両備安全マネジメント委員会キックオフ!

両備グループ代表兼CEO
小嶋光信

昭和50年代の初めに、SSP-UP運動を立ち上げて、「安全(Safety)があってサービス(Service)があり、安全、サービスがあってこその生産性(Productivity)である」という思想を基に安全・サービス・生産性運動を展開し、この約10年は両備グループ安全管理委員会として全グループ運動として安全に取り組んできました。

現在の安全レベルは、鉄軌道、バス、タクシー、トラックとフェリー部門も、業界比較からすれば、安全レベルは倍以上高いと言え、特に再建した中国バスは、重大事故0(ゼロ)の上、10万キロ当たりの有責事故率が一時は0.03件を切るという、私の記憶では日本一ともいえる水準を達成しました。

しかし、安全宣言で目指した「日本一安全な運輸企業」にはまだまだグループ全体では十分とは言えませんし、仮に日本一になっても砂上の楼閣では仕方ありません。

特に交通運輸業界は、規制緩和で平均賃金水準が業界全体で20~30%も下がってしまい、人材の確保と人材の質に問題が大きく出てきている上、ヒューマンエラーとマンネリという無限の課題と、人手不足から乗務員の高齢化という新たな問題まで、安全を今後確保するのに十分な対策が必要になってきています。

特に高齢化の問題は、乗務社員自体が高齢化している問題と、ハンドルを握る一般の高齢者による危ない運転も増えてきて、要注意です。
国土交通省は、平成17年度に全国的にヒューマンエラーによる重大事故が多発したことを機に、平成18年度から運輸安全マネジメント制度を採り入れました。

この制度は、

  1. 鉄道・自動車・海運・航空の運輸事業者が、経営トップから現場まで一丸となって、いわゆる「PDCAサイクル」の考え方を取り入れた形で安全管理体制を構築し、その継続的取組みを行う
  2. 事業者が構築した安全管理体制を国が評価する「運輸安全マネジメント評価」を実施する

ことにより、運輸事業者の安全風土の構築、安全意識の浸透を図るというものです。

運輸安全マネジメント評価において、国は、社長、副社長、取締役といった経営管理部門から、安全管理体制等について直接インタビューを行い、関係する書類を確認します。いわゆる指導・処分といった性格ではなく、安全確保のための助言等を中心に事業者との対話を重視し、「安全管理規程に係るガイドライン」に基づき評価し、その取組みをより一層向上させるため、改善方策について助言等を行います。

この制度は、いわゆるPDCA(プラン・ドウ・チェック・アクション)サイクルによる取組みの向上を図るもので、保安監査と車の両輪となって実施することにより、運輸のより一層の安全の確保が図られていることが特徴です。

この運輸安全マネジメントは、経営トップから現場に至るまで全社的な取り組みで、PDCAのサイクルを回すことによって、安全を確保することが重要です。事故が起こったら、起こったことを悔やんでみたり、怒ってみたりしても今後の解決にはならないので、PDCAのサイクルを回しながら、永遠に続く“なぜ”なぜ“の疑問を粘り強く回すことです。

平成24年度は、SSP-UP運動のブラシュアップとして全社的な取り組みを計りましたが、平成25年度は「両備グループ安全マネジメント委員会」として、労使参加に改組して、より現場に密着した効果的な活動を展開し、目標である「日本一の運輸企業」を目指したいと思います。

  1. 自己管理するように現場管理する
    両備グループの現場管理と労務管理は、社員、乗務社員一人一人が自己管理できるように管理することが重要です。安全も社員自らが管理するように意識改革しましょう。
  2. 体験型で効果ある教育をしましょう
    座って教育して安全の確保が出来るのなら、もう既に完結しているほど教育しています。体で覚えるまで訓練することが重要で、頭で覚えただけでは効果は上がりません。両備グループでは、自動車練習用コースでの岩木部長の運転訓練や、蛸壺コースからの脱出など色々工夫していますが、ユーチューブのゴリラなども、面白い取り組みになると思います。自ら気づきを得るように工夫してください。
  3. 大岡裁きを取り入れましょう
    管理型の社会になると、ともすれば日本的完璧主義が強くなりすぎて、一罰百戒型に陥る危険性があります。
    この運輸安全マネジメントでも、10年も20年も無事故無違反で頑張ってきた乗務社員が、たった一回ミラーをこすった、バンパーをぶつけたなどの軽微な事故でも、厳しい処分や教育センターでの教育などに行かせてしまうと、悪いと思う以上に、これだけ一生懸命やってもたった一回の事故でこんなに叩かれるのかと、反会社や管理職の逆恨みや、悪い労働運動に加わったり、会社を辞めたりという、反発になってしまう嫌いがあります。
    優良な乗務員がポカミスで犯した軽微事故などでは、情状酌量して、執行猶予にするなど、大岡裁きをCOOや職場長の段階でするように工夫してください。ただ、だんだんルーズになってはいけませんから、点数制などで基準を明確にしておいてください。この方が余程再発防止になります。不思議と優良乗務社員が、教育を受けた後、腹が立ったのか、事故を再発するケースがままあります。

両備グループは、労使でSSP-UP運動を取り組むことが特徴であり、この委員会もその体制に強化します。

安全は、これをやれば十分ということは無く、PDCAを回したから解決するという単純な問題ではありませんが、科学的に、分析的にPDCAを回して、常に安全に対する飽くなき取り組みをすることが大事で、この積み重ねが目標への重要な道程であると思っています。

今回のキックオフには国土交通省の石川主任運輸安全調査官と中国運輸局のご担当をお迎えして、労使参加で4時間を超える講演と実習を受けることで、このキックオフとします。

石川さんの軽妙で分かりやすい説明と、ふんだんに一緒に考えるという工夫をした講演には、大変感心させられましたし、きっと参加労使もやる気になったと思います。

 

20130807

2013.8.7

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