両備グループ 代表・CEO
小嶋光信
両備グループの2代目社長の松田壮三郎さんが、旧閑谷学校の出身だったこともあり、松田基さんに次いで私も閑谷学校の顕彰保存会の理事をしています。また閑谷学校を造った津田永忠の顕彰会を主宰していることもあり、ことのほか閑谷学校を岡山県の文化遺産として大事に思っています。
この春、東日本大震災後にあった理事会で、果たしてこのような時期にライトアップをすることが良いことか、電力事情も福島原発事故で不如意であるし、ライトアップのコストも財政上も圧迫しているので、取りやめようという空気になりました。当時は、日本中大震災に被災された方々への哀悼の気持ちと、福島第一原発事故の電力への不安などで、全てのイベントなどが自粛ムード一杯でした。
しかし、日本中が暗くなり、経済の復興に支障をきたすことが、実は最も被災地の皆さんへの復興を妨げることになるし、ましてや地域活動に永年取り組んできた私の経験から、一度止めた地域イベントは復活が難しいことを知っていたので、今年も催行するように意見を申し上げました。皆さんも、何とかしたいという気分で、催行するか保留のような状態で散会になりました。
さて、知行合一で、「良いと思ったことは必ず実行する」のが、津田永忠さんの門下生の取るべき行動なので、帰ってすぐにLEDを扱う両備商事の環境事業責任者に検討を依頼しました。国宝も含む施設の、それも櫂の木の紅葉のライトアップという文化的活動は、全く未知の世界で、ご協力のメーカーさんや技術者も含めて困惑しましたが、携わった方々の善意の一念で、全てを克服して、(実はLEDにて、紅葉の赤や、黄色を色鮮やかに照らす技術は、未だ開発されていなかったのです)この11月5日のライトアップの成功につながりました。まさしく、陽明学の津田永忠さんの教えの通り、やるという気持ちが、不可能かと思える技術の壁を超えたのです。携わったそれぞれのリーダーの皆さんに心から感謝です。
工事費は、数々のご協力で毎年の費用の3分の2程度に軽減され、そして電力使用は約8分の1という優れものです。素晴らしいのは、紫外線がほとんど出ませんから、国宝などの文化財にはうってつけです。
うれし涙の雨のライトアップになりましたが、閑谷学校という世界で初めて庶民に開かれた学校で、約340年もの間現存する国宝と櫂の木のライトアップを目の当たりにして、素晴らしい夜景にしばし酔いしれました。