平成22年 年頭の辞 思いやりでネクスト100年を創りあげよう! ―安全・安心・エコで健康―

両備グループ
代表 小嶋光信

あけましておめでとうございます!

今年はいよいよ両備グループ創業100周年を迎えます。そのささやかなお祝いと、昨年一年間、本当に厳しい経済環境の中を頑張っていただいた御礼に、家族団らんで希望あふれる正月を迎えていただきたいと、紅白のお餅をプレゼントさせていただきましたが、美味しかったですか?「楽しい家庭」が人生の宝ですから、今年もぜひ家内安全と交通安全で頑張ってください。

100年に一度の大不況も、何とか経済の底が抜けずに踏ん張っていますが、日本は政権交代で先行きが混沌としている最中にドバイバブルが崩壊し、急激な円高になりました。

しかし、これは10年前みなさんにチェンジ・チャレンジ・コンペティションの題で社長方針を示し、予言したように、世界的な金余りが悪鬼のように駆け回る一環の想定内のことで、これからもグリードと呼ばれる強欲な守銭奴が、次から次へと美味しい資源や国を狙い撃ちにして、世界は混乱し続けるでしょう。そんな爆弾を抱えたままではありますが、今年は中国やインド、ロシアなどを中心に、世界経済も改善していくのではと思っています。また、政権交代自体については小泉改革の三位一体改革で疲弊しきった地方も、逆風から吹き返しの動きが出てきたと実感しています。

あの世界を代表する野球のイチロー選手は、多くの素晴らしい言葉を残していますが、その一つに「スランプこそ絶好調! スランプの先にこそ飛躍がある。だからピンチは楽しくて仕方がない」という言葉があります。両備グループが、この逆風の中で奮闘できている理由は、十数年前から日本の構造不況を予測して体質の強化を図ってきたからです。

まず、経営努力をしていても関係のないところで何十億円もの損失が出る厚生年金基金や健康保険組合を解散し、赤字企業、赤字事業の解決とともに、企業体質としての信託経営を強化し補完しました。そして、総務、財務、人事、情報、CS、安全管理の各委員会でグループ経営に横串を入れて、バス、トランスポート、タクシーや情報をそれぞれグループ化することでグループ管理力の向上を図り、さらにグループ監査本部でチェック能力を向上しました。

得てしてピンチは守りに徹する企業が多いのですが、両備グループの場合は両備ホールディングスの創立で信用力とグループシナジーを発揮し、日本の一極集中の坩堝(るつぼ)に東京事務所を設立して攻めの経営を展開しました。

地方公共交通の存亡をかけた、和歌山電鐵と中国バスの再生が一つの評価になり、地方の一企業の経営努力がモデルとなって、公有民営や補助金のインセンティブ導入も含む地域公共交通の活性化が強化され、苦しむ地方の電車やバス業界の希望を少しでも創ることが出来たと思います。イチロー選手は「ピンチは、神様からの最終試験。打開した瞬間、一気にレベルはあがる」と言っていますが、世間の評価で、一気に信用が高まったと言えるでしょう。その全国的評価のシンボルが、スーパー駅長たま勲功爵様の大活躍です。たまちゃんだけでなく、グループ女性社員の素晴らしい努力も見えてきました。CS委員会の取り組みでは、昨年の夏にトランスポートグループの女性社員が高速道路のサービスエリアでトラックの運転手さんに冷たい飲み物サービスをし、安全の呼びかけをしてくれたことが運転手さんの心を掴んでくれ、安全につながりました。

ネクスト100年を貫くために、両備グループ経営理念と経営方針を整理しました。「忠恕:真心から思いやり」という創業者松田与三郎さんの心は、最近の新入社員の心に共鳴し、約7割が忠恕という企業理念が良いと言って入社してくれています。むしろ、それ以前からのグループ社員の方が、「忠恕」と「経営方針(社会正義・お客様第一・社員の幸せ)」をしっかり理解していない状況も見られますので、各職場の朝礼やミーティングでこの4項目をみんなでしっかり理解していただき、それぞれの職場の具体的テーマに落し込んでいただきたいと思います。

両備グループがこれだけ大きくなったのは、労使強存共栄に根ざした労使双方の思いやり、苦しい時に社員を大事にして、むしろ労働力の余剰で企業拡大につなげたこと、最近の事業再生やたまちゃんが生まれたことも、実は「忠恕」の実践に他ならないのです。労使が喧嘩ばかりしてきた企業は、この変革に対応できず、多くは退職金も払えずに倒産していきました。労使が「忠恕」でまとまって、敢えて火中の栗を拾って、業界や地方の問題を解決する両備グループの姿を社会は評価してくれているのです。一部のグリード(=強欲な)企業と一線を画し、社会やお客様や社員の幸せにベクトルを合わせる企業姿勢を評価していただいていると思います。

これからの100年を生き抜くためには、社員一人ひとりが同じ仕事をずーっとやっていくことは出来ません。岡山だけに閉じこもって、100年生き残れないことはみんなすでに理解していることと思います。時代の変化に挑戦し、自ら多能工化することです。何でもやってみようと前向きな人間になることです。

路線バスや観光バスとタクシー事業の問題も、それらのコラボが解決することでしょう。情報のプロジェクトマネジャーが、次の展開で運輸・交通や生活関連の経営管理職に育つためには、早いうちにその業界で経験しておくことが必要です。社員教育が進んでいないところでは人の好き嫌いが生産性を阻害していますが、プロの社会では「好きか普通か」しか社員同士の関係に持ち込んではいけないことを学ばなければなりません。運転業務については安全を軽視し、運転の前夜に深酒するような乗務員は人生の通行手形である免許を失うでしょう。40メートルの車間距離を保ち、思いやりの運転をすれば、渋滞は無くなると言いますし、事故も減り、燃費も4割向上します。そんなことをしたらどんどん割り込まれるなどと考えずに、思いやりで譲ってあげてください。両備も大きな市場で、優れた大手や個人と競争し、互角以上の戦いをするためには、社員一人ひとりがプロになることです。自分に甘く、努力せず、進歩しないことを「下手を固める」と言いますが、トップランナーや、提案に進んで挑戦して、次の時代のトップランナーを目指してください。イチロー選手は「自信は上手くいったことにより獲得できるのではなく、困難を乗り越えたときに根づく」と言っています。

チャレンジ5で日本一運動の5年目のグループ経営方針は、

現場力を磨く
1.基本忠実力
1.実行スピード力

です。

三重県で、弊社の津エアポートラインと競合して倒れた松阪航路の再建を、松阪市と競合会社から頼まれて再生することになりましたが、5SAFとSSPアップをしっかりするという当たり前のことが、両備のノウハウであり、コストを下げ、安全性を高め、サービスを向上することを再確認しました。この基本を如何にしっかり現場で忠実に実行するか、そしてその基本の上に応用するかが現場力でもっとも大事であるということです。基本に忠実でないまま応用すれば、まさに「下手を固める」ということで、下手なゴルフの素振りと同じです。
 
東京事務所を開いて、新たな事業拡大と人材確保をしていますが、当初東京の人材と岡山の人材で能力が違いすぎることが問題かと思っていました。実際は、能力ではなく、仕事のスピードが全く違うのです。「良いと思うことは必ず実行する」ことを基本にしなさいと言っていますが、岡山県民は良いと思っても変化を嫌がり、言うだけで実行に結びつかないことが多いのです。良いと思うことは、自分の仕事や権限でなくても上司と相談し、果敢にスピードを持ってやることです。両備グループには「三度の原則」があり、大手のように一度の失敗でアウトということはありません。悪意が無ければ二度まで失敗を恐れることはありません。ノーリスク、ハイリターンなどという上手い話はないのです。これからの仕事は何十年も続くことは稀で、ファーストイン、ファーストアウトで、早く手がけて旬が過ぎたら早く手を引くことです。

ネクスト100年の変革の方向を示すために新たに経営テーマを設けました。それは、「安全・安心・エコで健康」です。これらは全て、経営のコストであると思っている経営者が多かったのです。しかし、安全も、安心も、エコであることも、健康につながることがらも、お客様の求めているサービスそのものなのです。エネルギーが変わると、自動車整備も電機や電子技術、制御のシステムが分からないと商売にならなくなります。両備の多業種にわたる事業に、多業種に通じる技術者がいるのです。新しい技術開発に、他社ではそれらの人材を新たに雇わなくてはなりませんが、両備ではイタリアのベネトン社のように、人材を持っている企業同士でグループ内プロジェクトを組めば、リスクとコストを大幅に軽減できるメリットがあります。100周年記念両備グループベンチャーファンドを利用して、どんどん次代を創るチャレンジをしてください。

グループのエコ商品やウイルス対策商品を使ってエコに健康に対応してください。ウイルス対策はコストですが、それが両備の交通サービスの差別化で顧客を創造してくれるのです。情報グループの情報セキュリティやIDCを利用してください。みんなバラバラにサーバーを持たずに、両備システムズのIDCを使ってクラウドコンピュータ化していってください。効率もコストも、セキュリティも他社では考えられないレベルに上がるはずです。

グループ内で儲けてやろうなどと考えず、営業経費がかからないのですから、仲間の企業に「忠恕」の気持ちで、持っている自社能力を使ってもらって競争に勝てる体質づくりに協力してあげてください。両備グループにとって、このコラボ(=連携)が出来れば鬼に金棒です。そして、シリコンバレーの伝説的な企業家ジム・クラークは「自分より若くて頭の良い奴と組む」ことが成功の秘訣と言っていますが、グループ内の若手を大いに活用させて、太陽光プロジェクトのように表舞台にあげてやってください。

落ちぶれて100年は簡単でしょうが、隆々と100年は素晴らしいものです。今年7月31日には、100周年の記念式典をみんなの手作りで、両備らしく楽しく感謝の気持ちを込めて行いたいと思います。

日本一運動もやっと理解されてきましたが、大それたことではなく、社員一人ひとりが日本一の何かを目指すことが大事です。日本一など出来るわけがないと思わずに、出来ると思って実行してください。ゴルフのパットでさえ「出来る」と思うか「出来ない」と思うかで同じ人がパットをした際、入ると思ったときは圧倒的に入り、入らないかもとマイナス思考のときには入らないという事実が実証されました。

イチロー選手は「夢は近づけば目標に変わる」と言っていますが、両備のネクスト100年、夢ではなく目標として、全社員一丸となって日本一運動を進めましょう。

ネクスト100年、頑張ろう!