デザイン規範の制定- クリエイティブサポート部創設を記念して-

両備グループ代表兼CEO
小嶋光信

8月14日、デザイン・クリエイティブセンター神戸でクリエイティブサポート部創設のキックオフをしました。このセンターは「デザイン都市・神戸」のシンボルとして“創造と交流の拠点”をテーマに平成24年8月に誕生した神戸市の施設です。元々は神戸生糸検査所で、貴重な近代産業遺産ですから、趣がまさにデザインそのものです。チャンスがあれば是非一度行ってみてください。

自動車、家電、アパレルなど製造業や建築業ならデザイン部門は珍しくはありませんが、交通運輸や情報や生活関連を主たる事業とする会社で、それも地方を本拠地にしている企業でデザイン部門を神戸に持っているところは少ないでしょう。それほど両備グループはデザインを大事にしているということなのです。

私が岡山に帰ってきた昭和50年代前後では、地方にはデザインを気楽にお願いすることや、我々のような電車、船舶やバスやタクシーという輸送手段という特殊な専門分野のデザイナーはいませんでした。しかし、夢のあるデザインがお客様を創ると信じて、仕方なく自分の感性でデザインをしていました。タクシーのイエローキャブ、旧マイクロツアーのノーピラー風・スイングドアの中型サロンバス(このコンセプトは後の三菱ふそうのエアロバスに通じました)、360度見渡せるワンボックス高速艇や客船フェリーのニューオリンピアに御座船、そして港湾施設・新岡山港「ピア4」等は、私が基本コンセプトや、外観設計や内装デザインをした作品群です。全くのド素人でしたが、こんな船に乗ってみたい、こんなバスやタクシーなら楽しいというお客様目線で開発しました。しかし、両備グループも多岐にわたり、また大きくなり、私も実際にデザインを自ら手掛けるには、時間の捻出や更に能力アップもと感じていたちょうどその時に水戸岡鋭治さんが現れて、LRT「MOMO(モモ)」のデザインをボランティアでしてくだいました。

MOMOの完成披露パーティーの後、MOMOに一緒に乗って岡山駅に向かっている途中で、水戸岡さんが「両備はケチだと聞いていますが、ペンキ一缶あればまちづくりが出来ます。一緒に如何ですか?」と言われました。「二缶くらいは買えますよ!」と意気投合して、まずは岡山電気軌道の物置小屋と古い標識をラクダのメンバーや社員が塗って、見本が出来ました。本当に二缶で素晴らしい光景になりました。

MOMOをタダでデザインしてくださった心意気に感激して、以来水戸岡さんに両備グループのデザイン顧問に就任していただいて、和歌山電鐵の「いちご電車」「おもちゃ電車」や「たま電車」などのヒット作品だけでなく、旅客船フェリーの「おりんぴあどりーむ」や数多くのバスや電車や建物に至るまでのデザイン群が生まれてきました。

お陰様で大手のメーカーさんも鉄道会社さんも、デザイン性とアイデアに一目おいていただける両備グループに育ってきました。
水戸岡さんも鯉の滝登りの如く、日本一の鉄道デザイナーだけではなく、デザイン界のカリスマになられたので、両備グループの細々したデザインをお願いするには気が引けるなと思っていた時に、松田社長、松田専務の人脈など、ひょんないきさつからデザインのプロが中心になって両備ホールディングスにクリエイティブサポート部が生まれることになりました。

「デザインが価値を創り、その価値が利益を造る」ということを両備グループ全社で再認識することが大事です。クリエイティブの皆さんは高度な専門職であり芸術家ですから、みんな一目おいて付き合ってください。

仕事をお願いするときに、時に下請けと勘違いする人がいますが、決してどんな仕事も上から目線でお願いしたりしないように留意してください。両備は忠恕の精神ですから、内外ともに商品の仕入れや仕事をサポートしてくださる皆さんは、大事なパートナーなのです。

今後の両備グループデザイン規範は、

  1. 事業遂行でデザインやアイデアが事業価値を創るということをしっかり認識し、企業イメージがアップするように心がけること。
  2. デザインについて大きな事業案件は、水戸岡先生へ依頼、もしくは顧問としての意見を伺い、その他の案件はクリエイティブサポート部にお願いすること。
  3. お願いするときは、事前にデザインの摺合せをクリエイティブサポート部として、その結果を必ず会長、社長、松田専務、COOに報告し承諾を得ること(メールで可)。
    但し、企業イメージを損なうような、グループの整合性のないデザインは禁物です。
  4. 合せの後は、思いつきで折角プロが創ったデザインを現場で安易にコロコロ変えるsことのないよう事前に良くコミュニケーションを取り、イメージを共有してからデザイン化を図ること。
  5. 出来上がったデザインは3のように承諾を受けること。

とします。

デザインは価値判断で、100人が100人全く異なるセンスや価値観を持っています。それぞれが勝手に自分の趣味でデザインを決めてしまうと、千差万別なとりとめの付かない企業イメージになってしまうのです。良くこの規範を理解して、デザインで価値を生み出す経営をしてください。

以上

両備グループ