竹久夢二学会:鐸木道剛先生を偲ぶ

夢二郷土美術館

館長 小嶋光信

(竹久夢二学会 顧問)

良く「惜しい人を亡くした」といいますが、鐸木道剛先生は竹久夢二学会の創設時からの中心メンバーであり、学会としても「これから!」というときに会長をしていただいた高階秀爾先生とともに本当に惜しい人を亡くしたと思います。

心からご冥福をお祈りします。

鐸木先生と両備グループの関わりは古く、1980年代後半の両備檉園記念財団の研究助成へ「柳井原ハリストス正教会について その聖像(イコン)と沿革」との研究で応募され、採択されて以来のお付き合いです。その研究結果は当財団の『学術、文化、芸術、教育活動に関する研究論叢』(平成2年4月)に掲載されています。

私と岡山大学との関わりは岡山経済同友会の「企業と社会」委員長のときに、地元経営者を中心とする「ボランティアプロフェッサーとオープンカンパニー制度」による経済学部での経営特殊特講の講座を提案し、しばらく講義を受け持ったことから河野元学長から国立大学の法人化に向けた大学改革の委員会の委員に任命され、千葉元学長時代に経営担当理事、後にエグゼクティブアドバイザー(学長補佐)となったことから、大学内のことを理解するようになりました。当時の教官の評価は如何に論文を世に出しているか、どれくらい論文が引用されているかという研究教官の側面と、いかに学生の教育指導をしているかという教育教官の側面で評価されていましたが、鐸木先生はともに優秀で、幅広い研究を内外に発信されていました。特に岡山の地元の研究にも努力され、「陽明学からキリスト教へ:熊沢蕃山から夢二まで」等の実に面白い切り口の研究もされていました。

全国各地の高島屋で開催した夢二生誕130年の記念展覧会で帝京大学の岡部昌幸先生に企画・監修をしていただいたことから、岡部先生から絵画のみならずデザインから工芸に至るまで、まさにマルチアーティストの竹久夢二の研究は、今までの縦社会の学会には収まりきらない幅広いもので、是非「竹久夢二学会」を設立しましょう!という提案がありました。

夢二研究には欠くべからざる提案で、学会設立にあたりそれでは西の学会のコアメンバーをどうするかということで、是非「鐸木道剛」先生に学会の理事をお願いしようということになりました。

さて、学会の会長には誰がふさわしいかとなった際、鐸木先生が文化勲章受章者の高階秀爾先生の愛弟子であったこともあり会長を高階先生にお引き受けいただくことができました。

高階先生は美術のみならず各分野に素晴らしく精通されていてびっくりしましたが、大変、竹久夢二がお好きで、幅広いジャンルのマルチアーティストの夢二研究にはぴったりの方に会長をお引き受けいただけて感激しました。

生誕130年を契機に小嶋ひろみ館長代理が開設した夢二のフェイスブックへアメリカ・ロサンゼルスで親交のあった宮武東洋さんのお孫さんからご連絡が入り、夢二滞米中の幻の油彩画≪西海岸の裸婦≫が里帰りを果たし、またオランダのアムステルダムで、欧米で初めての夢二の展覧会が開かれるなど、夢二芸術の国際化の兆しが出てきた2016年に、夢二学会主催で夢二国際シンポジウムを鐸木先生が担当されて、ドイツ・シンガポール・韓国から専門家の方が参加されての記念すべき会となりました。

その後、岡山大学を退官されて、東北学院大学に移られましたが、昨年2月、まさかの訃報に接し、ただただ本当に惜しい研究者が早逝されたと慨嘆し、高階先生とともにあの世でも夢二をはじめ幅広い研究に没頭されているのではないだろうかと思いつつ、両先生のご人徳と研究を偲んでいます。

合掌 2025.3.16