企画展「ゆめじ×えいじ」と対談について

夢二郷土美術館 館長
小嶋光信

夢二は、岡山が生んだ詩人であり、画家であるが、同時に日本の商業デザインというジャンルの先駆けでもあるマルチアーティストと言える。

現代の日本を代表するデザイナーは、日本初のクルーズトレイン「ななつ星 in 九州」で有名な、夢二を尊敬する岡山出身の水戸岡鋭治氏と言えるだろう。水戸岡氏は、昨年2014年の竹久夢二生誕130年のために記念ロゴマークを制作、また岡山市内を走る路面電車の「KURO×夢二」電車や東京・ニッコー観光バスの「走るミニ・ミュージアム夢二バス」などのデザインで、夢二の魅力を街中に発信した。

今回の企画展の初日、9月8日に催した水戸岡さんと私の対談は、「ゆめじ×えいじ」をテーマに、郷土岡山の大先輩である夢二のデザインを水戸岡さんはどのような思いと評価で見ているか、現在の日本デザイン界の第一人者のデザイナーの目からみた夢二の世界との競演が楽しみだった。

また、最近、世間を騒がした「オリンピック2020」のエンブレムのデザインに対するコメントも楽しみだった。デザインのアイデアは、色々のものに触れ、中には先人や仲間の絵やデザインや、動植物や幾何学的模様や千差万別の知識、情報からヒントを得て創られることは、夢二のスクラップブックの切り抜きなどからも窺い知ることができる。水戸岡さんは、それらのヒントから、自らのオリジナリティーをデザインすることもデザインの世界では日常的であると、婉曲に言っていた。模倣とヒントとの差異のグレーなところが、問題になるのだろうが、国を代表するエンブレムとなると、やはりオリジナリティーが大事だろう。夢二のデザインも、水戸岡さんのデザインも、確かに似たようなものも時にはあるが、ヒントを自らの中で熟して、オリジナルに創り上げていると思う。

企画展「ゆめじ×えいじ」では、夢二の猫版画の猫を「たま駅長」に描き直した水戸岡さんの楽しいデザインとの競演が見物だ。私は本来、犬好きだったが、夢二生誕120年に取り上げた「猫版画」を通じて猫ファンになり、和歌山電鐵「たま駅長」を生み出すことができた。たま駅長は今年6月22日に他界して大明神になったが、その3ヵ月程前の今年3月に和歌山電鐵貴志駅にて開催された「夢二の猫版画展」のために水戸岡さんが描き下ろした夢二の猫風「たま駅長」のイラスト原画を初公開し「たま駅長」を偲びたい。

岡山が生んだ二人のデザイン界の巨星のコラボレーションを今回の「ゆめじ×えいじ」展でお楽しみいただきたい。

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