両備グループ
代表兼CEO 小嶋光信
組合結成以来63年間ストをしないで地域の交通網を守ってきた両備バス労働組合と、新しく結成された岡電労働組合は、組合結成以来力を合わせてストをせず地域の足を必死に守ってきましたが、苦渋の選択でストをするということを聞き、大変悲しく、また、日頃から両備バス、岡電をご利用いただいているお客様にご迷惑をお掛けすることを大変申し訳なく思います。更なるスト回避に向け労使交渉を行なっております。
労働組合にとっては、
1. 黒字が見込まれる路線だけ狙い打ちされるということは、赤字路線が維持できなくなった場合、廃止された路線事業に従事する組合員の雇用維持に対する不安が生まれると同義なのです。
2. 運賃が半分になるということは、その分減収が発生し、組合員に対する賃金も半分になるのではという不安が生まれるのです。
規制緩和によりバス業界では乗務員の年収が平均して約1百万円も下がってしまい、それに輪をかけ将来の公共交通事業自体に夢が無くなると、バス乗務員の成り手がいなくなってしまいます。
労使にとっても根本的な問題の解決は規制緩和の弊害である過当競争の排除しかないでしょう。もちろん、競争の全てが悪いわけではありません。問題は少子高齢化の地方での公共交通の競争のあり方です。過当競争により公共路線網の維持が出来なくなるということは、「抗議と問題提起の31路線の廃止届」で国交大臣からも「地方では路線維持と競争は両立しない」と理解していただいたのですが、この認可だけ取り残されてしまいました。
規制緩和の弊害は1980年代の英国における公共交通の「競争政策」が世界的に有名な大失敗に終わった教訓が不勉強で活かされず、日本でも規制緩和実施後、31ものバス会社が全国で倒産し、タクシーや観光バスが増えすぎて事業は疲弊し、労働環境の悪化を招き、本来最も重視すべき安全性まで損なわれ、全国で重大死亡事故事案も多数発生しておりますが、根本の道路運送法は正されずパッチワークの改善だけに終わっています。
労働組合も自分たちが守り育ててきた路線でお客さまにご迷惑をおかけするストをすることは身を切るほど辛いでしょう。会社も同様に心から申し訳なく、同じ苦しみを感じております。従って、この共通の思いを労使交渉の解決の糸口にして、お客様へのご不便を最小限にし、組合も矛を収められる道を懸命に模索しておりますから、いましばらくご猶予をください。108年のご愛顧に恥じないように全身全霊をかけ努力しますので、なにとぞご理解、ご協力賜れましたら幸いです。私も地域のバス路線と社員の雇用を命がけで守ります!
今回のストになった経緯の一つは、中国運輸局長が八晃運輸に対してした違法性が強く疑われる「めぐりん益野線」に関する本件認可に関し、行政に公開質問などで回答を求めましたが残念ながら本日まで正式な回答をいただけなかったことです。
このように行政が回答を遅らせるばかりでなく、八晃運輸が既存の市内循環線の便数を半減させてでも4月27日の運行を強行する様子があることから、労働組合は態度を硬化させ、スト回避に向けた私どもの説得も現時点では奏功しておりません。
本件認可は、地域の皆様の足である公共交通の維持に関する不安を与えるものであるとともに、当社の組合員においても最終的に生活が脅かされる事態につながりかねないものです。組合としても、このような認可をした国及び道路占用許可をした岡山市に対して憤りが強かったものと思います。
公務員は全ての国民の奉仕者であり一部の業者の奉仕者ではない
2月8日の本件時点で許可された道路占用許可のうち、2つの地先が承諾しておらず、1箇所の民地の所有者が設置を認めていないと言っていた合計3ヶ所のバス停の違法性を指摘したところ、岡山市は、「公共性」や「裁量権」といった詭弁を弄し、土地所有者の権利を無視して道路占用許可を有効と判断しました。公務員は全ての国民の奉仕者であり一部の業者の奉仕者ではありません。
また、公共性の高い事業者だからこそ法や決まりを守らせるべきで、申請で不備のあったことを後から行政が大目に見て、法を捻じ曲げて遡って有効と認めるべきではありません。国も認可時点で不備のあった道路占用許可に関する岡山市の報告や民地の有効な承諾を取ったという申請者の申請を鵜呑みにせず、申請時点の手続が不備ではないか自らもしっかりと事実をチェックすべきです。
本件認可により八晃運輸が参入しようとする路線は既に十分な路線バスの運行がなされており、手続的瑕疵の有無がハッキリしない状態で運行をさせる必要性、緊急性はありません。既得権で運行してしまえば何とかなるということでは、労働組合も承知しません。組合員も生活が懸かっているのです。
国と岡山市は、市民や競合事業者と何の協議の場も設けないまま、地域の皆様の足となる公共交通網を破壊しかねない認可をひたすら守っているように思えます。本当に地域の生活路線を守るつもりがあるのでしょうか。
また、八晃運輸についても、新規路線参入に当たっては、この度岡山市にも設置される運びとなった地域協議会の場における協議を経て、それでも地域に必要だということになれば堂々と参入すれば良いのです。新規参入のために既存の路線の便数を大幅に削減してまで既に十分な供給がされている他社路線に注力するのは公共交通事業者としてのあるべき姿からはかけ離れているように思われます。公共交通事業者である以上、道路運送法の理念に従い、まずは既存の路線を充実させたうえで、フェアな競争をすべきではないでしょうか。