夢二郷土美術館 館長
小嶋光信
ご紹介いただいたように、ある時は夢二郷土美術館の館長、ある時は和歌山電鉄社長、またあるときは貴志川線駅長三毛猫「たま」の付き人の両備グループの小嶋です。
竹久夢二さんもまた、あるときは画家、あるときは詩人、あるときは千代紙やゆかたのデザイナーと多彩な芸術家で、世界でも夢二さんのような幅広いジャンルの芸術家は珍しく、まさにマルチアーティストと言って良いと思います。
このたびはその夢二展を、私ども和歌山電鉄の走るこの和歌山県で、仁坂吉伸知事様、和歌山県立近代美術館名誉館長、中山次郎様はじめ皆様おそろいで盛大に開会式を催していただき、感激しています。
この度の夢二展は色々の縁が重なって催すことが出来たと思います。
一つは、私どもが昨年から貴志川線をお引き受けしたことで、和歌山と岡山との交流の一環で夢二展を開きたいと願っていたことです。
もう一つはこちらの学芸員の井上芳子さんが岡山大学に学び、その卒論に夢二と親交の厚かった田中恭吉さんを選び、その関係で私どもの小川統括マネージャーと10数年来の知人で、誰も取り組まない視点で夢二展をしようと永年夢を巡らせていたことだと思います。
和歌山は、恩地孝四郎さん、田中恭吉さんという熱烈な「夢二学校」の面々や、「宵待草」のモデルになった長谷川カタさんのご主人の音楽家、須川政太郎さんなどとの縁も深かったといえるでしょう。
夢二の描く美人画は、憂いを秘めた大きな瞳、S字の身体、また大きな手と足が特徴です。「心の詩を文字だけでなく絵で描きたい」と、特に女性や子供といった弱い人々への思いを描いた社会派の画家でありました。しかし、特別な思想の持ち主ではなく、豊かで文化的な環境で過ごした故郷・岡山で育まれた少年期と、働き者で優しいお母さんや黒髪の美しいお姉さんへの思慕から生まれた優しさだと言えるでしょう。
これを機会にぜひ夢二を育てた岡山の生家や夢二郷土美術館へもお越しいただけると、より深く夢二を感じていただけると思います。
多くの縁に感謝し、この展覧会を和歌山の皆様にたくさん見ていただき、さらに夢二さんと和歌山との繋がりが深まれば幸いです。
開催中 「竹久夢二展 ―描くことが生きること―」
平成19年4月21日(土)~5月27日(日) 於:和歌山県立近代美術館