竹久夢二生誕130年記念事業:夢二とロートレック-東西のベル・エポックに生きた二人の偉才-

夢二郷土美術館 館長
小嶋光信

世界のミシュランに日本のロートレックと称された竹久夢二も今年生誕130年を迎えます。
夢二郷土美術館の歴代館長の大きな責務の一つが夢二芸術の伝導であり、この10年ごとの生誕記念展覧会の題材を如何に決めるかが一大事業なのです。

生誕120年の展示会では、門外不出とされていた竹久夢二伊香保記念館と初めてコラボして、夢二が愛した二つの故郷、即ち岡山と榛名山をテーマとした夢二の全てを皆様に見ていただけるよう、二つの美術館が所蔵する作品の競演が実現しました。
夢二郷土美術館は、夢二の肉筆画の大作などを中心に数多くの収蔵があり、竹久夢二伊香保記念館は、岩波書店の元役員の故・長田幹雄氏が集めた本の装幀や挿絵、デッサン、資料などを中心に所蔵されていて、2館の所蔵を合わせると詩人であり、画家であり、デザイナーであるマルチアーティストともいえる多彩な夢二の全体像が分かるのです。

では、生誕130年にはいかなる企画が相応しいか、大いに悩み考えた挙句、あのフランスのミシュランの日本版に、岡山の夢二郷土美術館が一つ星の美術館として掲載され、夢二が「日本のロートレック」として紹介されたことをヒントに、東西のベル・エポック(良き時代/美しき時代)に生きた夢二とロートレックを企画の中心としたら生誕130年に相応しい催しになるだろうと考えつきました。

モネやロートレックなどの印象派の画家たちは、1867年のパリ万国博覧会で、徳川幕府や薩摩藩や佐賀藩が出品した歌麿や写楽、北斎や広重という浮世絵などの日本画の自由な空間表現や鮮やかな色使い、線描画法といった描画技術に大きな衝撃を受け、フランスを中心にベル・エポックと言われる時代とともにジャポニスムが一大ムーブメントになっていきました。その時代に生き、共に浮世絵や版画などの日本の文化に大きな影響を受け、自らの作品に取り入れていったロートレックと夢二の対比を通じて、今回、大正ロマンの代表ともいえる夢二という芸術家を見つめなおしていこうと思っています。

そしてこの生誕130年記念の展覧会を通して日本人が最も好む西洋画としての印象派が日本の伝統的な芸術に影響されて生まれたという、日本の芸術に対する誇りを是非とも取り戻していただきたいと思います。

夢二の誕生日の9月16日をはさんで、高島屋さんの京都店、岡山店、日本橋店、横浜店の4店で順次夢二展を開催しますが、高島屋さんの幹部のアイデアで、今回、夢二画に出てくる夢二独創の着物や帯を、450年の歴史を誇る京友禅の老舗・千總さんが再現してくださいました。

初代館長の故・松田基さんが夢二を収集するきっかけになった『加茂川』、夢二中期の代表作『秋のいこい』、夢二自身が“ミス日本”と評して生涯手元から離さなかったという晩年の名作『立田姫』の着物と帯が見事に手書き友禅で再現され、流石、元禄から伝わる匠の技で、何とも言われぬ色とデザインの復活にアッと息をのみました。

素晴らしい着物とともに、それぞれに着映えがするモデルを選んでの記者発表は、本当に華やかで着物のショーと言っても良いほど見事なものでした。着物と帯の芸術性もさることながら、プロのモデルさんのお客様への訴求力を再認識しました。本当にモデルで着物が素晴らしく映えるのにはびっくりです。呉服の高島屋さんの力量が見事に活きていたと言えるでしょう。

この着物と帯は、9月11日~23日、岡山高島屋で開催される「生誕130年 竹久夢二展 ベル・エポックを生きた夢二とロートレック」で一般公開する予定です。

ぜひ展覧会で夢二とロートレックの作品とともに、夢二の着物と帯もお楽しみください。

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高島屋巡回展 全50日間開催
【会期・会場】 *9月16日が夢二の誕生日

2014年8月27日(水)~9月8日(月)13日間    京都髙島屋
2014年9月11日(木)~9月23日(火・祝)13日間  岡山髙島屋
2014年9月26日(金)~10月6日(月)11日間    日本橋髙島屋
2014年10月15日(水)~10月27日(月)13日間   横浜髙島屋 

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夢二郷土美術館