平成21年年頭の辞 大不況を克服しよう!

両備グループ代表 
小嶋光信

あけまして、おめでとうございます!
ご家族のみなさんとご一緒に、明るい希望に満ちた新年を迎えられたことと、お慶び申しあげます。

昨年は怒涛のような原油値上がりと、サブプライムローンに端を発した金融危機で、まさに世界恐慌への瀬戸際になってしまいました。グリーンスパン前FRB(米連邦準備理事会)議長が「百年に一度の津波」と言ったように、まさに一触即発の事態です。

両備グループの最大の事業のコアは交通運輸業であり、その中でも特にフェリー、高速艇やトランスポート系は燃料消費量が多く、まさに危機的状況でしたが、それぞれの素晴らしい対応で、何とか荒波を乗り越えています。このような経済危機には企業体質と企業力が問われますが、幸い一昨年両備ホールディングスを作って、企業力の集約を図っていたことで、企業信用力も高く、この危機をむしろ攻めに転ずることができています。

ここ10年間の世界や日本の状況は、「アメリカのブッシュ大統領は世界を壊し、日本は地方を壊した」と言っても過言ではありません。アメリカのブッシュ大統領の何でも自由という極端な自由競争原理主義(私の造語です)で、無秩序にはずされた規制が、世界の金融・経済を破壊することになりました。その日本版の規制緩和政策は、地方の衰退と地方公共交通の崩壊を招いてしまいました。自由を守るために、ルールすなわち規則・規制があるのです。幸いアメリカもオバマさんを次期大統領に選び、世界も、日本も今までの愚策に気が付いて、「必要な規制」があることを認める社会に戻りつつあります。

地方公共交通再生への全国的貢献

規制緩和で壊された地方公共交通の再生のために、両備グループで引き受けた和歌山電鉄貴志川線や、中国バスでの活躍で、将来の地方公共交通を守る芽がでてきました。和歌山電鉄での地域一体の努力が一つの見本となり、先進国では当たり前の「公有民営型」というスキームが法制化になり、約90路線ある地方鉄道のうち70近くの路線が助かる可能性が出来ました。また、2つの再生の実績で、中央で発言させていただく機会ができ、その発言がひとつのきっかけとなり、地方バスの経営努力を喪失させた補助金制度が、標準原価より低ければその5%を、原価低減すればその20%をプラスしてくれるという改革で、経営努力を認める画期的改革が行われるようになりました。

また、足元の岡山市内においても、中鉄バスとの永年の問題を、国道53号線の岡山電気軌道との共同運行をすることで、岡山駅構内の方面別問題も含めほぼ全面的解決ができ、全国でも大変注目を集めました。両備ホールディングスとしても、規制緩和で荒療治のため路線と観光を分割しましたが、一応の目的を達して、更に総合力を出すために両備バスカンパニーとして再統合しました。
今年は岡山電気軌道と両備バスカンパニーの路線再編を思い切って行い、21世紀の岡山市内の公共交通のあり方を創っていきます。

東京一極集中への対応

世界の危機で、東京のミニバブルが弾けたとはいえ、首都圏一極集中はとどまることをしらず、情報系の東京における事務所移転を機に、両備グループの首都圏対策として東京事務所を設立しました。東京事務所の目的は、各社の首都圏地域での営業支援だけでなく、M&Aと人材確保にあります。こんなに早く効果が現れるとは思いませんでしたが、一昨年の共栄運輸倉庫についで、サービス力が売り物のハロー・トーキョーの再建も引き受けることができましたし、人材を確保して両備ホールディングスに企画開発部も設置できました。不動産も全国での取引ができる免許も取得し、このどん底という一番チャンスの多い時期に首都圏での事業開始ができました。
ピンチはチャンスといいますが、チャンスを物にできるシフトが整っています。

たま様で企業イメージ高揚

和歌山電鉄のスーパー駅長たまちゃんが、和歌山県知事から勲功爵位をいただいたので、たま様になりました。グループ広報とスーパー駅長たま様のもの凄い活躍で、一気に和歌山電鉄と両備グループの好感度がアップしました。
また、25年前に作ったコマソンの「街は青春」が岡山県を代表するコマソンに選ばれ、両備タクシーセンターも「おかやまIT経営力大賞」を、育児支援でも岡山県知事賞をいただくなど、話題の多い一年でした。
情報系も両備システムズ ソフトウエアカンパニーが、富士通さんの戦略的パートナーとして400社中4位とトップクラスの評価を受けましたし、新たに同社に健康ビジネスカンパニーの設立も行われました。両備システムソリューションズでは、WEB予約のシステム提供が可能になり、両備システム機器販売も20周年記念として両備システムイノベーションズに社名変更をして、情報グループとしてエリアと事業拡大に積極的な取り組みを図りました。
両備ホールディングスと両備システムズのコラボで、両備オープンラボも開設し、話題になっただけでなく、未来スーパーのアイデア募集も周囲の目を引きました。

岡山で一流でも全国では二流

昨年の経営テーマは、「チャレンジ5で日本一!」運動の3年目として、「現場力を磨く」としました。改めて現場を見直してみると、確かに岡山ではお客様の高い評価をいただいていますが、ひと言で言って「岡山で一流でも全国レベルで二流」と謙虚に見つめ直してみる必要があります。強い相手と闘って勝っていけば強くなりますが、岡山でぬるま湯の中で、少し現場力に錆が出ていると思われます。電話応対やカウンターやレジ、バス、タクシー、船舶、ストアや石油スタンド等での応対や接客とともに、職場の5SAFに磨きをかけるために、CS(お客様満足)に本格的に取り組む体制を作りました。

CSのレベルをお客様の苦情で分析すると、

レベルⅠ:5SAF不足への苦情
レベルⅡ:業務知識不足への苦情
レベルⅢ:気配り不足への苦情

となります。

レベルⅠの苦情は、躾や訓練で直し、レベルⅡは教育で、レベルⅢの苦情は高度な対応を求められるので、感性と経験で磨かなくてはなりません。苦情を減らそうと思っても、お客様のご要望はレベルⅠからレベルⅢへとあがっていきますので、お客様の期待が増えれば、苦情も増えます。苦情絶対数よりその苦情のレベルなのです。

マンネリになった職場では、お客様の苦情を嫌ったり、隠そうとしたり、“やなこと嫌い”の社員が生まれます。お客様の苦情は、実は一流に成るための宝なのです。お客様の苦情に真剣に取り組むことで、企業も社員も磨かれるのです。ぜひ”やなこと好き”になってください。苦情を聞くことに強くなるとともに、トップランナーなどで、良いことを大いに誉めてあげてください。

「チャレンジ5で日本一!」運動での改善・改革や問題解決のために、QC手法の取り組みや、富士通さんから学んだ「職場自律改善活動」と、社員自らの気づきを促すコーチングなど、新たな教育手法も取り入れていき、両備社員がどこの一流の社員に比較しても遜色ない水準にしていく体制を整えました。
一番の改善への近道は、問題発見能力です。
常にこれでよいのか、今日の仕事は、明日はもっと良くしようという気持ちが大事です

今年の経営テーマ

今年の経営テーマは、

大不況克服
 1.現場営業力強化
 1.現場改革力推進
 1.現場CS力向上

の3つです。

営業なくして会社なし、改革なくして利益なしで、全ての始まりは、現場での営業です。
不況で売り上げが収縮すれば、シェアアップを図るか、地域と顧客を拡大するかのどちらかです。そして売上げて、いかに利益を出すかは原価の改善・改革です。そして、経営の全ての源である売上げと経費は、現場で創られ、お客様へのCS(お客様満足)で決まります。大不況の今こそ、大きく差がつくのです。一流の大手と生産性の違いと待遇の差をキャッチアップするには、考えて付加価値をつけて仕事をすることです。
考えずに決められたことだけをする作業では一流にはなれません。考えて”笑売”しましょう。

価値ある仕事へのヒントは、実はお客様の苦情・叱責の中にあり、これらを肥やしに改善・改革することです。それに仕事のスピードをあげることです。
一流と二流の差は、実はスピード感の違いです。

「好況よし、不況さらによし」と松下幸之助さんは言われたそうです。「不況は、普段見えなかった欠点が浮かび上がる」というのです。
ですから不況の今はチャンスなのです。

2010年の100周年に向けて、いろいろな改善・改革をやってきました。ここ数年、岡山では両備の一人勝ちだと言って下さる方もたくさんおられます。業績的には決して勝っているとは言えませんし、57社中赤字の企業も数社出てきましたが、逆風の中に、両備のオリジナリティで、雄々しく立ち向かって突き進んでいる姿が勝っていると見えているのかもしれません。
交通運輸部門、情報部門、生活関連部門という3つのコアで、それぞれグループ長と各委員長を中心に、活発なリーダーシップが発揮され、各社がそれぞれ独立していながらも、それでいてブドウの房(クラスター)のように一体に進む、両備クラスターの形成が着実に進んでいると言えるでしょう。

両備の宝はヒューマンウエアです。グループを貫く各委員会などのグリッドシステムでの管理手法や、社員の一人ひとりが自己管理をすることを会社が管理するという考えとともに、教育システムや健康システムやグループ監査などを、信託経営のうえに加えて、両備独特の管理体制を築き上げてきました。

目的は社会のため、お客様のため、社員の幸せであり、そのためにも企業を強くしていかなくてはなりませんが、両備ハッピーライフプロジェクトで最も大事にしていることは、日本で最も安全と健康を大事にするヘルシーな企業であるということであり、社員を育てる企業という方向性です。

企業の一流は、即ち皆さんが一流になることであり、一流になれば、一流の生活が待っているのです。
どうせ一度の人生なら、頑張って私は”これ”という誇りの持てる一流を目指し、この大不況を克服しましょう。

両備グループ