EST交通環境大賞受賞!!

両備グループ代表兼CEO
小嶋光信

「継続は力なり」と言いますが、1999年に両備グループの代表になって以来取り組んできた、「公共交通利用で“歩いて楽しいまちづくり”運動」などの地域公共交通の問題解決が、環境的に持続可能な交通(EST)への運動として評価され、民間企業として全国初の大賞(環境大臣賞)を受賞しました。

両備グループ代表に就任した時、2002年の規制緩和を前にして、それまで補助金をもらわずに生き延びてきた両備グループの鉄軌道や路線バスなどの公共交通も、マイカー社会に押されて毎年2~3%の利用客の減少が続き、100周年を迎える2010年には維持することが困難な赤字事業になるだろうと言う見通しでした。

その問題意識から、まず「岡山県公共交通利用を進める県民会議」という運動を進めたり、高齢者対象に「ことぶきパス」などのお得な定期券の開発や、パーク&バスライドの推進、フランスから無料のバスシェルターを岡山市内に導入したり、夜間でも時刻表が見えるLEDライトを開発したり、あらゆる利用促進と活性化の努力をしましたが、公共交通の活性化努力では利用の減少を緩和するぐらいの効果しかありませんでした。

そうしているうちに、公共交通そのものの活性化を目指すのではなく、公共交通はまちが活性化するためのツールであることが分かり、2002年のLRT「MOMO(モモ)」の投入、岡山市内のヘソともいえる柳川ロータリーに108メートルの高層マンション「グレースタワー」を建設するなど、「公共交通利用で“歩いて楽しいまちづくり”」をテーマに、空洞化する中心市街地を元気にするなどの数々の運動を展開しました。

また、全国初と言えるハイブリッドな電気バスの「SOLARVE(ソラビ)」や、自転車を搭載できる「SAIBUS(サイバス)」などの環境に優しい路線バスの開発も進めました。

実はマイカー社会と共生する公共交通が、高齢化社会を支え、環境に優しいだけでなく、歩くことで健康な市民を醸成し、中心市街地を元気にするのです。公共交通利用で歩くことが高齢化社会の問題である歩行困難や老人性認知症の発症を抑え、今後増大する福祉介護の費用増大を抑えるだけではなく、元気な高齢化社会を創造する大きなツールになるのです。

また、如何にしてヨーロッパは公共交通を維持しているのか、研究してビックリしました。何と地域公共交通を民間に任せきった先進国は日本だけであり、日本は公共交通のガラパゴスであることが分かりました。ヨーロッパは交通権という考えを中心に公設民営で公共交通の維持を図っていたのです。

公設民営や交通権という考えは、当初は社会主義的な思想だと揶揄されたりしましたが、津エアポートライン(三重県津市)で公設民営の効果を実証し、約70弱の赤字地方鉄道の多くは救う道が無いのではないかという状況の中、和歌山電鐵(和歌山県和歌山市)で超法規的な公設民営で再建して話題になったこと、労使紛争が絶えず倒れた中国バス(広島県福山市)の再生や、破綻を発表して僅か19日ですべての路線の営業を停止した井笠鉄道(岡山県笠岡市)などの緊急代替え輸送からの路線再建なども評価いただけたことに感謝しています。

これらの再建は、規制緩和のミスリードや補助金制度だけでは救えない地域公共交通の病巣を立証して、地域公共交通活性化・再生法から交通基本法を経て交通政策基本法に至る法制化のお役に立ったと思っています。

これら一連の企業努力を評価いただいたことに感謝するとともに、公共交通が環境に優しい総合福祉的交通であることの国民的理解を深め、両備グループが提案する「エコ公共交通大国」の推進にこれからも頑張りたいと思います。

▼参考資料
地域公共交通の再生と「まちづくり」歩いて楽しいまちづくり運動(PDFダウンロード)

20140221

両備グループ
地域公共交通総合研究所