平成19年両備グループ代表年頭所感「考える!速考働 ~一生懸命なら知恵が出る~」

両備グループ代表 
小嶋 光信

あけましておめでとうございます。ご家族そろって、希望あふれる素晴らしいお正月を迎えられたと思います。

昨年、三十三間堂を訪れたとき、その掲示板に「ふくらむ夢に咲かせる根気」と書いてありました。人生の夢は根気がなければ咲かないということを、見事に指し示してくれています。

今、日本の景気はちょっと良くなって「いざなぎ景気」を越えたと、それこそ景気の良い話が出ていますが、いざなぎ景気は年率10%以上の消費拡大で、5年前後でGDP(実質国内生産)は倍以上になっていますが、今回はほぼ横ばい程度で、景気の実感が乏しい景気回復と言えるでしょう。インフレ経済では、景気が良くなるのを待っていたら、必ず仕事が上手くいきだし、業績もあがりましたので、いわば景気が飯を食わせてくれました。しかし、デフレ下の経済では、景気はほとんど持ち上げてくれませんから、まさしく仕事の「夢は根気よい努力」でしか咲かないと言えるでしょう。

両備グループ100周年に向けて

昨年から「チャレンジ5で日本一」という5カ年運動を開始しました。“5”の意味はこれからの5年でグループ経常利益率5%を、5つの執行責任を全うすることで確保するということです。経常利益率がグループ平均で3%程度ですから、これに生産性向上と問題解決で2ポイント上乗せして、5%にすることが目標です。各社は、業績の松竹梅で目標が違いますが、標準利益より2%上乗せした利益の3分の1は社員の皆さんへの業績賞与として「見える化」して、努力に報いたいと思っています。

この5カ年運動は2010年に両備グループが100周年になりますが、その準備運動の一環です。周年行事というと、一般的には記念誌や記念品が主ですが、私は、この100年をきちんと振り返り、次の100年にむけてしっかりした企業基盤をつくって、みなさんが安心して働ける企業グループを作っておくことが周年行事だと思っています。それで、企業理念から経営方針、目標や体質作りに取り組んでいるのです。両備グループは1910年に西大寺鉄道という軽便鉄道として生まれ、昭和30年代にはバスの時代を予見した先輩たちの勇気と英知で、両備バスとして再編して、昭和40年代にはマイカー時代の時代の流れを読んで垂直に水平に多角化をはかり、現在40社以上の企業グループに発展しましたが、今後の100年の夢には「咲かせる根気と戦略」がいるでしょう。

社会への思いやりとして「社会正義」、お客様への思いやりとして「お客様第一」、社員への思いやりとして「社員の幸せ」という経営方針を貫くためには、現状の企業の体質と体力では限界があり、思い切った変身が必要です。これからの10年は今までの100年と思ったほうが良いくらい、激動の時代です。このデフレ時代はまだ15年以上続くと思われますし、その間、個人所得は、いままで15%くらい日本全体の平均で下がっていますが、これからも努力しないと、残り15%下がるのではと危惧しています。この過去の15%と将来の15%を足した30%の生産性アップを図らないと、日本経済全体も幸せになりませんし、われわれの生活も維持できません。だから30%の生産性アップが必要なのです。

一人ひとりの生産性を30%あげるということは、不可能だと思う社員の皆さんもいると思います。昨年新入社員の作文に「会社で30%生産性アップを目標にしていると聞きましたが、僕は出来っこないと思いました。それで、指導してくれる先輩に30%なんて出来ませんよねといったら、その先輩社員はきっぱりと”必ず出来ます!”と自信を持って答えられました。私は良い会社に入ったと思います。私も30%アップを目指したいと思います」と書いてくれていました。実は30%アップは今までのやり方のままでは、その新人が最初に思ったように出来っこないと言えるでしょう。

昔、松下幸之助さんという経営の神様が、「5%のコストダウンは大変だが、50%のコストダウンは出来る」と言われました。知恵を使って、新しいやり方を工夫しない限り出来ないのです。思い切ってぬるま湯から飛び出て、場合によっては自らを否定して臨まなければ出来ないのです。「考える!速考働」がキーワードで、考えて付加価値の高い、お客様や社会への「提案型」の仕事を、スピードをもって実行しないと達成できないのです。両備グループは真面目で誠実ですが、もうひと工夫が下手です。これからは、考える仕事をしないとお客様も満足しませんし、他社との競争に勝てません。提案制度やトップランナー制度を導入していますが、正社員なら、少なくとも毎月ひとつ以上提案や工夫がなければ、中央の大企業をキャッチアップできません。プロ野球の新庄選手が引退の挨拶に「体力の限界はあるけど、頭の限界はない。これからは頭を使って頑張りたい」と言っていました。身体を使う運動のプロの世界でも、頭を使わなければ勝てないのです。

昨年末に両備バスの倉敷支店を訪問したら、そこに貼ってあったお土産のペナントに「一生懸命なら知恵がでる。中途半端なら愚痴がでる」と書いてありました。まさに言いえて妙だといえるでしょう。

今までグループ全体の足を引っ張る制度であった厚生年金基金や健康保険組合の解決、赤字企業の再編と大きな問題解決ができましたが、昨年はグループ各社の執行責任者の会議である両備会を問題解決型に転換させるとともに、「両備教育センター」と「両備健康づくりセンター」に加え、「総務委員会」「経理委員会」「人事委員会」「安全管理委員会」というグループ各社への横串をいれて、経営基盤の問題解決、効率化の基盤づくりをしました。そしてグループ全体で200以上、総額17億円くらいの各社の赤字や先行投資の事業にメスを入れていきます。

更に、過去に先輩たちが勇気を持って変身したように、両備バス(株)と両備運輸(株)を合併して、「両備ホールディングス(株)」としてこの4月から再編して、グループの中核企業にふさわしい体制に変革いたします。もちろん両備バスのブランドは大事に、今まで育てていただいた地域への恩返しとして、維持していきます。これで両備システムズを中核とする両備情報グループと今回の運輸交通グループと大きく2つのコアが出来てきましたが、今後3年で、生活関連産業のコアの整備を図っていきます。

花咲く事業

昨年は体質の整備とともに具体的な事業でも、多くの花が咲きました。

特に公共交通では、将来へ公共交通を残すために「復活」をテーマに努力をしています。一部の大都市を除く地方の鉄道、バスはほとんど赤字で、規制緩和後の補助金行政では生き残っていかないでしょう。

将来の姿を残すための実証実験として、岡山電気軌道が「和歌山電鉄」の再生をしていますが、その実績を今年度の「日本鉄道賞 特別賞」として表彰していただきました。和歌山では、地域の皆さんや行政の応援、社員のみなさんの踏ん張りでお客様が10%以上増えています。

バス部門では、両備バスが広島県福山市で「中国バス」の再建を行っています。それらの取り組みが、きっと将来社会のお役に立つと思っています。

これで、一昨年の三重県津市(津エアポートライン)に加え、和歌山や備後90万人の市場に一歩を記すことが出来、今後グループ各社の進出の足がかりも出来ました。

また岡山では、全国的に珍しく、市内だけでもバス会社6社が競争し、なかなか各社のエゴでお客様本位の交通システムが構築できませんでした。そこで、一昨年から1年近くのトップ交渉により中鉄バスさんと関係改善について合意に至り、これで少なからず岡山市内の交通問題も解決できる素地が出来ました、今後、岡山の交通システムが便利で分かりやすいと言われるよう各社と協力して改善していきます。

運輸部門では燃料値上げを克服する社員一体の努力とともに倉庫の新設や、関連会社の黒字化など着々とチャレンジが進んでいます。岡山交通では次代の事業としての福祉事業で介護施設「倉敷ケアセンター両備そよ風」が単月ですが黒字化して、拡大の足がかりをつくりました。

業界の過当競争で苦しむ観光部門も、両備フレンドツアーが豪華客船「ふじ丸」のクルージング事業に成功し、「ゆりあな季(とき)」という品質ランクアップのバスツアー商品の開発も出来て、将来への足がかりを感じた一年でした。

両備運輸では、中四国物流センターの設立や輸送効率をあげるための輸送コントロールセンターの稼動だけでなく、タクシー部門の全車両へのドライブレコーダー設置など、安全への種々の取り組みを図っています。

情報系では、(株)両備サポートアンドサービスを再編して、(株)両備システムソリューションズと(株)リョービシステムサービスに業務を移管し、これで一連の改変が終了。(株)両備システムズを中心とした情報グループの体制が出来ました。社員教育や専門教育で次代に向けたスキルアップとともに、岡山市藤崎に新棟を建設して、これから5年間の業績拡大の受け皿造りをしています。

両備システムズとしては、豊成本社のIDC(インターネット・データ・センター)の耐震強化をし、公共団体への信頼性の確保を図り、医療システムの分野では「RSカルテ」でマイクロソフト社の「パートナーオブザイヤー2006」を受賞。地元誌の「学生が入りたい岡山県内企業」の第1位にも選ばれました。
 加えて、両備システム機器販売を中心に福山へ進出するなど、情報グループとして更なる発展への基盤ができた一年でした。

企業間のコラボレーションですが、中国バスに加え、中国商事も仲間に迎えました。中国商事はサービスエリアでのレストランやショップの積極経営で評価が高く、両備グループとまた違った、特に戦略から戦術面での決めの細かい取り組みが、経営のノウハウとして参考になりプラスになるでしょう。職場訪問してみて、1年間のスケジュールにイベントなどの取り組みをいつどのように段取りするかだけでなく、昨年の失敗や問題点を記しているところなど、改善だけでなくきめ細かい対策とイベントでの雰囲気づくりなど、お客様へ向けた着実な取り組みが評価出来ます。

時代は女性とインターネットのキャッチアップ

インフレ時代は男性が主役で、男性が消費者でしたが、デフレ時代は女性が主役で、女性が消費者です。また、店舗をつくり、人が売っていた時代から、無店舗で無人のインターネット商売の時代に変わりました。ターゲットも商売のやり方も変わってきて、旧来の商売に終っていないかが「速考働」のテーマです。

しあわせは思いやりで

両備ハッピーライフプロジェクトを行っていますが、まさに「おもいやり」が大事でしょう。奈良の二月堂、三月堂に「幸せは人に与えなければ、自分にやってこない」と書いてありました。グループ各社や仲間の幸せを願って協力し合うことが、自社や自分の幸せに通じるのです。

みなさんに100周年に参加していただくために、「社会正義」「お客様第一」「社員の幸せ」をテーマに記念事業の募集をいたします。ヒントは「他社のやるような月並みなことでなく、この記念事業なら日本一」です。1等賞には、海外旅行ペアでご招待など、うきうきする賞品を副賞に考えます。

考えて働き、他人の幸せを願い、自らが努力して、「チャレンジ5」を成功させましょう!

両備グループ