元はうどん屋さんと自衛官。 路線バス×路面電車 二刀流社員一期生の挑戦。

バスと電車、どちらも運転できる人になる。両備グループが始めた「二刀流社員」は、路線バスと路面電車、ふたつの現場を行き来する新しい働き方。この前代未聞の二刀流採用には、多くの応募が集まり、倍率はおよそ20倍。その中から選ばれ、第一期生としてデビューしたのが、人見さんと蒲原さんだ。
緊張しつつも、笑顔を忘れず、目の前の業務に誠実に向き合う姿が印象的だ。まだ始まったばかりの「二刀流」の道。その等身大の言葉のひとつひとつに、思わず応援したくなる気持ちが重なっていく。
異業種からの大転身。
「好き」と「得意」が重なった瞬間。
――Q.どうして「二刀流社員」に応募したのですか?
A.人見:前職はうどん屋でした。勤めていたお店が閉店し、次の仕事を探していたときに「二刀流社員」の募集を見つけたんです。最初は食の仕事を考えていましたが、接客は得意で、運転も好き。「好き」と「得意」の両方を生かせるかもしれないと考え、思い切って応募しました。
A.蒲原:自衛官を経て、関東のバス会社で約5年間勤務していました。退職後はワーキングホリデーを考えていて、フランス語を生かして海外へ行こうと思っていたんです。そんななかで出合ったのが二刀流社員の求人でした。「バスだけでなく、電車にも乗れる」。こんな仕事はほかにないと思い、乗り物好きな自分の気持ちが勝ちました。
――Q.蒲原さんは、千葉県から岡山県へ移住されました。勇気がいったのでは?
A.蒲原:前職も県外で勤務でしたし「ちょっと行ってみようかな」みたいな感覚で岡山に来ました。 不安より、ドキドキの方が大きかったです。誰もしたことがない仕事なので、むしろワクワクしていましたね。
異業種からの転身という共通点を持ちながら、二人の決断の仕方は少しずつ異なる。直感を信じて前に進んだ人見さんと、経験を積み重ねながら選択した蒲原さん。それぞれのスタイルが、「二刀流社員」という新しい働き方に重なった。
「働きやすさ」は人で決まる。相談できる、助け合える、あたたかい現場。
――Q.実際に入ってみて、会社の雰囲気や休日の取り方、働き方はどうですか?
A.人見:正直入るまでは、人間関係が一番不安でしたが、温かい仲間に囲まれているので、安心して働けています。上司や運行管理者の方とも相談しやすくて、「この日を休みたいんですが」と希望を伝えても、嫌な反応をされることはありません。話を聞いてくれて、「取れるときは取らせてあげるよ」と融通もきかせてくれる。すごくありがたい環境だと感じています。
A.蒲原:ちゃんと先輩を立てる雰囲気はありつつも、「喋りにくさ」がないですね。変に気を遣いすぎることもなく、純粋に働きやすい職場だなと思います。勤務時間については、前職と比べて時間に余裕をもって働けていますし、給与面も含めて体制としてすごくいいなと感じています。
大型第二種自動車運転免許の取得と、入社後の教育を経て、2025年11月より路線バスの乗務を開始したふたり。実際にお客様を乗せて路面を走るなかで、仕事への向き合い方にも少しずつ変化が生まれていった。
「あなたの運転、よかった」。
「当たり前」の業務の先に、名前が残る仕事。
――Q.実際にお客様を乗せて走り始めて、どんなことを感じていますか?
A.人見:最初は足が震えるほど緊張して、1日が終わると疲れがどっと出ていました。でも、3、4カ月経って少しずつ慣れ、お客様の様子を見る余裕も出てきました。

「丁寧なマイク案内、ありがとう」と声をかけていただくことも嬉しいですが、いちばん心に残ったのは、降りるときに「あなたの運転、よかったわよ」と言ってもらえたことです。
まだまだ上手くないと思っているからこそ、努力している部分を見てくれるのが、本当に励みになります。
A.蒲原:路線バスは、時間通りに来て当たり前。運行が乱れなければ、すべて「当たり前」として流れていく仕事でもあります。だからこそ、「あなたのバスでよかった」と思ってもらえる乗務ができたら、自分自身の励みにもなりますし、それを目標にしています。

お客様対応では、特に車いすのお客様には、乗り降りの補助が終わったあとに少し丁寧に「今日もご乗車ありがとうございました」と声をかけるようにしています。
乗り降りに時間がかかるからと、恐縮される方が多いのですが、こちらが「丁寧に向き合う」ことで、「気にしなくて大丈夫ですよ」という気持ちが伝わり、笑顔で降りていかれる。その瞬間が、何より嬉しいですね。
2027年1月から路面電車運行に向けての訓練がスタート。その8月にはデビューする予定だ。
次は、路面電車へ。
二刀流の未来は、もっとワクワクしていく。
――Q.路面電車の訓練が始まっていきます。今のお気持ちは?
A.人見:覚えることがバスより多いって聞いています。暗記も多いらしいので…不安はあります。
でも、前代未聞である二刀流社員になれる機会なので、一生懸命がんばりたいです。
A.蒲原:路面電車デビューを果たしたら、今お世話になっている路線バスの先輩たちと道ですれ違うときに、「僕、がんばってますよ!」という顔で挨拶できたらと思っています。
そんな小さな楽しみもありますね(笑)。
――Q.どんな二刀流の乗務員になりたいですか?
A.人見:お客様に丁寧に向き合い、気持ちよく降りていただける乗務員になりたいです。将来は、バス業界では「貸切バス」や「空港リムジンバス」、路面電車では「おかでんチャギントン」の乗務員を目指しています。どれも高い運転技術と接客力が求められる仕事。だからこそ、いつか挑戦できる存在になりたいと思っています。
A.蒲原:バスでも電車でも、「この人の運転でよかった」と思ってもらえる二刀流の乗務員になりたいです。運転や接客は常に見られている仕事だからこそ、一回一回を大切にしたい。子どもがバックミラー越しに見ているのに気づくと、「かっこいい仕事だな」と改めて感じますね。
――Q.おふたりにとって、両備をどんな場所にしていきたい?
A.人見:笑いが絶えないというか、相談し合える・助け合える、そんな職場にしていきたい。
今でも十分、助け合える職場です。でも欲を言えば、そこからもう一段階上を目指したい。未経験で入ってくる人が、安心して飛び込める場所にしたいですね。
A.蒲原:仕事って「働かされてる」と思うと、辛く感じることがある。でも「働けてる」と思えたら、自分の人生にとって有意義な時間になると思うんです。両備は、待遇がよくて、働けること自体がありがたい。だから、ずっとポジティブな気持ちで働ける場所にしていきたいですね。

profile

岡山電気軌道株式会社 二刀流社員1期生
人見さん
1998年生まれ。岡山県出身。
やりたいことを感覚的にキャッチし、前向きに一歩を踏み出すタイプ。

profile

岡山電気軌道株式会社 二刀流社員1期生
蒲原さん
1994年生まれ。千葉県出身。
物事一つひとつに丁寧に向き合い、真摯に積み重ねていく姿勢が持ち味。