両備ホ-ルディングス
社長 小嶋光信
4月1日予定通り岡山高島屋に33.4%の出資をして、代表取締役をお引き受けした。
両備ホ-ルディングスが岡山高島屋に出資したのは、鈴木社長と長年の友人であり、また物流の一部やレストラン「ファミリーローズ」などの仕事を開業以来させていただいていることもあるが、多くは私が両備グループの代表になって以来約10年間進めているまちづくりの一環だからだ。
小泉政権時から行われた三位一体改革で、権限のみ一部移譲されたが、財源は縮小された地方は急速に弱体化してしまった。岡山県も例外ではなく、一つの象徴として倉敷の三越の撤退がある。
岡山市が政令都市となっても、岡山高島屋にもしものことがあって、老舗の代表である高島屋ブランドが消えれば、大手が魅力を感じない単なる田舎都市になってしまう。これは是非避けたかった。地域の衰退から地価も下がり、負の経済連鎖に陥ってしまう。 両備グループが百貨店へ資本参加したことをビックリされるが、百貨店は本来呉服系と電鉄系の2系統ある。鉄道、バスはまちづくりの手段だが目的ではない。一方、百貨店は地域の商業を支える目的的存在だ。
換言すれば、百貨店の客足が落ちれば交通も衰退する。だから阪急電鉄さんや東急電鉄さんは、大掛かりなまちづくりに熱心なのだ。
もう一つは、岡山市も県全体も元気のないことだ。商業でいえば、岡山市は、約70万人の人口で、商圏人口はほぼ同じの60万人しかない。高松市は、約30万人の人口だが、商圏人口は倍の60万人あるから、岡山市とくらべると活気がある。高松と同じように倍の商圏を持てば140万人となり、一気に岡山市は魅力的となる。これは商業の集積が買い回りになっていないことが一因だ。簡単に言えば大都市に比較して魅力的な店や百貨店がないと言うことだ。
岡山市が買い回りの魅力ある商業集積になるには、岡山高島屋のある駅前地域と天満屋さんのある表町商店街との回遊性が一つの解だと私は分析している。今はお互いの丼を取り合う経営のやり方で、百貨店が2店舗あるのも、商店がたくさんあるのも、たたき合いみたいなもので、お客様の回遊性を誘わない。1時間圏内に550万人もの商圏が全く活かされていない。みんなで競争による連携プレーをしなければ、シナジーは生まれない。
今、百貨店不況が叫ばれ、地方百貨店がバタバタ潰れているときに、なぜ岡山高島屋に出資ということを良く聞かれる。理由は前述のようにまちづくりの一環だが、本当に百貨店はもう街にいらないのか。出資を決めてから多くの人々にヒアリングした。一人として百貨店は要らない、岡山高島屋は要らないという人はいなかった。みんな商品がオシャレでない、ダサい、ほしい物がない、東京と同じ時期に商品が欲しいということで、百貨店が社会からズレたのでなく、百貨店の品揃えがお客様からズレていることが分かった。出かけると、いろんなところで「小嶋さん、今度コレ入れてもらってね」、「こんなサービスではだめよ」ということで、たくさんのご注文をいただいた。オマケに町のお取り引き関係もない、いつも歩いて通る老舗のお酒屋さんが、「岡山のために良いことをされている」からといわれて立派な胡蝶蘭の鉢植えを送ってくださった。これだけの期待があれば、これはやれると思った。
百貨店が衰退した原因は、他にも
- スーパーや通販、インターネットに顧客を奪われた。
- フロア効率の悪い家電、家具やおもちゃや屋上の遊具、紳士服など儲からない物を止めて、儲かる女性の需要に特化していった。捨てられたら家電などは、大手家電量販店となり、百貨店の跡を全て買うまでに成長した。結果百貨店でなく五十貨店になってしまった。 商売は儲からないものをやめるのでなく、儲かるようにするという経営を忘れてしまった。アメリカ的マーケティングの欠陥は、アイテムごとのコンピュータ分析では、その家電のお客様が他の売り場で何を買ったか、全体の商売はどうだったかの総合判断ができなかった。
- 給与振り込み制などで、お金を持っている中年の女性客に特化したため、彼女たちが高齢化すると次の見込み客を作ってこなかったので、すでに専門店のお客様になってしまっていた。
- リスク回避の経営で、自ら商品を在庫して売るのでなく、取引先にフロア貸ししたため、商品を見る目を充分養えなかった。即ち、不動産屋化したのではないか。経営のリスクを回避しすぎると、経営力が失せてしまう。売れなければ止める、店を閉めるが本当の経営なのか。儲からないからと投資もせず何十年も商売し続ければ、お客様は新しい専門店に行ってしまう。
ほぼ原因が解明できたので、4月1日13時にキックオフのセレモニーをした。岡山高島屋の「たまちゃん」となるであろう肥塚社長とガッチリ握手した。
両備バンドのオルケスタ・デ・ブルースプリングスの軽快な「街は青春」と共に、イベントのポニーに子供たちの笑顔が揺れていた。ミニトレインに子供の歓声が響いている。
孫を連れたお婆ちゃんが「あんたが両備の社長さんか。明日を担う子供に夢を与えてくれてありがとう。素晴らしい!」と言ってくださったのにはビックリした。和歌山電鉄以来のことだ。
鈴木社長が地域密着で岡山高島屋を元気にしようという気持ちがちゃんと伝わってくる。
さあ、岡山を面白くしよう!