(公財)両備檉園記念財団
理事長 小嶋光信
両備檉園記念財団の「檉園(ていえん)」という文字はあまり馴染みがないかもしれませんが、両備グループの創業者の松田与三郎さんの号が「檉園」といい、その創業者を記念する財団で生物学や文化・芸術・教育、そしてスポーツなど幅広い分野での研究奨励や活動助成をしています。
「檉園」の「檉(かわやなぎ)」は、中国の柳の一種で、いかなる大嵐でも倒れることなく飄々と軽く受け流して毅然と立っていることから、創業者が両備グループの母なる企業の西大寺鐡道も「かくありたい」という願いを込めて好んで使っていた号です。
当財団は両備グループの株式の運用益で運営されているので、毎年この席に立つたびに、グループ各社が厳しい経済環境の中で「檉」のように、大嵐を乗り越えて逞しく業績をあげながら地域へ貢献できていることに感謝しています。
お蔭さまで、両備グループはコロナ禍もしっかり乗り越え、第43回までは10百万円台を、コロナ禍の終息が見えてきた2022年(第44回)は倍増の23百万円を、昨年の第45回からはグループ経常利益が100億円と史上最高益を確保してくれたので、通常の3倍の30百万円台で表彰や助成をさせていただいています。
両備グループの企業の業績が良く運用益が高まったこともありますが、私も一時、岡山大学の経営担当理事等で経営に携わったことがあり、国の予算が教育や研究に厳しく、研究者の皆さんたちが大変にご苦労されていることをよく知っています。ましてや国の発展の基礎になる教育や研究を疎かにしてはならないという思いは、両備グループの経営理念の「忠恕」と経営方針の一つ「社会正義」に基づくものです。
今年の生物学研究奨励賞は昨年から1件増の30件、新産業創出研究大賞も1件あり、自然科学学術集会が4件、文化・芸術・教育研究が7件、文化財保護保存が2件、スポーツ振興奨励賞が7件で、計51件を対象にさせていただきました。
特に今年のトピックスとしては、新産業創出に係わる研究で“医薬品開発を阻む「種差」”に注目した加来田博貴先生の研究に「新産業創出研究大賞」を、北京オリンピックのフィギュアスケートで見事に銀メダルを獲得した小松原美里さんの功労を称えて「スポーツ功労賞」を贈呈しました。フィギュアスケートのシングルはいつも男女ともオリンピックでメダルが獲れますが、団体ではアイスダンスが弱くメダルが獲れなかったところ、小松原さんの貢献でメダルを獲得(ドーピング問題で銅から銀に繰り上げ受賞)することができました。
日本は失われた30年と言われますが、研究に教育にスポーツにと大いに輝く国となってもらいたいという願いを込めて、当財団も地域・岡山や日本のために頑張ります。