両備グループ代表兼CEO
小嶋光信
真っ赤な船体に白い帆が映える和船式豪華旅客船が日の出桟橋でひと際目立っています。3月7日の「御座船 安宅丸」のリニューアルオープンは、お天気にも恵まれて、大勢のご来賓やマスコミの皆さんにお越しいただき、本当に華やかなお披露目となりました。
御座船って何だろう、真っ赤な船なんか見たことないと思われるでしょうが、江戸時代に本当にあった船です。
江戸時代になって、平和な時代が来ると、関船(せきぶね)という中型の軍用船を徳川家では「天地丸」、もっと大きな安宅船型の船を「安宅丸」として建造し、徳川家光によって将軍家の船旅用に豪華絢爛に装飾されました。
殿様がおられるところを「御座」といいますが、殿様の乗られる屋形や楼閣がある船を御座船と言います。各藩の殿様も将軍家に勝るとも劣らない御座船を建造して競い合いました。当時の御座船を彷彿とさせる御座船の模型が岡山県の下津井にある祇園神社に奉納されて現存しています。
「御座船 安宅丸」は、30年前、瀬戸大橋博覧会用の両備の走るパビリオンとして建造しました。海外から来られるお客様をぜひ、日本の最高峰の御座船で「おもてなし」をしたいということで、この江戸時代の御座船を現在に蘇らせたらというコンセプトで私がデザインした船です。
30年?と思われるでしょうが、二度と造れない船ということで、当時の造船所が技術のスイを凝らして、鉄も黒鉄に匹敵する良質な鋼船を造ってくれました。両備の船員も両備の誇りとして大事にメンテナンスをしてくれていたので、現在でもとても綺麗な船です。木造の天地丸も、江戸時代の200年間、大事に使われたということで、「御座船 安宅丸」も50年以上は十分活躍できる船です。
最も難しかったのは、如何に帆船に見せるかです。機関で動くと帆が後ろに膨らんでしまうので、思いついたのがメッシュの帆にするということでした。それでも後ろに膨らんでしまうので、ステンレスの骨を考案して、あたかも風をはらんで膨らんでいるように見えるよう工夫しました。楼閣の屋根は銅板葺きとし、内装は鍋島家の下屋敷の格天井などを参考に、能舞台も設けて豪華絢爛に江戸情緒を演出しました。
瀬戸大橋ブームは5年と見ていたので、その後、世界からのお客様をお迎えするためには東京(江戸)湾だと考えて事業計画をしていました。しかし、なかなか桟橋の確保が難しく困難を極めていたところ、東京都観光汽船の守谷慎一郎社長と両備ホールディングスの松田敏之副社長の先輩・後輩という友情により実現し、念願叶って6年前に進出できました。
東京での御座船事業の総合プロデュースを松田敏之副社長がしていますが、今回、「ななつ星in九州」などで有名な世界的デザイナーの水戸岡鋭治さんにお願いして、ぜひともリニューアルしたいということで、この度の発表・お披露目となりました。
本音を言いますと、自分がデザインした船を他のデザイナーに触られるというのは、結構、辛いものがあるのですが、副社長が水戸岡さんで改装したいと言って来たときは、「太っ腹」のフリをして、「オーケー」とGOサインを出しました。しかし、途中で見るとなんだかんだとつい口を出したくなるので、現場には行かないようにしていました。が、副社長からちょこっと現場激励に行って欲しいと誘われ、サッと行って、突貫工事をして下さっている皆さんに感謝だけして帰りました。
ということで、今日初めて改装の全容を見て、「流石に水戸岡マジック!」とビックリしました。基本は全く変えずに、お客様目線のリニューアルになっており、デザインでここまで変わるかと感心しました。例えば、能舞台の老い松が赤松になっているなど、随所が流石!と思わせる出来栄えで、これ以上は見てのお楽しみです。
ぜひ一度、江戸情緒満載の御座船クルージングを、多彩なショーと世界遺産になっている日本食でお楽しみ下さい。
2020年の東京オリンピック開催に向けて、首都・東京の走る迎賓館として、フラグシップを目指します!
2017.03.07
御座船 安宅丸