倉敷から世界へ!奇跡の倉敷FSC 30周年おめでとう!

NPO法人 岡山県スケート連盟
会長 小嶋光信
(両備グループ 代表)

「良い夢を見させてもらった」という言葉がありますが、「良い夢を実現して見せてくれた!」というのが、まさに1993年に設立された「倉敷フィギュアスケーティングクラブ」(以下、倉敷FSC)の歴史と言えるでしょう。

雪国でもない温暖な岡山県から、男子フィギュアスケーターで日本初のオリンピックメダリストになった高橋大輔さんに続いて、世界で活躍した平井絵己さん、田中刑事さん、また大輔さんの背中を追って同じく倉敷翠松高校時代,フィギュアスケートの技をみがいた町田 樹さん、無良崇人さん、さらにアイスダンスでは小松原美里さんと小松原尊さんなど実に多彩な世界的な選手がこの岡山県倉敷で育っています。

私が岡山県スケート連盟に関わるようになったのは、2005年第60回国民体育大会 岡山大会を控えた10年前の1995年ごろからで、その当時の岡山県の悲願は何としても冬季国体で8位に入賞したいということでしたが、それは夢のまた夢でした。

そこへ、彗星の如く現れたのが高橋大輔さんで、まだ彼が小学生の時に「素晴らしい才能の選手です。初めてスケート教室でチョッと滑り方を教えたら、もうスケートで鬼ごっこしていた」というエピソードを、彼を発掘して指導した佐々木美行監督から紹介されたのが初めての出会いでした。「この子が育ったら60回国体で8位入賞ができるかも…」と期待が湧きましたが、あれよあれよと2001年の全日本選手権で優勝、2002年には世界ジュニア選手権で優勝し、オリンピックの特別強化選手となったのです。

実は、国体とオリンピックではフィギュアスケートは演技時間が異なるので、ジャパンの強化選手は国体には出ないということが通例だったのです。これは大変!と大輔さんに「特別強化選手になっても岡山国体に出て欲しい」と無理なお願いをしました。その時,彼はコーチや家族とも相談して即座に「僕は地元にお世話になったので、オリンピック選手になっても岡山県の選手として国体に出ます」と約束してくれました。お蔭さまで岡山国体では前年に引き続き成年男子で優勝し、フィギュアスケート業界では「岡山県の奇跡」と称賛されるとともに、「温暖な岡山県では二度と冬季国体のフィギュアスケートでの優勝は無いでしょう」などと国体の会場で各県の代表に言われたことが今でも耳に残っています。

では何故、雪国でない岡山県で世界選手が育っているか?ですが、本人の才能と努力のほかに、3つの大切な要素があると思います。
1. 可能性を信じて共に歩む指導者に恵まれること
2. 家族や知人・仲間たちのサポート・協力があること
3. 何にも増して、練習環境の良い通年営業のスケートリンクがあること

岡山県には全国でスケートリンクが廃止される中、岡山市に岡山国際スケートリンクと倉敷市に旧ウェルサンピア倉敷スケートリンク,二つのスケートリンクあったこと,それが,今日がある所以だと思います。

ところが、岡山国体の成果への喜びも束の間2005年に、突如、倉敷FSCの危機が勃発しました。何とウェルサンピアなどの全国302の施設が廃止・売却対象となって、施設は閉鎖されることになったのです。倉敷FSCにとっては、スケートリンクが地元に無くなることは致命傷で、幹部の皆さんが私のところへ岡山県スケート連盟の会長として何とかしてほしい!と鬼気迫る熱烈な陳情に来られました。同時に,選手・保護者もスケートリンク存続の会を立ち上げ,署名活動を地道に展開したのです。何としてもスケートリンクの存続が一番ですから、ウェルサンピア倉敷が閉鎖されてもしばらく利用できるように管理団体の年金・健康保険福祉施設整理機構のトップにお目にかかりお願いしたところ、スケートリンクだけは同機構から借り受ける形で、県スケート連盟によって冬季のみの営業を続けることができました。

さて次は、一体どこに所有していただいたら施設が安泰になるか思案し、色々分析して近くにある倉敷芸術科学大学に運営していただくのがベストだと思い、母体の学校法人加計学園の加計孝太郎理事長にお目にかかって、倉敷における世界のフィギュアスケート界での将来性と大学での教育研究拠点としての可能性を説明したところ快諾下さって、返す刀で倉敷市の伊東市長に加計学園によるスケートリンク存続への協力をお願いし、今日に至りました。

その時に約束した倉敷から世界的な選手を輩出し、加計学園出身の選手として活躍するという実績も田中刑事さんのオリンピック出場によって残せました。もう一つの約束は、ヘルスピア倉敷アイスアリーナを拠点に倉敷芸術科学大学がフィギュアスケートなどでアジアの教育・指導拠点となるように発展することは現在進行中で今後の夢です。

また、倉敷FSCで育った選手たちは、明るく礼儀正しいということが特長です。ともすれば、ちょっと上手になると天狗になる選手が見受けられますが、大輔さんはじめ倉敷FSCで育った選手たちは、ほんとに謙虚で礼儀正しい素晴らしい人間性に育っています。これが佐々木美行さんはじめ倉敷FSCの指導者の皆さんの心だと思います。

2023年8月11日の手作りの30周年記念行事には伊東市長と高橋大輔さん、平井絵己さんも駆けつけてくれて、30周年のバルーンアートの前で皆さんと楽しく写真を撮るなど華を添えてくれました。

岡山県が2025年に西日本で初めての冬季国体を引き受けることになり、岡山県スケート連盟も応援することになりました。私の主宰する(公財)両備檉園記念財団では、長年、高橋大輔さんはじめ世界級の選手の奨励をしていますが、岡山国体へ向けて倉敷FSCの皆さんの選手強化にもささやかながらご協力していこうと思っています。

倉敷が岡山での冬季国体のフィギュアスケート会場となるでしょうから、皆さんまた新たな目標に向かって発進です。

両備グループ