(一財)地域公共交通総合研究所
代表理事 小嶋光信
第9回公共交通経営実態調査を2025年6月1日から30日の間に実施した。全国のバス事業、民営鉄道、旅客船業者の1,104件にアンケート調査を実施し、214件(前回182件)、回収率19.4%となり、前回より回答数が17%も増えたことが関心の高さをうかがわせる。
今回のアンケート調査から大きく変わった点は、今までは地方交通の路線維持や赤字経営をどうするかが中心だったが、今回は2024年問題で加速した運転士不足が地方のみならず全国に広がり、且つ大企業、中小企業を問わず公共交通業界全体の問題になったということだ。
日本全国で公共交通の人材不足が蔓延し、2023年度には乗合バスで2,500kmが路線廃止と2022年の1.5倍の規模となり、雪崩現象で全国の路線消滅が加速している。運転士不足の主因は平均年収より100万円~150万円低いとされる交通従事者の年収が2024年問題でさらに時間外手当の減少が懸念される。
他方には前向きなキャッシュレス化や自動運転やEV化やDXなどの動きが中堅や大手企業を中心に進展してきたが、ここにきて運転士不足という深刻な問題が立ちふさがり、地方から全国に路線維持が深刻化してきているといえる。
これらの公共交通を蝕む病巣は、制度改革を「強く必要」が4割に達し「やや必要」を加えると8割に達していることからも制度疲労によるものとの認識が拡大しているといえ、小手先の改革では解決できない問題となっている。
おりしも6月30日に運輸総合研究所が発表した「地域交通の革新案『緊急提言』」の「交通政策基本法に基づき、運送法などの法制度の革新」という抜本改革が必要という事態になっていると思われる。
政治混乱の時期ではあるが、QOL(生活の質)による生活を支える公共交通は、国民全般にかかわる問題であり政治的空白が許される問題ではない。早急な解決への取り組みが望まれる。






「地域交通制度の革新案 【緊急提言】 」
公表日 :2025年6月30日(月)