両備グループ代表兼CEO
小嶋光信
あけましておめでとうございます!
今年もご家族共々ゆっくりお正月を過ごされたことと思います。
年末年始のお休みの間も勤務についてくださった皆さんには心から感謝です。
昨年は消費税増税前の駆け込み需要と、その後の反動の買い控えが長引き、売上げ面で大変苦労し、その上、円安による燃料高などのコストアップに見まわれて厳しい一年でした。その景気の変動に加えて、追い討ちをかけるように8月から10月まで土日祝と毎週のように襲ってきた台風と悪天候で、特に観光業・運輸業、百貨店などの商業部門にダメージが大きかった一年でもありました。
経済停滞の打破が期待されたアベノミクスも、行き過ぎた円安が燃料高や国内物価のインフレに悪影響が懸念されますし、長期金利の上昇が始まり、景気停滞と悪天候とコストアップのトリレンマの状況を呈してきました。スタグフレーションという景気停滞でのインフレの懸念も出てきました。
両備グループには3つの事業コアがあり、それぞれ良いところが悪いところを補って、全体としては堅調な業績を確保しています。社員の皆さんの日頃のご努力に心から感謝しています。
これからも経済・自然現象・国際情勢と様々な面で何が起こっても不思議でない状況ですが、お客様や社員の皆さんの幸せのために、全天候型の経営を目指して頑張ります。
業績は、景気や天気ではなく元気が一番なのです。
昨年の素晴らしい活動
- EST交通環境大賞受賞
- 御座船「安宅丸」を日本のフラグシップに
- 両備不動産東京カンパニーへの改組と業績の向上
- 井笠バスカンパニー「美の浜バスセンター」完成
- オーキドホテルがリニューアル
- 夢二生誕130年記念事業/KURO×夢二電車が岡電に登場、走るミニミュージアム・夢二バスが東京のニッコー観光バスに登場
- 夢二生誕130年の大きな反響と夢二学会の創設
- 両備ガーデンに本格的手打ち蕎麦「無哀荘 真金堂」が登場
- ツーリズムEXPOジャパン2014への出展
- 和歌山電鐵の鉄道施設が国の登録有形文化財に、たま駅長とニタマ駅長が貴志川線の未来をつくる会に感謝状
- 両備檉園記念財団から髙橋大輔選手に「第1回スポーツ振興奨励大賞」を授与
- 女性管理職・経営職の養成講座スタート
- ICOCAたまルンカードの発売
- GLPの総社第2弾の建設開始
- 新業態スーパー「パークス福成店」開店
- (一財)地域公共交通総合研究所の盛況/コンサル業務が海上交通2件、鉄道2件、県単位や広域での講演依頼が多数で全国各地の地域交通の問題解決に貢献中
などなど活発な一年でした。
今年の経営方針
昨年は「忠恕の配慮 本気!根気!やる気! ―日本一心豊かな企業になろう!―」を経営方針として活動しました。「すぐやる・必ずやる・出来るまでやる」という行動規範とともに、「本気!根気!やる気!」も皆さんの心に響いたものと思っています。
今年の経営方針は「右手に忠恕、左手に算盤 -ムリ・ムダ・ムラを無くそう!-」です。
仕事をするときは、まず「忠恕=真心からの思いやり」で考えて、その上で算盤(そろばん)を弾くことが大事です。
なぜ電卓ではなく、わざと古めかしい「算盤」という漢字を使ったかというと、電卓は考えずに叩いてしまうので心の通わない数字になってしまうからです。
つまり、算盤も「忠恕」を忘れず、心を込めて弾けということです。
事業の場合、「忠恕」だけで算盤を持たねばボランティアになってしまいます。また、利き手で算盤を持つと思いやりより計算高さが効き過ぎます。お互い納得のいく商売であることが大事です。利益はお客様の喜びのバロメーターなのです。良い仕事をしてお客様に喜んでいただけば利益は大きく、利益がないということはお客様に支持されていないということです。赤字の事業は仕組みが悪いか、お客様の心を掴んでいない仕事なのです。
算盤を持つときは、まず安い・高いと論じる前にやっていることの「ムリ・ムダ・ムラ」を徹底的に無くしましょう。
大企業並の経営力
ネクスト100年を創るため、「大企業並の経営力を中小企業のコストと効率で創る」を目的にこの5カ年を運営し、予想以上に進捗することが出来ました。
改革・改善が出来た企業、まだ途上の企業と個別の成果はマダラ模様ですが、不動産や企業拡大などの積極的な投資が活きて、全体としては目標をキャッチアップ出来ていると言えるでしょう。しかし、従来からの運輸交通観光関連部門や生活関連部門の一部の事業は、一人当たり生産性10%アップに、更なる改革・改善が必要です。
一人当たり生産性アップの活動には岡山三菱ふそう自動車販売の地道な取り組みが光っていました。
1.業績目標のグループ年商1300億円、新しい企業や東京の不動産などが加わったことで経常利益50億円は一年前倒しで達成しました。
2.一人一人が、自分の将来のキャリアアップに向けて、専門化、多能工化に向けての努力を目標にしました。特に総合職の能力アップは3カ年計画の教育による総合職や管理職などの能力主義化で、昨年末に本試験が終わり、今年の3月いっぱいかけて普段の働きぶりを第一に、試験の成績と面接で完了し、この4月以降新たな役職で能力主義的安心雇用へのスタートをします。これでグループ内の人材の能力が一線に揃い、グループ間のダイナミックな人事も可能になります。
私が40年間の経営で会得した人事の要諦は、同じ仕事ばかりでは「3年経てば慣れが来て、5年経てば飽きが来て、10年経てば駄目になる」で、多くの場合、マンネリに陥って、使い物にならなくなる恐れがあるということです。
これからは総合職を中心に、専門性を軸に多様な能力を経験で培ってもらえるように、3年から5年で新しい仕事や地域に取り組んでもらうよう、人事異動と教育で社員の皆さんの更なる能力アップを目指していきます。
管理職や経営職は、経営理念や経営方針と行動規範をしっかり社員幹部に植え付け、「マイナス」を「プラス」に変え、将来に夢を持てる積極的な経営成果を発揮するように経営力、管理力の養成には、手厚い教育体系とJB制度がありますが、女性の管理職、経営職をこの10年間で10%まで引き上げるために特別講座を設けました。また「ウイメンズ特別JB」も組織化を検討します。KiraRiの活動とともに、これからの女子力の活躍が光って活きます。
コンプライアンスに弱い管理職、経営職には専門講座とともに、運輸交通部門では大型二種などの現場免許を取得してもらい、現場管理力を養ってもらいます。現場が分かれば分かるほど管理が楽しくなり、現場の共感から社内の絆が深まり職場が明るくなります。今後は折角の現場免許が風化しないように、少なくとも毎月一回以上、例えば電車・バス・トラックやタクシーの運行をするようにして、現場の問題点を身体で感じてもらいます。現場が出来て専門性があれば、気力・体力次第で70才位まで働けるのです。健康・能力・やる気で、野村元監督のように「生涯一捕手」の気概で、専門職として頑張っていかないと、年金など国の福祉力が低下するであろうこれからの時代に安心して生きていけません。
3.次代の種まきも、やっと守りの経営から新規事業やM&Aに各社、各カンパニーが取り組んでくれるようになりました。
4.首都圏への進出は、当初は情報系・運輸交通系が中心でしたが、不動産に加え生活関連事業も進出が目立ち始めました。
アジアへの進出も両備国際物流ベトナム社(Ryobi International Logistics Vietnam JSC)が新規発足し、ベトナムで国際物流事業が展開できるようになりました。
やっと一皮むけて大企業の経営力をキャッチアップ出来る体制が整いつつあります。
従って、昨年から新たな夢を持ったリボルビング型の3カ年計画を創っていますが、アグレッシブに思いやりを持った強い経営体質のグループを目指します。
「5つの執行責任」は、今後の「管理職・経営職の業務の要諦」として「われらの誓い」のカードに記載し、今後の執務と評価のテーマとします。
続いて、今後3カ年のグループ経営の新・会長方針を示します。
1.営業力と労働生産性の向上
両備グループの課題でもあり、日本企業の課題でもある問題は、先進諸国の中で最も労働生産性が低いことです。仕事のやり方、仕組みに「ムリ・ムダ・ムラ」が多いのです。
生産性を上げる営業力強化も課題です。グループの営業シナジーの取組みに横串をいれるために両備グループ営業委員会を創設して精度を上げていきます。
売上げ無くして会社なし、コスト削減無くして利益なしです。コスト削減の源は労働生産性のアップです。
現在は長時間労働、休日出勤など時間をかけて長時間労働で仕事をする傾向が強すぎるのです。今年は、つきあい残業や意味のない早出や休日出勤は止めて、両備グループも「カエル運動」を推進します。
ワークライフバランスを考えて、決められた上限時間内で仕事を終えるように生産性を上げる工夫をしましょう。休日出勤は振替休日が原則です。
原則として管理職の指示のない、また申告・承認のない早出、残業、休日出勤は禁止です。人事委員会と各COOと各労務管理者でしっかりと管理していきます。
また、働いた残業を誤魔化したり、払わなかったりも厳禁です。ノーワーク・ノーペイの原則で、働けばちゃんと払う、働かなければ払わないという原則は、お互いにちゃんと守って明朗な職場を作ってください。
時間管理をして売上げまで下がるのは、労働生産性が上がっていないつまらない管理です。「ムリ・ムダ・ムラ」を無くし改革・改善の工夫をしてください。「よく働き、よく稼ぎ、よく遊ぶ」で人生を楽しくしなければ意味がありません。これが「忠恕」の管理であり、「社員の幸せ」です。
両備グループは労使強存・共栄ですから、生産性の向上には、明るい職場やモチベーションを上げるように労使の連携が必要ですが、現場における労使関係の配慮が足りないというより人事部任せで労使交渉の経験が乏しいので、新設の「労使強存・共栄塾」で両備の伝統的労使関係を活かしていくようにしていきます。
生産性は連続して働くより、適度に休むことで業績アップするのです。多能工化や業務の効率化も効果的でしょう。
東レ経営研究所が休み方の指南をしていましたが、働く合間の休み方に、
①お昼20分程度の仮眠
②合間のお茶やコ-ヒブレイク
③ストレッチ
などの活用を進めています。
仕事が楽な日には半休を取って休息するとか、臨機応変な働き方も労使の知恵です。
2.対流型経営への転換
動きの速いこれからの時代は、トップダウンだけでは駄目で、ボトムアップも必要です。中小企業は大企業のように人材が厚くないので、社員から上がってくるのを待っているだけでは変化も成長も起こりにくいでしょう。果敢にトップダウンを進めるとともに、社内を明るく活発にして意見、提案を吸収してボトムアップも図る対流型経営を心がけてください。
本田宗一郎さんは、「チームに権威を作るな、自分のために働け」と言っています。
両備グループも「社員の幸せ」で自分のために働くのですが、自分だけではつまらないので、自分のためが社会のため、お客様のためになるように「働く意義と喜び」を創るのです。この喜びがモチベーションを上げるのです。
3.日本一安全・安心な企業づくり
運輸交通部門の安全もさることながら、これからの社会でますますリスクマネジメントが必要な情報漏洩や情報犯罪の問題、食の安全や消費者保護の問題、介護現場の安全や安心への更なる取り組みなどで問題点を洗い出し、日本一安全・安心な企業づくりをしてください。
特に運輸交通部門は、運輸安全マネジメント委員会での新たな取り組みをします。
会長、社長、副社長制となったことで、副社長が運輸安全マネジメント委員長に就任し、副委員長に現場を知りぬいたカリスマ安全教育者の岩木さんを登用して、現場主義で安全の確保の組織強化を図りました。
岩木さんの指導で、今まで事故の多かった東京のハロー・トーキョーやイースタンエアポートモータースなどがプロの運転手とは何かを理解し、大きな改善の兆しが出てきました。
昨年11月22日には、国土交通省から安全部門の専門官に講演・指導に来てもらいました。昨年の目標と10月までの実績で、PDCAのサイクルを回して自己評価をして、科学的かつ現場的に実効力のある安全マネジメントを遂行します。
①「ヒヤリ、ハット」を効果的に運営し、危険予知トレーニングで事故を未然に防ぎましょう。
免許証取得時に試験で落とされた運転の弱点は、ずっと持ち続けるので、その個人の運転癖を危険予知トレーニングなどで事前に押さえ込みましょう。
②科学的分析とメンタル面の強化でヒューマンエラーの撲滅に努めましょう。
③実際の大事故を想定しての実地訓練と人命尊重での対処、救急救命の講習などがむしろ事故防止の抑制になります。怖いのは事故と共に恐れからの現場逃避で、万が一の場合にもプロらしい毅然とした適切な対処を身体で覚えさせなければなりません。
④メーカーではフールプルーフ(バカボケ防止)に治具や機器などを開発して効果を上げていますので、教育・訓練とともに治具や機器への投資をしましょう。
⑤更なる健康管理に努めましょう。
⑥長年無事故であった乗務員が、ウッカリの軽微事故を起こした場合は、過去の功績を評価し、大岡裁きで一回は反省文に留めましょう。厳罰主義だけでは、反省ではなく反発だけを生んで逆効果です。乗務社員、整備社員と管理者が一体となって、松田敏之副社長が共英製鋼で学んできた「ご安全に!」を合い言葉に「日本一安全な運輸企業」を目指しましょう!
今後も毎年11月に安全マネジメントの一年間の総括をして、次年度の活動方針の策定を図るようにしていきます。
4.人を育てる経営の強化
人を育てる基本は「健康×能力×やる気」で、まず健康第一思想です。
①日本一健康な企業づくり
両備健康づくりセンターもいよいよ10年を迎えます。今年は、新入社員段階から健康教育を充実し、健康日本一企業を目指します。
昨今、国も健康問題を重視していますが、両備グループの健康への取り組みは10年の歴史と先進性で両備健康塾や両備健康体操などユニークな成果の高い運動を実施しています。特に運転手の新人教育、反復教育にも健康教育を重視して、健康面からも安全を支えていきます。
社員の幸せは「健康×能力×やる気」で、まず健康が幸せの源です。自らが努力し、自己管理して自らを磨き上げれば必ず幸せは掴める、幸せは努力の係数なのです。
②人を育てる教育と人事の連携
一人ひとりの社員を大事に育てるには、まず一人ひとりの社員に自分の人生の幸せのために、会社という生活の糧を得る職場で将来どういう人材になっていくかのキャリアパスを上司も一緒に考えて作り上げることです。人生の目標無くして、行き当たりばったりの棚ぼたでは、人生の幸せは掴めません。上司は部下を育てることが自分の大きな仕事の一部だと理解して、部下のキャリアアップには課題を与え、その評価をしていかなければ育ちません。新人と指導員を交えて、各COOもしくは職場長が1カ月、3カ月、6カ月、1年の定着指導を図ってください。
5.伸びる地域へのシフト
日本の地域間格差がますます広がっています。
オリンピックの東京招致が決まり、2020年に向けて地域間格差が今以上に広がっていっています。この地域の格差の広がりは経営にとっても大変大きな問題で、従前から太平洋ベルト地帯の新幹線沿いを中心に、今後も伸び行く地域に投資をシフトしていきます。
一方、アジアをはじめ開発途上国の成長が早く、今後伸びゆく地域のキャッチアップが急務です。
両備は「心のサービス業」
「忠恕」と言っていますが、仲間内の仕事のやりとりで思いやりに欠けた姿がまだまだ散見されます。総合職、管理職にも経営理念の「忠恕」を私の講座で全員学んでもらいましたので、今年から各現場教育に「忠恕」の取り組みをしてください。全日空さんは「自分以外みなお客様」という気持ちで仕事に取り組んでいるそうです。自分が仕事が出来るのも上司、同僚や部下の支えがあってこそであり、お客様とともに日々の自分の業務を支えてくれるみんながお客様なのです。
両備は「心のサービス業」でも日本一を目指します。
今年は運輸交通業だけでなく、両備グループ全体で安全・安心の企業づくりを目指してお互い「ご安全に!」を合い言葉に、思いやりで日本一心温まる企業を目指しましょう!
両備グループ