趣旨や存在意義を正しく理解せず、運送法の文言上、需給調整規制がなくなったことや、事業者の営業上の利益を保護していないという判断だけで決めるならば、これらの法律は全く無力であり、今後も地方での「良いとこどりの路線進出」は合法と暗に認めたことになってしまいます。

法律は国民を守るために時代に合わせて適宜、条文や文言の判断がなされてきましたが、今回の判決はこのような国民の立場に立った時代背景の考慮が全くなされていません。

いわば、現在の運送法では地方では「良いとこどり」の競争をしなさいというようなもので、法改正の必要性を逆に強調し、国がこれらの法律が活きるように運送法の修正をしてこなかった落ち度を指摘する判決となっています。

このような「悪法もまた法なり」と言わんばかりの判断は到底容認できません。

公共交通分野での競争政策の失敗は、先輩国といえるイギリスの1980年代を見るまでもなく、基幹的な地域の交通事業者の倒産、雨後の筍のように需要に関係なく許可されたツアーバスでの大きな死亡事故やタクシーの供給過剰による共倒れの恐れ、ひいては運転手の賃金の低下と社会的誇りの喪失などから運転手不足を招く等々、大きな禍根を残しており、いまだに規制緩和の呪縛から解き放たれていません。

少子高齢化社会で需給調整を廃止し、競争を強いれば当然、過当競争となり交通事業者は疲弊し、路線廃止などで供給がなくなり、結果として地方の住民が自由に移動することができず、住民(国民)に不利益を与えることになることが裁判所には理解できていないと思います。

3.原告適格を有する事案と言える。

高裁判決においては、需給調整規制の廃止で、運送法は事業者の営業上の利益を保護していないと判断されていますが、本来健全な交通事業の申請は事業における営業上の利益を前提になされるはずであり、許認可は申請者にその営業行為を行うことを保護するものだといえます。

ということは、運送法は当然に事業者が営業利益を確保することを認めるということであり、原告適格を有するといえます。

4.瑕疵のある認可を暗黙のうちに認める結果となる判決である。

本件では、大事な申請要件のバス停そのものを地権者や地先が認めていないにもかかわらず、あたかも認めたと虚偽の報告などを根拠に自治体が承認したことが明らかとなっているにもかかわらず、その事実を地権者や地先の方々が国ならびに岡山市へ訴えたことが黙認されたという事実があります。

そして認可がされた後でこの瑕疵を変更届で修正すれば合法ということは、間違った事実を知りながら認可をしても後で直せばよいということを国が認めることになり、神聖な申請を軽んずることになるでしょう。

このような認可が健全な事業の発達を阻害するような競争を生じさせていることは明らかで、糾されるべきだと思います。

何故、当局が行政が要件の整わない申請を1年近くも審査を引き延ばした挙句に、両備側が31路線の廃止届を出したことを契機に慌ててその夜に異例の認可をしたのか、この点も明らかにされなくてはなりません。

最高裁では正しい運送法および関係法令の解釈がなされ、これらの問題が明らかにされることを願っております。

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