両備グループ代表兼CEO
小嶋光信
多くの地域公共交通の再生を通じて分かったことは、地域が元気でなければ地域公共交通の発展的生き残りは難しいということで、換言すれば、公共交通が地域を元気にするツールにならなければいけないということです。
昨年7月に「国土のグランドデザイン2050」が示され、それに基づいて広域地方計画が作られています。キーワードは「コンパクト」と「ネットワーク」です。東大の家田先生はそれを「まとまり」と「つながり」と表現されています。少子高齢化で人口が減少する日本の生き残り策として広域な地方への「まとまり」が必要になりますが、岡山で言えば、江戸時代の備前岡山藩のサイズが基本的な将来の「まとまり」でしょう。つまり、どんどん昔に戻っているということです。
両備グループも、元々は備前の一部の軽便鉄道だったのが、鉄道の廃止で備前・備中を代表する当時の新・公共交通のバス会社になろうと転換して今日に至っていますが、今こそ地域に育てていただいた両備グループが地域へ恩返しする機会だと思っています。
そこで、今は別個となっている地域ですが、元々同根の備前市や瀬戸内市、玉野市を岡山市と共にグレーターシティ岡山構想で応援していこうと、その地方創生第一弾として「備前焼」を採り上げました。
備前焼は日本六古窯の一つで、郷土岡山を代表する焼き物の一つですが、バブルが弾けて以来苦戦をしています。それではというので、その備前岡山の「まとまり」の中心地の岡山市で「備前焼市(いち)」を開催し、まず地元に住む我々が備前焼の素晴らしさに触れる必要があると思いました。備前焼は高いものという概念を払拭して「用即美」=「即ち用に供してこその美しさ」であることを知ってもらおうと、6月6日(土)~7日(日)に東山公園で開催の「備前焼市」と、5月30日(土)~6月30日(火)の間で岡山電気軌道の路面電車沿線にある人気の飲食店と注目の備前焼作家16名との共演である「備前焼MEETSグルメ」で備前焼の器で特別メニューの料理を楽しんでいただこうと思っています。
その「つながり」をつけるツールが路面電車であり、路線バスです。是非、電車やバスで多くの方に来ていただきたいと思います。「備前焼市」を盛り上げるために5月末には2回の「備前焼美食電車」で前宣伝をし、「備前焼市」の当日には200枚限定の備前焼記念乗車券を発売しました。
会場の東山公園は、岡山県で初めて噴水が作られた公園で、昔はクジャクや猿もいて子供たちの楽しい遊び場でしたが、今は閑散とした公園になってしまいました。元々、備前岡山藩は質素倹約を旨としていて、城下町では庶民の祭りが催されずに、この東山公園の上にある玉井宮が庶民の神社でした。その縁の地で、岡山が誇る「備前焼」をみんなに知ってもらい、「岡山県民なら一家に1つは備前焼」で“おもてなし”をし、大いに郷土を自慢していきたいと思います。
オープニングのテープカットには、和歌山応援館の館長代理のSUNたまたまも友情出演してくれて、みんなに囲まれて人気ぶりを発揮しました。
今回の取り組みのテーマは私が出しましたが、実行部隊は両備グループの若手が中心で、自由に動き回って創ってくれました。備前焼の陶工のみなさんや備前を代表する飲食関係の皆さんの情熱と、岡電の路面電車沿線のグルメのお店のご協力で、正直良くここまで全く行政の力を借りずに出来たなと思って感心しています。ただ単発のイベントではなく、まちづくりにつながるネットワークを創ってくれたと思っています。「たまルンまちあそび本Vol.1 備前エリア」は今後も備前の回遊に大いに役立つアイデアを凝縮した地域ガイド本に仕上がっています。
これから、みんなで地域を誇りに、そして自慢にしていく運動をどんどん展開していきます。
岡山電気軌道
両備グループ