両備グループ代表兼CEO
小嶋光信
日本経済が円高になって久しいが、低開発国の賃金格差が非常に大きくなり、国内企業の人件費削減の宿命から、多様な雇用形態が生まれてきた。
例えば、同じ非正規社員でも、数時間から数日の教育訓練で実務に付ける単純労働から、業務内容としては正規社員と同じ仕事をする社員まで、実に多様な雇用形態が現出している。
従って、正規社員のみならず非正規社員まで、社員教育が必要なことは当然のことながら、どこの会社も正規社員には1カ月以上も企業理念から実務教育まで、時間と費用をかけて教育しているのに対し、非正規社員の場合は、全く実務のみの教育訓練で、それも短時間の場合が多い。
ところが、飲食業や物販業の場合、多くは店頭の接客にこのアルバイト、パート、期間社員や派遣社員が当たっていることが多い。お客様は神様だが、その一番大事なところに教育訓練が十分にされていない非正規社員が当たっているということである。しかし、お客様からみれば全て同じ社員であり、その会社を代表して接客しているとみなされる。アルバイトだから、パートだから少々のミスや不作法や知識不足は許してやろうという気にはならない。そんなことをおくびにも見せてお客様に悟られたら、お客様の機嫌は最悪になり、解決できる事柄もこじれることは間違いない。
両備グループの正規社員には、経営理念である「忠恕=真心からの思いやり」を就業規則に入れて、経営方針である「社会正義」「お客様第一」「社員の幸せ」をしっかり教育し、思いやりの持てない者は両備の社員に非ずとまで理解させ、労使でコミットメントしているが、アルバイト、パートなどの非正規社員には、そのような会社と社員とのコミットメントをしていないのが実状だ。
昔は敢えて教育訓練で倫理的、道徳的な問題や公序良俗に反する問題をしっかり理解させなくても、日本人の常識として共通認識があったが、昨今の教育では、これらの問題をしっかり教育していないために、常識が千差万別である。これらのことからお客様の期待とのズレが生じてきており、企業の社会的責任や、お客様の求めるレベルは極めて高くなっている反面、モラルレベルは下がっている。安いからしょうがない、この値段ならこんな商品やサービスだといって許してはくれない。ましてや両備グループへのお客様の期待は年々大きくなり、山は高くなるほど風当たりが強いと言われるように、今や少しでもレベルが下がれば「両備さんともあろうものが・・・」「他の企業なら仕方がないが、両備さんまで・・・」と言われる。
従って、各社のアルバイト、パート、期間社員などの雇用の際も、本人のためにも、お客様の期待に答えられる社員となるよう、また、思わぬことで人生を踏み外す事のないよう、両備グループの一員となる貴重な人材として、下記を徹底する必要がある。
- 企業理念の「忠恕=真心からの思いやり」を守るということを、採用の条件の一つとすること。
- 経営方針をしっかり説明すること。
「社会正義」・・・決して法令違反や、社会的に悪いことをしない。 仮にそのような指示をされるようなことがあれば、してはならないばかりでなく、必ず人事に連絡すること。 - 短期間の入れ替わりになっても、教育を受けたことを確認して現場に配置すること。その確認書が無ければ雇用にならない仕組みを作ること。
- 非正規社員であっても、全て同じ社員として接し、朝礼や職場での実務上必要な会議に出席させ、意見を自由に発言してもらうこと。
- 業務やサービスの仕方、お客様にしてはならない禁止事項などは、単に言葉で伝えるだけでは理解できないので、具体的事例や図解を盛り込んでしっかりしたマニュアルを作って教育、訓練をすること。
「お客様第一」・・・お客様のためを思って、商品の提供やサービスをする。悪いと知っていて勧めることなど絶対にしないこと。
「社員の幸せ」・・・みんなが仕事を通じて幸せになるように、思いやりを発揮すること。
など、各職場での事例も交えて分かりやすく教育すること。教育したら、それらを理解したかの確認としてサインをしてもらう。
以上のように、雇用形態を問わず、全て両備グループの大事な社員であり、戦力であることを理解して、人格や人間性を尊重して労務管理をしてください。