Message代表メッセージ

2010.07.31

両備グループ100周年記念セレモニー 代表挨拶「感謝の100年、思いやりでネクスト100年」

両備グループ
代表 小嶋光信

両備グループの100周年を、このようにグループ全社が元気に、そして将来への大きな希望を持って迎えられることに大いに感謝します。両備グループを支えて下さっている大事なお客様と、頑張ってくれている社員、組合と株主のみなさんへ心からお礼を申し上げたいと思います。

通常100周年というと、過去の記録を社史に残して、感謝を中心に行われますが、私の100周年は両備グループの100周年を過去のノスタルジアにするのでなく、次の100年の素晴らしい出発点にすることでした。これから続く若者たちが、「ああ先輩たちは将来にツケを回さずに、やるべきことをしてくれていた」と感謝までいかずとも、評価してくれる100周年にしたかったのです。それがネクスト100年に込められた私の気持ちです。過去の先輩たちが私たちにちゃんとするべきことをして、残すべきものを残してくれていたように。

約10年前、両備バスの社長になり、グループの代表に就任したとき、来るべき100周年を迎えるに当たって大きな問題が3つありました。

第一の問題は、約30年もの間、毎年2~3%のお客様が減少しているバスや電車などの構造不況問題にどう対処するかでした。 分析してみると補助金をもらわずに自主自営で経営してきた両備バスや岡山電気軌道でさえ、10年後には大赤字となり、事業継続が難しくなるということが分かりました。マイカー社会の進展で乗客の目減りが止まらない上に、2~3年後には政治のミスリードともいえる規制緩和が行われて、地方公共交通の危機的状況が予想されたのです。

さらに、欧米の公共交通を調べてみてビックリしたことは、車社会で公共交通を民間だけに任せきった先進国は日本だけであったという事実でした。最も働き盛りの社会人は、自らマイカーを持ち、公共交通は、交通弱者である18歳未満と車を運転できなくなる高齢者になったときか、雨や悪天候のときしか使わない乗り物になってしまっているということでした。

しかし、公共交通の使命は、まさに交通弱者に自由な移動を保証する大事な社会インフラであり、ヨーロッパ諸国では国民の足を確保するために交通権を認める法律を作り、公共交通を公設民営などの施策で、官の役割と民の役割をキチンと果たす体制が出来ていたのです。人生の出発点である子供や学生時代と、高齢になって車の運転が出来なくなった時代と、人生で二度必ずお世話になる交通手段なのです。

一方日本は、構造問題の認識がなく、補助金制度の縮小で、儲からない公共交通は縮小すればよい、退出自由というミスリードをしてしまったのです。 これは大変と、両備バスと岡山電気軌道の役員と組合の幹部には、「今後事業の存廃まで考えなくてはいけない局面も考えられ、社長一存で決める訳にはいかない。全ての情報を知らせて労使で間違いない舵取りをしなくてはならない」と伝えました。

そして、公共交通の利用を進めるシンポジウムの実施や、県民会議を作っていただいて、社会運動として進める一方、企業努力としてお得な定期や割引制度やパーク&ライドの企画、パリを彷彿する広告付で無料設置してくれるバスシェルターの日本で初めての誘致成功など、考えられる限りの対応をしました。 簡易設置型バス時刻表照明装置「時刻表見えルン♪」やウイルス除去装置の開発など独自の開発も進めました。

また「歩いて楽しいまちづくり」運動を推進して、21世紀型のLRT「MOMO」の投入で日本鉄道賞をいただき、中心市街地活性化に岡山県のランドマークとなる高層マンション「グレースタワー」や岡山市立出石小学校跡地開発事業「おかやまインターパークス」などで、元気のない岡山市中心部の活性化対策を実施しました。

また永年、不毛な競争をしていた中鉄バスとの共同運行による一本化の努力を進めました。 しかし懸念していたように、規制緩和で、全国の地方のバス会社や鉄道が倒産、事業縮小の嵐となりました。もちろん観光バスもタクシーも供給過剰になって、全国的に利益を生まない事業になってしまいました。

そのうち、元気に問題解決している両備グループの企業努力が、むしろ県外で認められ、多くの公共交通の新設や再生などのご相談が来るようになりました。 中部国際空港の開設で、海上アクセスづくりに困難を極めていた津市からの要請で、公設民営の方法で津エアポートラインを開設しました。 この成功したスキームで、和歌山電鉄貴志川線の再生のスキームをつくりました。公設民営の方法ですが、経営は三セクでなく単独資本で経営責任を明確化し、社内の運営委員会によりお客様目線で経営するというスキームが十分機能し、三セクでの地域交通の再生の失敗について問題解決の糸口を示しました。 この成功を事例に公有民営の法律が成立しました。

また中国バスで補助金政策の副作用を証明でき、補助金政策に経営努力のインセンティブが導入されました。 しかし、公共交通の構造問題の解決に190億円強の国家予算では如何ともしがたく、早晩地域の公共交通は薄皮を剥がすように衰退し、そのうち地域には子供も高齢者も移動も出来ず、生活もできない事態が憂慮されました。

それで国民に等しく移動の自由を認める交通権を認めた交通基本法の成立を願ってエコ公共交通大国という国家プロジェクトを提唱し、その具体的事例として岡山市の交通大変革である「エコ公共交通大国おかやま構想」を提言しました。これが最後のチャンスであり、岡山市から全国の地域の公共交通での活性化を促して、100年の国家ビジョンを間違わないようにしていきたいと思います。

西大寺鉄道から両備バスへと移った時代と異なり、次に変わる公共交通は無いのです。儲からないからと止めてしまうのは簡単ですが、もうそれでは二度と公共交通は復活できません。両備グループをここまで発展させ、社会が評価するブランドにしてくれたのは、この公共交通であり観光手段であったバスであり、電車だったのです。この公共交通を如何に次代に残すかが、我々両備グループの過去への感謝であり、ネクスト100年なのです。

第二の問題は企業努力とは別に、グループの全ての利益でも穴埋めできない巨額の赤字を生み出す厚生年金の代行部分の解決、年金問題の研究でした。この厚生年金基金を解散していなかったら、いくら企業が努力しても両備グループは赤字グループになってしまい、100周年どころではなくなってしまうところでしたが、問題提起をしたら、賢明な労使で早期に解決できました。

また、将来の問題になる両備バス健康保険組合も解散し、健康への予防的対応として両備健康づくりセンターを創設しました。病気になってからの保険から、病気にならない運動への転換に資金を振り向けることができました。全国でもいち早い35歳人間ドックの対応や、両備健康塾でメタボ対策推進により大きな効果を出しています。そして資金の余力で両備ハッピーライフプロジェクトを展開し、社員のみなさんの総合的福祉と、グループシナジーの一石二鳥を進めています。

第三の問題は、2021年まで続くと私が分析した経済構造不況への対応です。如何に企業体質を強くして、ネクスト100年への展望を作るかです。 両備グループの企業が健全に、みな利益をあげながら、自主自立で経営できる企業風土をつくった信託経営は、今後も両備の要ですが、綻びも出てきました。グループの総合力が発揮できず、手堅すぎて小さく纏まってしまうこと、人・物・金・情報という経営資源が偏在し、有効活用出来ていないことなどの問題です。また、グループで統一しておかなければならない基準や規則などもバラバラで、これを放っておくと違う企業風土が生まれてしまう懸念がありました。

そこでグループに横断的に横串を入れるために、総務、人事、財務、安全管理、情報管理とCSの各委員会を設立して大きな成果を出しています。また、両備グループが健全に経営されているかの指導とチェックをする両備グループ監査本部を設けて、こちらも経営の問題解決に大きな効果を出しています。

また、今まで両備グループでの企業内競争だけだったものを、競争と連携を図るためにグループ内にクラスター(葡萄の房のように塊が集まって一つの房を形成する)として機能するグループ内グループ化を計りました。情報、路線バス、トランスポート、フェリー、タクシーなどのグループ化で、その内部の人事異動はグループ長の権限にして、人材の交流を図っています。

ネクスト100年に一番大事なのは、グループの要となる企業理念の明確化です。経営理念は、分かっているようで分かっていないことが幹部や社員の教育をして分かったので、グループ発展を徹底的に分析してみました。結果、両備グループは、創設者松田与三郎翁の最も大事にしていた「忠恕」の理念を再発見できました。それが企業哲学に優れた3代目の社長であった松田基さんに受け継がれていったのではないかと思われました。

両備グループを大きく発展できたのは、「忠恕」の理念で、社員を大事にし、リストラせずに人材の活用をしたからです。もし、安易にリストラをして、ラッキョの皮むきばかりしていたら、今は構造不況の数社だけのグループに終わっていたでしょう。社員を大事にする「忠恕」が実は両備グループの発展のキーになっているのです。 この「忠恕」=「真心からの思いやり」を3つに展開して経営方針とし、社会へ思いやりとして「社会正義」、お客様への思いやりとして「お客様第一」、社員への思いやりとして「社員の幸せ」としました。

特に両備グループの特色の「社員の幸せ」は、社員の業績アップの方程式である「健康×能力×やる気=社員の幸せ」です。両備健康センターでの健康の自己管理教育、両備教育センターをはじめ両備大学(経営管理基礎講座)や両備大学院と言われるJB制度などのコーポレートユニバーシティでの能力アップと、職場の適切な労務管理でやる気の確保を図っています。両備グループの「社員の幸せ」は、甘えた社員を作るのではなく、自らの努力と自己管理、健康維持と能力開発で、いつもやる気の社員を育てることです。一生他人に迷惑をかけずに、自らの努力で幸せを掴み取る人材の養成を目指しているのです。これが能力的安心雇用の本来の意味です。努力をしない、組織にぶら下がって、仲間の努力に乗っかっているだけの社員は、20代、30代でも定年を迎えてしまうという厳しさが思いやりの背景にあり、素晴らしい人材に鍛えあげることこそが実は本当の社員への思いやりなのです。

これらの理念と経営方針に加えて経営テーマとして「安全・安心・エコで健康」を定め、植物工場「やさい蔵」やLEDや太陽光発電への取り組み、ウイルス対策など独自の開発を進めています。

また、赤字事業の改善を進めるとともに、両備グループの運輸交通部門を強い体質の核企業に変革するために両備ホールディングスの創設をしました。今後伸びゆく首都圏をキャッチアップする東京事務所を開設して、将来の発展の布石としました。 お陰様で両備ホールディングスは、お客様の信頼と安心感を作り出せ、大手さんとの対等のコラボレーションが出来るようになりました。

100周年の記念事業は実はこの3つの問題解決でネクスト100年を臨む体制づくりなのです。特に公共交通の再生への法整備では、地方の一企業が、また一社長が考えたことが、ここまで出来るとは思いませんでした。まさに時代が後押しをしてくださり、多くの仲間の協力と支援があったからこそ、ここまで来られたのです。まさに本番はこれからです。

感謝だけで終わらせずに、感謝を将来の安心感に変えて、社会にも、お客様にも、そしてイコール、パートナーの社員のみなさんとも安心して長いつきあいをしていただく企業力づくりが、まさに目指すところなのです。

目に見える100周年としては、

  1. 両輪100周年記念号とDVD やタイムカプセルの作成
  2. 2010年、西大寺会陽500周年の宝木2本(双宝木(もろしんぎ))の祝い主の光栄
  3. 西大寺鉄道型「さいバス」と、未来型バスの創作
  4. 岡電の「MOMO」の二代目の投入
  5. 金甲山の展望台としての改修と、京山の追尾型集光式太陽光発電研究とのコラボレーション
  6. 西大寺バスターミナルの改修と、西大寺鉄道気動車を整備
  7. 記念品として夢二版画製作
  8. 西大寺鉄道コッペルの模型(ミニ電車)を岡山高島屋屋上に投入
  9. 蒜山の塩釜ロッジの石彫公園の更なる充実

また、芸術・文化部門面での記念する事業は、

  1. 夢二生誕125年展覧会を2009年9月16日から高島屋(新宿・京都・岡山高島屋)で実施済み
  2. 両備グループ社員バンド「オルケスタ デ ブルースプリングス」の結成と、講談や落語やジャグリングなど、多芸な社員による手づくりの記念式典アトラクションの企画

さらに、社長個人としての社会貢献運動としては、

  1. 岡山藩郡代津田永忠の事績の世界遺産登録に向けての取組み
    …世界遺産への申請済み、閑谷学校が教育遺産で再挑戦
  2. 三朝温泉ラドン治療の確立と温泉活性化
    …NPOを設立し、活動中
  3. 旧サンピア倉敷スケートリンク存続運動をして、無償で存続を図ることで地元のフィギュアスケート選手の夢と、買ってくださった加計学園さんの西日本の中京大学としての将来の可能性を創出

他に、グループ各社の取り組む100周年記念自主プログラムがどんどん創られていくと思います。
2011年の創立記念日まで前後2年間の周年事業で、ネクスト100年の基盤造りをしっかり図ります。

ネクスト100年に向けての発展の鍵は、

1.両備グループ「3つのコア」のコラボレーションで新事業、新産業の創出を図る。

例えば、

「運輸・観光関連部門」

・・・「運ぶ」をもっと便利に進化させる最先端の交通環境システムへの取り組み

「情報関連部門」

・・・最新の情報技術を駆使した各種情報システムの構築とすぐれたサービスの提供

「生活関連部門」

・・・ 都市環境やバリアフリーに配慮した快適で豊かな岡山の街づくり

等々。

今後も、これら3つの部門(コア)を有機的に組み合わせて地域社会の発展に貢献していきます。

2.チェンジ・チャレンジ・コンペティションを常に意識して、

「運輸・観光関連部門」
これまでの100年を支えた「両備グループの基盤」としてのチェンジ・チャレンジ・コンペティション

「情報関連部門」
両備グループ成長の核としてのチェンジ・チャレンジ・コンペティション

「生活関連部門」
両備グループ新事業創造の核としてのチェンジ・ チャレンジ・コンペティション

を図ります。

そして、東南アジアをも視野に入れて、全国企業として大きな飛躍をするように舵取りをします!!!

ネクスト100年、
頑張ろう!
頑張ろう!
頑張ろう!

両備グループ

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