Message代表メッセージ

2012.07.07

信楽高原鉄道苦難の25周年にエール! – 狸の信楽焼き駅長と甲賀「忍たま」で夢ある再生を –

両備グループ代表兼CEO
小嶋光信

信楽高原鉄道の25周年記念講演を頼まれて、「たま駅長にみる ローカル線の再生」という演題で約一時間講演をしてきました。その時のレジュメをPDFでつけておきますのでご覧ください。
>>レジュメPDFダウンロード

皆さん大変熱心に聞いてくださり、また甲賀市の中嶋市長も最後までお聞きいただいて恐縮しています。それほど信楽地域の皆さんや甲賀市民にとって大事な鉄道線であるということを、話していてヒシヒシと感じました。

21年前の信楽高原鉄道の悲惨な大事故を今も重く背負っての25周年ですから、心から「おめでとう!」とは申し上げられずに、「25年大変ご苦労様でした! しかし、当時の悲惨な事故を風化させずに、しっかり今後日本一安全な鉄道をつくりあげること、地域の交通弱者のみなさんの足をしっかり守ること、鉄道を地域活性化の一つのツールとしてしっかり地域に貢献することで、その大事故の償いにして欲しい」と敢えて申し上げました。

私は年間20~30回、業務の合間を縫って地域公共交通の根本問題の理解と維持発展のために講演をしています。この一年くらいは主に交通基本法の成立に向けて、地域のみなさんやお困りの地方行政が国会に向けて本当の声を出していただくことを願って話をしていますが、それらの講演のことを「小嶋光信代表メッセージ」に書くことはありませんでした。

しかし、この信楽高原鉄道での講演は、これから公有民営化にむけて大変革する大切な時期であり、敢えて書くことにしました。ご承知のように鉄道の公有民営化が出来るようになったのは、和歌山電鐵貴志川線の再生で私が提案した「公設民営」というスキームによる再生の効果を高く評価していただけたことが一つの要因になっているからですが、その公有民営化の第一号が若桜鉄道であり、第二号がこの信楽高原鉄道になるかも知れないからです。

ところが公有民営化でも、民営の部分の経営は黒字を維持しなくてはならず、現在信楽高原鉄道の年間50万人の輸送人員では厳しいでしょう。現状では公有民託がベストスキームだと思われます。

しかし、この鉄道は、

  1. 冬場に道路が凍結して、バス便の年間維持は困難であること。
  2. 従って、バス便が並行してないこと。

などから、信楽のみなさんにとって陸の孤島にならないための、大事な交通手段なのです。今お話しすると不可能と思われるかもしれませんが、少なくとも70~80万人、欲をいえば100万人構想を目指すくらいの気概が要ります。

そのためには、

1. 1時間に1本の鉄道ではお客様の維持は難しくジリ貧になるので、通学、通勤時間帯は20分に1本の密度が必要です。昼間も少なくとも30分に1本くらいなければお客様は待ってくれません。

2. その路線数を維持するためには、

ア)生活路線の利便性を高めるために、貴生川から水口までの乗り入れなど、近江鉄道とのコラボが必要でしょう。当初はリレー方式で、「リレー水口駅行」などの表示で、スムースな乗り換えの仕組みにより利便性をあげていくことも一考です。

イ)JR草津線で草津にシームレスに繋がることが、生活利便や観光客誘致に必須でしょう。直ぐに乗り入れやJRとの連携は難しいでしょうから、両線の発着を同じホームの向い側にして、乗り換えをシームレスにするような工夫が要ります。

ウ)観光客誘致が大きなポイントになりますが、信楽焼きとタヌキの焼き物と、甲賀の忍者というメジャーな2大観光資源があるので、

  • 大きな信楽の狸焼き物が信楽駅にもありますが、各駅に色んな狸焼き物駅長を造って、お出迎えと写真スポットやスタンプラリーを企画することが効果的でしょう。酒瓶の代わりに安全標識を持たせて、日本一安全な鉄道への意欲を表わすのは如何でしょう。信楽駅には、本物の子狸を助役に任命して、愛嬌を振りまいてもらえば最高です。
  • 甲賀の忍者は、伊賀忍者との交流などが既にされていますが、漫画の『忍たま乱太郎』略して「忍たま」の故郷に造ることが、一番子供たちの魅力になり、町中に信楽焼きの「忍たま」が狸と共に、ストーリー性を創るでしょう。

エ)毎月一回、第三土日(祝)などに「信楽大陶器市」や、年に一回「しがらき狸祭り」などの定期的な楽しい催しづくりが必要です。定期的なら企画物の観光資源になります。紫香楽宮跡や玉桂寺も大切な文化的観光資源です。

再生は楽しくやらないと、市民や観光客がついてきてくれません。そのためにも早く大事故のイメージから、それを風化させない意味でも、それを上回るもっと楽しい企画が必要です。

25周年とこの新たな公有民営化を記念して、また当時の信楽町と甲賀市が合併したこともあり、思い切って「信楽甲賀鉄道」に名称を変更して、信楽地域と甲賀市民あげての鉄道だというようにイメージチェンジを図ることが大事かもしれません。

余計なことを言うなとお叱りを頂戴しそうですが、ザッと見ての私の信楽高原鉄道の再建案です。ご参考にしていただければ幸いです。

この再生のためにも、交通基本法の早期成立が必須ですと訴えました。
国会では与野党の思惑はあるでしょうが、国民の、特に交通弱者と言われる通学やご高齢者の地域の足の確保のために必要なこの法案は、まず通してからにしていただきたいと伏してお願いします!

岡山電気軌道株式会社
和歌山電鐵株式会社

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