「晴れの国岡山」で集光型太陽電池評価関連事業の共同研究

両備ホールディングス 社長 
小嶋光信

今回の京山への、独立行政法人産業技術総合研究所の高性能集光型太陽光発電システムの設置と、その電力利用として両備ホールディングスとの共同研究は、岡山市の一つのシンボルであった京山ロープウェーと観覧車を有する遊園地跡地の再生に、夢を持って取り組める言うことで、大変意義深い事業と言える。

京山ロープウェーは、昭和31年に、岡山市内を一望出来、隣接地に池田動物園があり、子供達や市民に夢を与える事業として開設された。当時はロープウェーそのものも大変人気があり、回転式展望レストランのある最新式の娯楽施設だった。

その時代はまだ路線バスが華やかな時代で、施設と路線バスの相乗効果で賑わったが、マイカー時代になり、狭隘な道路と、駐車場不足で敬遠され、子供や家族連れの娯楽の多様化の波を乗り越えられずに、一旦平成10年に閉園された。

子供達の夢を壊さないようにと言う現岡山市長の高谷さんが、火中の栗を拾ってくれて岡山スカイガーデンとして平成11年に再開してくれた。京山に再び子供の夢が復活した。しかし、稼ぎ時に不足する駐車場問題などネックの解消が出来ず、懸命の経営努力であったが、残念ながら約3年前に再度閉園された。その時高谷さんからは、京山は岡山市のシンボルだから、絶対に壊さず、何か再利用してほしいと言われたことが、深く心に残っていた。彼の一言が無ければ、利用方法が分からず、京山を取り壊していたかもしれない。

残すといっても、京山は、道路の狭隘と駐車場問題で、集客力の必要な事業はできず、多くの知恵を集めるため、所有する岡山電気軌道の問題からグループ全体の問題として、100周年の課題とした。

ちょうどその頃、産業技術総合研究所による集光型太陽電池発電装置の日米比較の研究の候補地に、京山はどうかという情報が、岡山県産業振興財団から松田久副社長に入った。 国際的研究であり、将来の環境問題を解決する素晴らしい研究だ。両備グループの経営方針の社会正義と、経営テーマである安全・安心・エコで健康に沿う事業であり、土地の無償提供という条件だが、「晴れの国」岡山県の、また政令市岡山市の未来の夢をシンボル化する事業なので、両備グループの社会貢献事業としてご協力する事に方針を決めた。

両備グループは、この7月31日に100周年を迎えるが、むしろネクスト100年に向かってどのように企業経営を盤石にするかに意を注いでいる。

我々の事業は、元々ルーツを西大寺鉄道としているように公共交通を中心に運輸交通、観光産業を一つのコアに、情報産業と生活関連産業という3つのコアから成り立っている。基本的には地域の盛衰と運命を共にする地域産業だ。ところが、地方は長期の構造不況と世界的な不況が混じり合い、オマケに三位一体改革による地方財政の困窮で、将来の夢を失いかけている。

その上、日本の経済的地位の低下は、一人当たりGDPでは2000年3位が2008年23位に下落し、国際競争力では1990年1位が2010年27位という凋落ぶりだ。労働分配率は、2006年71%とすでに先進国中の最高水準に達し、企業の生産拠点はもとより、研究開発拠点の移転も始めるという有様で、技術立国日本が揺らぎ始めた。このことは、日本では生産拠点が主に地方であることから、更に地方の衰退に拍車がかかってきている。加えて、韓国のように国を挙げて産業育成する態勢が乏しく、技術で勝っても事業で負ける日本は、液晶パネルなど1995年100%だったものが2005年には10%と、負けこんでいる。これからは、地方に付加価値をもたらす技術が必須要件になり、新たな産業の集積に成功しない地域はますます厳しくなる。

両備グループとしては、運命共同体の地域の再生、発展のために出来るだけの企業努力に取り組んでいる。

岡山県の発展のキーポイントとして、

  1. 交通の拠点性を活かす
    1時間圏内550万人、2時間圏内1200万人以上という商圏人口を活かすことが大事だ。岡山県は、物流と流通にとって最大のメリットを発揮する地域だ。この産業の集積の為に、早島に全国でも有数規模の民間開発の流通団地をつくり、更に総社でも開発中で、物流と流通の産業集積と雇用の増加が望めるように事業運営をしている。 岡山市内の商圏人口拡大のために、「歩いて楽しいまちづくり運動」で、中心市街地に2万人の人口増加を図る事業計画を遂行している。そのために、21世紀のLRT「MOMO(モモ)」の投入とグレースタワー建設と出石小学校跡地の再開発を行った。 退出自由の規制緩和のままでは、後10年もすれば市内の公共交通は半減する懸念を、ここで夢のある公共交通に再生する「エコ公共交通おかやま構想」を発表した。この構想は岡山市だけでなく、交通基本法実現の折りの具体的例示として、全国の同じような都市にお役にたつプランになればと思っている。
  2. 歴史性に磨きをかける
    大和に匹敵する歴史の宝庫であり、この歴史性を地域のブランドに育てることが、観光やコンベンションの活性化と、買い回り人口の創造につながる。 この地域のブランド造りに後楽園、閑谷学校や2500町歩の大干拓などの津田永忠の土木遺産群の世界遺産への登録を目指した結果、閑谷学校が教育遺産群の一つとして残っている。 ITに詳しい人にはすぐ分かることだが、検索マシンに揚がってくるブランドは、世界の観光では、世界遺産とミシュランに選ばれたブランドになることが一番だ。簡単に言えば、ブランドになり得なかったら、検索マシン上では、空白地帯となる。世界遺産になることも大事だが、それ以上に世界遺産に向けて情報を出し続けることが、もっと大事なのだ。後楽園、大原美術館や夢二郷土美術館などがミシュランに載って、ヨーロッパのお客様が増え始めた。
  3. 気候性を活用する
    晴れの国岡山と言うように、全国有数の雨の降らない日が多い岡山の特性を、如何に事業に活かすかだ。昔はこの気候から塩田が、干拓地の塩抜きのための綿花から縫製にと地域産業が進化したが、これからは、一つは太陽光発電であり、他方は農業だろう。

この晴れの国岡山をシンボル化する、高性能集光型太陽光発電システムによる日米比較の研究が、岡山市で、それも新幹線からも市内の多くのところからも見える京山の山頂に出来ることは、都市のシンボル化としてありがたい。この集光型は500倍の光を集めることでコストダウンを図れる次世代型の太陽光発電装置だ。

両備グループとしては、この発電した電力を使って、両備ホールディングスとソレックスで共同開発した、これも次世代型の植物工場「やさい蔵」で、太陽光電池と植物工場とのハイブリッドな共同研究をする事で、産業技術総合研究所と調印した。

これらの研究が契機になって、岡山県が、また、岡山市がこの瀬戸内海気候を活用した産業として、更に色々な研究が集積し、太陽光を利用した産業創造になれば大変嬉しい。それこそ本当の「晴れの国岡山」だ。

両備ホールディングス