両備グループ代表兼CEO
小嶋光信
女性管理職・経営職の早期養成機関として創設した両備グループWJB(特別女性青年重役会)の第2期メンバーが、活動テーマとして職場改革を熱心に討議してくれて、ワークショップ型セミナーを企画してくれました。
今、世の中では、「働き方改革」や「ワークライフバランス」「ダイバーシティマネジメント(経営)」等、「働き方」への新しい言葉が次々飛びかっています。一体、「働く」ということに何が起こっているのかを冷静に見つめてみなくてはなりません。
少子高齢化による人材不足、長時間労働を是正するという国の方針、ライフスタイルの変化で「働く」という価値観や労働観の多様化、女性が自然体で活躍できる社会をどう創っていくか等々、企業を取り巻く「働く」環境が目まぐるしく変わっているのです。
私は、平成7年に岡山経済同友会の「企業と社会委員会」で、自ら研究した今後の「働く」社会の変革について、「能力主義的安心雇用への転換」という論文を書いて社会へ提言しました。マスコミや同友会メンバーも大変興味を持ってくれて、皆、「年功序列型から能力主義へ、素晴らしいネ!」との意見でしたが、「年功序列をやめて能力主義へ転換するのは良いことだが、誰がやるの?」ということで、結局、私が経営する両備運輸(当時)の労使で取り組みました。
バブル崩壊後、日本は「失われた20年」の時代に入るのですが、お蔭様で旧・両備運輸はいち早く生産性を回復して、旧・両備バスとの合併の基盤づくりができました。バブル崩壊後の長期的な経済の低迷期に一番問題になったのが人件費の圧迫で、企業はリストラや正社員から非正規社員への転換を進め、また、バブル期に人手不足から登場した女性総合職をドンドン減らしていた時代でした。
私はこの状況を分析した結果、
- 生産性に見合わない年功序列型賃金の弊害
- 働いても働かなくても賃金が同じ矛盾
- ダラダラ長時間働き、休日出勤をして時間さえ経てば賃金が増え、真面目な社員が損をする体制
が、日本の労働生産性が上がらず、賃金の硬直化を招く原因であり、「頑張った社員が報われる」企業とするために「能力主義的安心雇用」を提言したのです。
能力主義になれば、「男女(性別)の違い」「年齢の違い」「人種の違い」「門閥、閨閥の違い」も関係なく、働く社員は皆、平等で、「社員の幸せ」が実現できる企業を目指しました。
賃金体系の変更だけでなく、当時の一般事務職の女性社員も、試験をして総合職に登用し、現在の女性幹部に育ってくれています。
その事情は現在も変わらず、「働き方改革」や「ワークライフバランス」「ダイバーシティマネジメント」という言葉に変わってきているのです。
日本の今後一番の課題は、先進諸国中で労働生産性が最も低い状態が19年も続き、またOECD(経済協力開発機構)加盟諸国の中でも18位で、経済成長率も平均0.6%が0.4%と低迷が続いていることです。
またゆとり、ゆとりと言っていますが、実際は1990年の2,100時間の年間労働時間から2015年には1,700時間になり、アメリカの1,800時間よりも既に働かなくなってきているのです。
労働生産性も、東京と全国平均とは1.5倍の違いがある等、地域格差がますます広がってきています。
この経済が低迷する中で、これから、どうやって生産性を上げ、これらの「働き方改革」や経営のかじ取りをするかです。
企業経営としては、「売上なくして会社なし、経費削減なくして利益なし」ですから、経営にヤスリをかけながら、このダイバーシティ経営をすれば、改善どころか結論は社員の賃金、労働条件の低下につながってしまうため、2年前から実施中の新・会長方針の第一番目の項目に「営業と労働生産性の向上」をあげているのです。
いかに労働生産性を上げながらダイバーシティ経営を達成し、男女(性別)・年齢・人種を問わず働きやすい企業となり、お客様や新しい人材に選ばれる企業になるか、新たな付加価値を創造し、サステイナブル(持続可能)な経営にしていくか…、今が正念場です。
通常、この種のセミナーは教育センターが参加者を募るのになかなかに苦労しているのですが、2月27日に開催した、今回のWJBのダイバーシティ・ワークショップ型セミナーは経営職から管理職まで、自推・他推で集まった参加者は非常に多彩な面々で、午前と午後のどちらの回も、座りきれない程の大盛況でした。
キビキビと、また細かいところまで女性らしい配慮の利いたWJBの対応と参加者の熱意に触れ、このワークショップ方式を教育体系に取り入れていけば両備グループの職場が「変わる!変われる!」と大いに実感したセミナーでした。
2017.02.27
両備グループ