中国バスの再建の経緯と10周年への感謝と御礼(ご報告)

株式会社 中国バス社長
小嶋光信

お陰様で、平成28年12月22日で、旧中国バスから経営再建をお引き受けして丸10年になります。地域の公共交通を守るために、両備グループの経営理念である「忠恕=真心からの思いやり」を中心に、「社会正義」「お客様第一」「社員の幸せ」を経営方針とし、安全・サービス・生産性のアップを目指して、社員一同、ひたむきに努力してきました。

旧中国バスの経営破綻時に、濱岡前社長から「県内の同業者や行政に救援をお願いしたが、助けてくれるところもなく、万策尽きた。どうしようもなくなって、県境を越えて両備の小嶋さんに再建をお願いしに来た。私は何も望むことはなく、ただ、路線の維持と社員の雇用をお願いしたい」という悲痛なご依頼がありました。

両備内の意見は、年に12回も労働争議をした会社で、地域の評判も「危ない」「バスが汚い」「サービスが悪い」「ストなどが多くアテにならない」バス会社で、通勤定期がほとんど売れないという状況に支援を懸念する声が多かったのですが、濱岡前社長の地域の足と社員の雇用を守りたい一心の必死な要請に応えることにしました。

当時は、和歌山電鐵での再建も始めたばかりでしたが、規制緩和で崩れた地域公共交通を救うためには、公共交通を守る法改正と現場のノウハウを持つ業界内での実績が必要であり、お引き受けしました。何よりも、備前も備後も昔は吉備の国の住人であり、「義を見てせざるは勇なきなり」の精神での決断でした。

その後、幹部・社員一体となっての取り組みで、バスはみるみる綺麗になり、苦情件数も平成18年に182件だったのが、平成28年には52件と7割以上減少しました。お褒めの言葉も再建前にはほとんど無かったものが平成28年には25件に増加しています。

引き受け時には、「危険」とまで言われた有責事故件数(こちらに責任がある5万円以上の交通事故)ですが、平成15年の有責事故件数124件に対して、平成27年は12件と10分の1にまで大幅に減少しました。ただ、平成28年は11月現在で15件となり、昔と比べれば少ないですが、増加傾向にありますので、更に気を引き締めて安全運転に奮励します。

また、平成18年には4億3千万円もの補助金をもらっていましたが、経営努力で平成28年には2億7千万円まで4割近く縮小することができました。

古い・汚いと言われた社屋とバスは、新築や改装をし、72両の新車を導入して綺麗になりましたし、それに加えて3人1車制から1人1車制にして、乗務員が責任もってバスを綺麗にし、車両点検もしっかり行ない整備していることが、安全や美化につながっていると思います。

来年の経営方針は、

「一、優しい言葉、思いやりの行動
 一、初心に帰り安全意識の再構築!」
です。

 労働争議に明け暮れた10年前に比べると、やっとお客様に信頼いただけるバス会社になったと思いますが、「日本一安全な運輸企業」という目標からはまだ道半ばです。大事なことは「人様の命をお預かりし、地域の足を守る」仕事をさせていただいているという自覚と誇りです。
 
 その目標のためには、「忠恕=真心からの思いやり」の経営理念を大事にして、優しい言葉遣いと思いやりの行動で、安全を第一に、明るく楽しい職場づくりに励みたいと思います。
 
中国バスの再生を通じて、当地の国会議員の宮澤洋一さんに地域公共交通の窮状を伝え、如何に規制緩和が間違っているかをご説明して、一緒に作った法律が「地域公共交通活性化・再生法」です。これが発展して交通政策基本法ができ、今後の地域公共交通にいささかの光が見えてきました。基本法の制定によって、今まで公共交通事業者の孤軍奮闘型から、国や地方自治体、市民と事業者が一体になり、公共交通の維持・発展を図るように変わりました。和歌山電鐵と中国バス、井笠バスでの努力が全国の地域公共交通を救う原動力になったということに社員も誇りを持って、全国の模範になるよう、今後も頑張って日々の業務に励んでいきたいと思います。

 10周年を機に、心より御礼申し上げますとともに、今後も引き続きご支援・ご協力の程、宜しくお願いいたします。

chubus10th

2016.12.23
中国バス